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ハイバイ「おとこたち」 [演劇]

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ハイバイ「おとこたち」.jpg
岩井秀人さん率いる劇団ハイバイの、
「おとなたち」を観て来ました。

この劇団は恥ずかしながら今回が初見です。
何となくタイミングが合わず、
スルーすることが続いていました。

今回の作品は2014年に初演された作品の再演ですが、
練り上げられた作劇と、
巧みな演出とアンサンブルに見応えがありました。

4人の男の愚かしい人生をそれぞれに辿る、
というような内容で、
演劇ではある種定番の趣向ですが、
ダラダラとした芝居になり易いところを、
ちょっと俯瞰的な視点と、
登場人物たちによる解説的なナレーションなどを、
巧みに利用して変化を付けた構成が活きています。

内容には少し不満もあるのですが、
クオリティの高い面白い芝居として、
お薦めはしたいと思います。

以下ネタバレを含む感想です。

クレーム対応の仕事を孤独に勤め上げた男と、
製薬会社のMRで、計画通りの人生を、
仕事においては進んでいながら、
1人息子の子育てで計画を誤った男。
酒で人生を棒に振る役者と、
自由人を気取りながら、
妻と愛人に翻弄される男という、
それぞれの人生を送る4人の男の人生を、
20代から80代まで辿る、という趣向の作品です。

オープニングでもっと若い設定と思っていた役者さんが、
実は老人ホームの入所者で認知症だった、
と分かる趣向が斬新で、
一気に物語に引き込まれます。

役者は主人公の4人の男を演じる4人の役者が、
時にはナレーターを務めて物語を進め、
それ以外の男性の役も交互に演じ分けます。
これは記録を見ると初演では、
作・演出の岩井さんが役者としてサポートしていたようですが、
今回の再演では全ての男性の役を、
その4人が演じる形にブラッシュアップされています。
それ以外に2人の女優さんが出演し、
4人の男性に絡む複数の女性の役を演じています。

3つの高さの違うほぼ方形の舞台が作られていて、
一番下を一種の楽屋スペースとして使用し、
そこで話し合われた事項が、
上の2つの舞台で演じられます。
この辺りの演出は、
非常に練られていると思いました。
普通の発想だと、
1つの方形の舞台の下に、
役者が待機するようなスペースを作って、
上と下で芝居を展開させることが多いと思うのですが、
それでは変化が少なく面白みが乏しくなるのです。
それを複雑な立体感で、
変化を付けたことがクレヴァーだと感じました。

4人の主人公の人生については、
もう少し変化があっても良いように感じました。
2人の女性に翻弄されるフリーターの男性は、
どのような仕事をどのように続けていたのかが、
途中から不鮮明になってしまいますし、
破天荒な役者さんが、
新興宗教に入って早逝してしまうのも、
唐突で物足りなく感じます。
製薬会社勤務の仕事人間も、
中年の時期をすっとばして定年を迎えますが、
何処まで会社で上り詰めたのかも定かではありません。
お互いの人生の結びつきが、
もっとあっても良かったと思いますし、
そこに人生の驚きのようなものが、
もっと潜んでいても良かったのではないでしょうか?

個人的にはオープニングの趣向が斬新で面白かったので、
何歳であっても老けた演技などせずに、
全編をそのまま演じた方が、
より面白かったのではないかと感じました。
前半はそうするつもりなのかな、
と思ったのですが、
実際には後半では半端に老けた芝居などもするので、
その点がちょっと一貫性がないように感じたのです。

総じて、小劇場版人生スケッチとしては、
水準を超える出来栄えで、
役者さんの芝居も趣があり、
楽しく観ることが出来ました。
ただ、内容にはちょっと食い足りない部分もあったのです。

今日はもう1本映画の記事があります。
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