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糖尿病治療薬と抗生物質の併用による低血糖リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
抗生物質とSU剤併用の低血糖リスク.jpg
今月のJAMA Intern Med誌に掲載された、
糖尿病治療薬と抗生物質を併用した際の、
低血糖の危険性の増加についての文献です。

SU剤は経口剤では最も血糖の降下作用の強い薬剤です。
商品名としてはオイグルコンやグリミクロン、
アマリールなどがその代表です。
今では悪く言う人が多いのですが、
僕はSU剤が導入された時点での、
それまでにない画期的な効果に驚いた世代なので、
使い方さえ誤らなければ、
そう悪い薬とは思っていません。
SU剤を使いこなせない医療者に限って、
DPP4阻害剤などの新薬に、
すぐに飛び付くのではないでしょうか?
しかし、SU剤が低血糖のリスクの高い薬であることは確かです。

そして、
特に高齢の糖尿病の患者さんにおいては、
低血糖が遷延して意識障害で入院となったり、
脳にダメージが残る結果になることも稀ではありません。

SU剤の使用において、
どのような時に低血糖が起こり易いのでしょうか?

1つの要因として考えられているのが、
薬剤との相互作用です。

特に抗菌剤の中には、
SU剤の作用を増強したり、
その代謝を妨害して血液濃度を上昇させるような、
相互作用を持つ薬が多く存在しています。

こちらをご覧下さい。
SU剤との相互作用の表.jpg
上記文献にある表ですが、
これまでに指摘のある、
SU剤との相互作用で低血糖を来す可能性が指摘されている、
抗菌剤を一覧表にしたものです。
右の切れた部分には、
裏付けとなるデータが示されています。
結構役に立ちますね。

シプロキサシン(商品名シプロキサンなど)と、
レボフロキサシン(商品名クラビットなど)は、
ニューキノロン系の抗生物質です。
クラリスロマイシンはマクロライドで、
フルコナゾールは抗真菌剤ですが、
いずれも相互作用では横綱格です。
メトロニダゾール(商品名フラジールなど)と、
ST合剤(商品名バクタなど)は、
最近は日本でも使用頻度が多くなっています。

一方で相互作用の報告のないものは、
アモキシシリンやペニシリンGのペニシリン系、
セフェムのうちでセファレキシン(商品名ケフレックスなど)、
マクロライドではアジスロマイシンなどとなっています。

ただ、理屈の上で低血糖を生じ易いということと、
実際にそうしたリスクが上昇することとは、
また別物です。

今回の研究では、
アメリカの処方データから、
SU剤と相互作用のリスクのある抗菌剤との併用処方が、
その処方後14日以内の、
低血糖による入院や救急受診のリスクを、
どのくらい上昇させたのかを検討しています。
対象はSU剤を使用している66歳以上の糖尿病の患者さん、
トータルで6万人余です。

SU剤はグリピジドとグリブライドという2剤が選択されています。
この2剤は日本では使用されていない薬です。

その結果、
相互作用のない抗菌剤の使用と比較して、
クラリスロマイシンが3.96倍、
レボフロキサシンが2.60倍、
ST合剤が2.56倍、
メトロニダゾールが2.11倍、
シプロフロキサシンが1.62倍、
それぞれ低血糖による入院や救急受診のリスクを、
有意に増加させていました。

従って、特に高齢の糖尿病の患者さんで、
SU剤と上記のような抗菌剤を併用する場合には、
低血糖のリスクが増加することを念頭に置き、
他剤への変更を考慮するとともに、
必要性の高い場合には、
適宜SU剤の減量や血糖測定の強化などの対応が、
必要なように思います。

現実的には他院で診療を受けている糖尿病の患者さんでも、
感染症などで診療所を受診されるようなケースは多く、
使用薬剤との相互作用については、
より慎重な対応を日々心掛けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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コメント 2

chocobo

fujiki さん、初めまして。chocoboと申します。
ご訪問&nice!ありがとうございます。
by chocobo (2014-09-10 08:45) 

fujiki

chocoboさんへ
こちらこそよろしくお願いします。
by fujiki (2014-09-11 07:46) 

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