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インクレチン関連薬の急性膵炎リスクについての新知見 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

DPP-4阻害剤とGLP1アナログという注射薬は、
インクレチン関連薬と呼ばれ、
これまでとは別個のメカニズムで、
インスリンの分泌を刺激する薬として、
華々しく登場しました。

現在特に飲み薬のDPP-4阻害剤は、
日本の糖尿病の臨床においては広く使用されています。

しかし、このタイプの薬剤には、
膵臓の細胞を刺激するような作用があり、
それがうまく働けば、
膵臓からのインスリンの分泌を促進する結果になるのですが、
その一方で膵炎や膵臓癌などの発症リスクが増加するのでは、
という危惧が発売の当初から存在していました。

実際にそうした報告も複数あり、
アメリカのFDAもヨーロッパのEMAも、
その調査に乗り出しています。

そして、先月のBritish Medical Journal誌に、
急性膵炎発症リスクについての、
2つのまとまった報告が寄せられています。

それがまずこちらです。
インクレチンと膵炎についてのメタアナリシス.jpg
この文献では、これまでのインクレチン関連薬に関わる、
多くの臨床研究のデータをまとめて解析し、
インクレチン関連薬と膵炎との関連性を検証しています。

まず、最も信頼度の高い臨床研究である、
ランダム化比較試験の結果をまとめて解析したところ、
インクレチン関連薬と急性膵炎のリスクとの関連性は、
実証されませんでした。
観察研究と呼ばれる少し精度の低いデータの解析では、
関連性を示唆するデータはあったものの、
患者さんの薬剤以外の膵炎のリスクが検討されていないなど、
その信頼性は低く、
ランダム化試験の結果に、
影響を与えるものとは考えられませんでした。

つまり、
これまでの臨床研究の結果からは、
インクレチン関連薬と膵炎との関連性は否定的、
という結果です。

もう1つの文献がこちらです。
インクレチンと膵炎についてのコホート研究.jpg
こちらはイギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
2万人余のインクレチン関連薬使用群と、
5万人余のSU剤使用群との、
急性膵炎の発症率の比較をしたものです。

2型糖尿病の患者さんでの急性膵炎の発症率は、
年間1万人当たり15名ほどで、
その比率は両群で差がありませんでした。

今回の結果は敢くまで急性膵炎に限ったもので、
もう1つの問題である膵臓癌などの癌のリスクに関しては、
また別個に考える必要がありますが、
少なくとも膵炎のリスクが高くはない患者さんに使用する場合には、
インクレチン関連薬の急性膵炎リスクについては、
それほど重要視する必要はなさそうだ、
というくらいのことは言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

モカ

石原先生こんにちは。

自分を含めて服用している人はいないのですが、関連性があまりないようでよかったです。
安全で効果の高い薬はありがたいですね。
by モカ (2014-05-01 13:33) 

bpd1teikichi_satoh

Dr.Ishihara妻がDPP-4阻害薬、商品名「ジャヌビア」を朝食前に
50mg✖︎2錠服用していますので、膵炎を誘発しない事はかなり
安心しました。膵臓癌との関連性についてはまだのようですが
今のところ、効果が有り安全な薬だと考えて良いとすると、
安心しました。
by bpd1teikichi_satoh (2014-05-01 14:34) 

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