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劇団鹿殺し「キルミーアゲイン」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
鹿殺し.jpg
劇団鹿殺しの15周年記念公演として、
丸尾丸一郎さん脚本、菜月チョビさん演出の新作が、
今下北沢の本多劇場で上演されています。

これはかなり定番の「田舎の劇団」もので、
丸尾さん独特のドロドロしてどぎつい感じは、
かなり抑えられていました。
主役は若手の売れっ子の大東駿介さんで、
彼が丸尾さんを投影した小劇場の脚本家を演じます。

得意のブラスバンドの生演奏に、
チョビさんのボーカルが乗り、
劇中劇のダンスも楽しい感じです。
ラストも比較的綺麗に着地していました。

そんな訳で劇団鹿殺しの特徴と良い部分が、
過不足なく披露された楽しい公演で、
この劇団初見の方にも、
まずはお勧め出来る作品だと思います。

以下ネタバレを含む感想です。

オープニングにアンバーの照明の中、
客席のドアから大東駿介さんが入って来て、
劇場の舞台裏のような雰囲気の舞台に上がり、
一人がたりを始めます。

そこは大東さんの出身地の村で、
彼は高校生の時に村で演劇をしていたのですが、
村を大洪水が襲い、
劇場に閉じ込められた7人のブラスバンド部の学生が、
水に呑まれて死んでしまいます。
それにショックを受けた主人公は、
村を出て東京に逃げ、
そこでセミプロの劇団を旗揚げします。
しかし、その15年後に村がダムで水底に沈むことが決まり、
その反対運動として「人魚伝説」という芝居を書くようにと、
昔の仲間から請われ、
15年ぶりに村に戻るというところから物語は始まります。

そこからは、
15年前と現在とが交錯して物語は展開します。

「人魚伝説」の上演は順調と思われたのですが、
謎の妨害が入ります。
また、チョビさん演じる、
15年前にブラスバンド部で、
唯一生き残った女性がいるのですが、
その女性は実は本物の人魚で、
妨害をしていたのは、
河野まさと演じる村のプロの芝居の座長で、
15年前にブラスバンド部を劇場に閉じ込めたのは、
河野さんだったことが分かります。

結局村のダム工事は始まってしまうのですが、
新たな希望を胸に主人公は村を離れます。

村の劇団と自分たちの活動を重ね合わせた、
鹿殺しの1つの定番とも言える劇団物のストーリーで、
人魚伝説などのファンタジーの要素を絡め、
なかなか心地よく舞台は展開します。

主人公は作者の丸尾さんの分身ですが、
東京での芝居は矢鱈と血糊と臓物が登場する、
という趣向になっていて、
自らの作風をセルフパロディ化しているようです。

ブラスバンドの演奏も定番です。
昨年の作品では「蠅の楽団」というグロテスクな趣向で、
ゲンナリしてしまったのですが、
今回は高校のブラスバンド部という、
ストレートな設定なので、
演奏を取り入れるのも不自然ではなく、
今回はうまく正攻法で舞台に溶け込んでいたと思います。

Coccoの「ジルゼの事情」もそうでしたが、
丸尾さんは自分の趣味を抑えて、
他人のイメージに奉仕するような舞台作りをした方が、
より良い作品に繋がっているようです。

欠点は舞台美術や転換などの演出が、
やや中途半端に思えることで、
極めてシンプルでオーソドックスな設定なのですから、
今回のように中途半端に抽象的なセットにはせず、
きちんと書割も立てて、
田舎の芝居小屋を再現したセットにした方が、
より作品の質は向上したように思います。
細かいことですが、
オープニングで大東さんが登場する時に、
舞台に上がってしばらく立つまで、
大東さんにスポットを当てなかったのですが、
こういう趣向はアマチュアじみていて良くないと思います。
これは客席の通路にいる時点で、
スポットでしっかり照らすべきだと思います。

セットががっちりと出来ていないので、
15年前と現在との転換も、
あまり的確に出来ておらず、
時間軸が不鮮明になる感じがあります。
また劇中劇の場面も、
他の場面と雰囲気が変わらないので、
損をしていると思います。

キャストは皆熱意の伝わる気持ちの良い芝居で、
概ね良かったと思います。
大東さんも頑張っていました。
オレノ・グラフィティさんも奇跡的に声の調子が良くて、
最後まで声の涸れないオレノさんを、
僕は初めて観たような気がします。
河野さんはちょっと損な役どころで残念でした。
チョビさんの歌はどうなのでしょうか?
僕の観た日は音程は不安定で高音は全く出ていなかったので、
座長とは言え、これではちょっと問題のように思いました。

総じて不満はありますが、
鹿殺しの良い部分が出た楽しい公演で、
観て損はないレベルには仕上がっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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