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新橋演舞場初春花形歌舞伎「石川五右衛門」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は祝日で診療所は休診です。
昨日は10年ぶりくらいにカラオケに行きました。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
石川五右衛門.jpg
今年の歌舞伎の一発目は、
新橋演舞場の花形歌舞伎に足を運びました。

石川五右衛門は、
江戸時代には物語のキャラクターとして、
歌舞伎に何度も取り上げられた大泥棒ですが、
明治以降芸術志向で再編成された歌舞伎においては、
「楼門五三桐」という作品の、
南禅寺の山門の上で、
五右衛門が「絶景かな、絶景かな」という名文句を歌い、
真柴久吉と対面して終わるという、
短い場面が絵面としての美しさから残っているだけで、
それ以外に取り上げられることは、
殆どなくなりました。

それが先代猿之助の猿翁が、
通俗歌舞伎の面白さを復活させる過程で、
この五右衛門劇も復活され、
蝦蟇の妖術であるとか、
宙吊りされた巨大な葛籠が、
観客の頭上でパックリと割れて、
そこから五右衛門が登場するなどのケレンが、
再び歌舞伎の舞台でも演じられるようになりました。

今回の作品の元は、
平成21年に海老蔵が主演し、
お父さんの團十郎が羽柴秀吉を演じるという趣向で、
漫画家の樹林伸の原案を、
川崎哲男と松岡亮のコンビが歌舞伎台本化し、
藤間勘十郎が演出をしたもので、
今回はそこに更に続編を付け加えて、
海老蔵印の新作歌舞伎として上演しています。

基本的にはかつての猿翁の、
古典復活狂言の趣向に近いもので、
古典歌舞伎の趣向が、
随所に取り入れられ、
古典の現代的復活を志向したものです。

ただ、藤間勘十郎のカラーが強く出ていて、
現代舞踊劇的な趣向が強く、
舞踊の場面はそれなりに収まりが良いのですが、
かと言って古典を強く感じさせるものではなく、
それ以外のお芝居の場面は、
台本作家の方のセンスが、
正直あまり冴えているものではないので、
何処か全体にギクシャクしていて、
面白みが乏しく、
結局海老蔵の姿と声と体技を楽しむだけの、
海老蔵ワンマンショーに終わっていたのは、
正直残念に思いました。

場面毎に趣向があるのですが、
それが上手く機能していません。

たとえば、
3幕目の5場、満州ヌルハチ陣所の場で、
悪党が襲い掛かったところで、
ダンマリになるのですが、
殺陣もなくすぐにダンマリになるのは、
とてもタイミングが悪く、
観客の盛り上がった気分を落としてしまいます。

猿翁でしたら、
絶対にこうしたタイミングでダンマリは入れません。

義太夫狂言を模したような場面もあるのですが、
模倣が中途半端で、
芝居としての盛り上がりがなく終わってしまうので、
これも面白くありません。

海外に舞台が移ると、
妹背山の御殿を模したような場面があるのですが、
これもパクるならしっかりパクれば良いのに、
中途半端で失敗しています。

こうしたところが、
ともかくセンスがないので、
全体にもっと面白くなるべきところが、
おしなべて演出と台本のせいで、
退屈な場面になっているのは、
非常に残念に思いました。

ただ、こうした出来の悪い作品でも、
何とかなってしまうのが、
海老蔵という稀有の歌舞伎役者の力量で、
海老蔵が見栄を切り、
飛び六法を飛ぶだけで、
それは既にまごうことなき歌舞伎である、
というのが歌舞伎というジャンルの、
面白いところでもあります。

海老蔵丈には、
もっと歌舞伎を上手く活用出来るスタッフと、
良い仕事をして欲しいと切に願いますが、
まだ模索の途上にあることは確かなので、
期待して先を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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midori

少しお元気になられたみたいで良かったです。
今年もよろしくお願いいたします。
by midori (2015-01-12 14:51) 

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