卵は1日1個以内、は科学的なのか？ [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のAmericnan Journal of Clinical Nutrition誌に掲載された、
卵の摂取量と2型糖尿病の発症リスクについての論文です。
卵は1日1個以内が良い、
というような指導は、
特にコレステロールが高い方には、
よく行われています。
その理由は卵には、
平均で1個当たり200ミリグラム程度のコレステロールが含まれていて、
コレステロールの摂取量は1日300ミリグラム以下に、
制限することが推奨されているためです。
勿論コレステロールを多量に摂ることは、
血液の悪玉コレステロールの数値にも、
少なからぬ影響を与えますから、
その指導には一定の根拠があります。
しかし、卵にはコレステロール以外に、
多くの身体に必要な栄養素が含まれていますから、
1日1個程度の卵を食べることが、
トータルに健康に悪いとは言い切れません。
実際、通常の食事に卵を加えてその効果を検証した、
複数の介入試験と呼ばれる精度の高い臨床試験の結果では、
卵はインスリンの感受性を高め、
炎症性のマーカーを抑制する、
という結果が得られています。
これはつまり、
卵を多く摂ることで、
糖尿病や動脈硬化の予防となる可能性を示唆しています。
しかし、その一方でコレステロールの多い食事は、
動脈硬化や糖尿病のリスクとなることが、
別箇の動物実験のデータや、
人間の食事調査のような疫学データでは示されています。
卵は糖尿病を増やすのでしょうか、それとも減らすのでしょうか？
この問題を明らかにする目的で、
今回の研究では、
心血管疾患に関するフィンランドの疫学データを活用して、
中高年層の男性における、
卵の摂取とその後の2型糖尿病の発症との関連を検証しています。
対象は1984年から1989年に登録時点で42から60歳の男性、
トータル2332名の男性で、
平均で19.3年の観察期間中に、
2型糖尿病を発症した頻度を比較しています。
卵の摂取量は4つに分けられ、
最も摂取量の少ない群は1日平均14グラム未満で、
これは4日に卵1個かそれ以下、
というくらいの分量です。
その一方で最も多い区分は、
毎日ほぼ1個の卵、というくらいの分量となっています。
その結果…
観察期間中に2型糖尿病を発症したのは、
432名の男性で、
最も卵の摂取が多いグループは、
最も少ないグループと比較して、
38%有意に糖尿病の発症リスクが抑制された、
という結果になりました。
卵の摂取量の多いグループは、
当然コレステロールの摂取量も多いのですが、
今回の検証の範囲では、
コレステロールの摂取量と2型糖尿病のリスクとの間には、
明確な関連が認められませんでした。
つまり、
1日1個程度の卵を摂取することは、
むしろ糖尿病の予防に繋がる可能性がある、
という結果です。
これは中高年の男性に限ったデータですが、
同様のデータは他にも存在していて、
どうやら1日1個程度の卵は、
糖尿病のリスクの面からは、
少なくとも悪影響は与えないと、
考えても良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のAmericnan Journal of Clinical Nutrition誌に掲載された、
卵の摂取量と2型糖尿病の発症リスクについての論文です。
卵は1日1個以内が良い、
というような指導は、
特にコレステロールが高い方には、
よく行われています。
その理由は卵には、
平均で1個当たり200ミリグラム程度のコレステロールが含まれていて、
コレステロールの摂取量は1日300ミリグラム以下に、
制限することが推奨されているためです。
勿論コレステロールを多量に摂ることは、
血液の悪玉コレステロールの数値にも、
少なからぬ影響を与えますから、
その指導には一定の根拠があります。
しかし、卵にはコレステロール以外に、
多くの身体に必要な栄養素が含まれていますから、
1日1個程度の卵を食べることが、
トータルに健康に悪いとは言い切れません。
実際、通常の食事に卵を加えてその効果を検証した、
複数の介入試験と呼ばれる精度の高い臨床試験の結果では、
卵はインスリンの感受性を高め、
炎症性のマーカーを抑制する、
という結果が得られています。
これはつまり、
卵を多く摂ることで、
糖尿病や動脈硬化の予防となる可能性を示唆しています。
しかし、その一方でコレステロールの多い食事は、
動脈硬化や糖尿病のリスクとなることが、
別箇の動物実験のデータや、
人間の食事調査のような疫学データでは示されています。
卵は糖尿病を増やすのでしょうか、それとも減らすのでしょうか？
この問題を明らかにする目的で、
今回の研究では、
心血管疾患に関するフィンランドの疫学データを活用して、
中高年層の男性における、
卵の摂取とその後の2型糖尿病の発症との関連を検証しています。
対象は1984年から1989年に登録時点で42から60歳の男性、
トータル2332名の男性で、
平均で19.3年の観察期間中に、
2型糖尿病を発症した頻度を比較しています。
卵の摂取量は4つに分けられ、
最も摂取量の少ない群は1日平均14グラム未満で、
これは4日に卵1個かそれ以下、
というくらいの分量です。
その一方で最も多い区分は、
毎日ほぼ1個の卵、というくらいの分量となっています。
その結果…
観察期間中に2型糖尿病を発症したのは、
432名の男性で、
最も卵の摂取が多いグループは、
最も少ないグループと比較して、
38%有意に糖尿病の発症リスクが抑制された、
という結果になりました。
卵の摂取量の多いグループは、
当然コレステロールの摂取量も多いのですが、
今回の検証の範囲では、
コレステロールの摂取量と2型糖尿病のリスクとの間には、
明確な関連が認められませんでした。
つまり、
1日1個程度の卵を摂取することは、
むしろ糖尿病の予防に繋がる可能性がある、
という結果です。
これは中高年の男性に限ったデータですが、
同様のデータは他にも存在していて、
どうやら1日1個程度の卵は、
糖尿病のリスクの面からは、
少なくとも悪影響は与えないと、
考えても良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2015-04-14 07:58
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コメント(5)
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石原先生こんにちは。
今回もとても興味深く拝見しました。
卵の摂取は二型糖尿病の予防作用が期待出来るのかもしれないのですね。
ところで卵摂取量の違いで血漿コレステロール値には差は出たのでしょうか。
もしよかったら教えてください。
by モカ (2015-04-14 09:25)
fujikiさま、こんにちは。
毎回興味深いお話ありがとうございます。
Food sources of fat may clarify the inconsistent role of dietary fat intake for incidence of type 2 diabetes.のような報告もございましたね。
両方おこなうといいのでしょうか？
by dumbo (2015-04-14 13:23)
モカさんへ
これはベースラインのみの測定なのですが、
LDLコレステロールの数値は、
卵の摂取が最も多い群で、
むしろやや低めとなっていて、
HDLコレステロールは有意に高値という結果になっています。
そのまま鵜呑みに出来るかは微妙ですが、
少なくとも卵の摂取量で、
それほどの動きはないもののようです。
by fujiki (2015-04-14 22:37)
dumboさんへ
ちょっと分かりませんが、
摂取する脂の組成は、
糖尿病のリスクにおいても、
心血管疾患のリスクにおいても、
重要な役割を果たすことは間違いがなさそうです。
by fujiki (2015-04-14 22:41)
石原先生、ご返事ありがとうございます。
卵1個程度だとLDLコレステロールは低くなる傾向にあるのですね。
しかし、確かに個人差や卵以外の要因もあるかもしれませんね。
ありがとうございました。
by モカ (2015-04-15 09:46)