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2013年9月ドイツ人旅行者のデング熱感染について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ドイツ旅行者のデング熱感染.jpg
これは2014年にEurosurveilanceに掲載された、
2013年に日本を旅行したドイツ人旅行者が、
ドイツに帰国してデング熱を発症した、
という症例報告です。

この報告の出た今年の1月の時点で、
厚労省は各都道府県に、
「気をつけろよ」という趣旨の通達を出していますが、
あまり本気度は感じられず、
その時点で蚊のサンプルでウイルスの有無が、
少なくとも大規模に検証された、
というようなことはないようです。

今にして思うと、
非常に示唆的な報告と言うことが出来ます。
ただ、報告の行間からは、
「日本みたいな野蛮な国に行く時は気をつけろよ」
というような、
人種差別的な臭いがほのかにするので、
あまり気分の良い文章ではありません。

患者さんは50代前半の女性で、
日本旅行で上田市と笛吹市、広島、京都、東京を経由して、
ドイツに帰国しています。
帰国後3日目から、
40度台の発熱と吐き気、
少し遅れて斑点状の皮疹が出現しました。
発熱が6日間続いた時点で入院となりましたが、
入院時の所見では、
GOT96、GPT52、CPK553と上昇し、
白血球は3200、血小板は87000と軽度低下していました。

お分かりのように典型的な経過です。
ちなみに、GOTの正式名称はASTで、
GPTではなくALTと言わないといけないのだぞ、
と言われるのですが、
ドイツでは意外とGOT、GPTでOKのようです。

患者さんは笛吹市でブドウ狩りをしていて、
その時に蚊に何度か刺されたという自覚があり、
一般的な潜伏期の3から14日のうちに入るので、
上記文献ではそこでの感染の可能性を指摘しています。

問題なのはウイルスの検索において、
このドイツ人旅行者に感染したデングウイルスは、
血清型は2型と同定されている、ということです。

2013年に輸入事例として同定された249事例は、
その多くが1型の感染で、
今年の8月26日以降報告されている東京の感染も、
その全てが1型の感染です。
輸入事例の2型の感染は、
インドネシア、フィリピン、インドなどからの輸入感染として、
報告されています。

しかし、ドイツ人旅行者の感染が2型によるもので、
それが笛吹市での感染であるとすると、
日本において現時点で既に、
1型と2型のウイルスを保有している蚊が、
存在していることを示しています。
勿論笛吹市以外での感染、
今となっては東京での感染も大きな可能性の1つです。

昨日ご説明したように、
複数の血清型のデングウイルスに時間差で感染すると、
高率に重症化し易いと考えられています。
従って、複数の血清型の感染が、
現時点で混在して流行しているかどうかは、
非常に重要なポイントなのです。
更にはデング熱の重症化の事例では、
2型と3型の流行が多いという報告があります。

勿論現時点での東京由来の感染は軽症で推移しているので、
殊更に不安を煽るような表現は望ましくはないと思います。
気温の低下と共に、
少なくとも一旦は感染が終息することは、
これもほぼ間違いがありません。

ただ、慎重なサーベイランスの継続は重要だと思いますし、
一臨床医としては、
多角的に現象を見る姿勢は、
常に忘れずにいたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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