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脳内出血急性期の降圧治療の目標値について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

本日(27日)は石原が整形外科受診のため、
午後の診療は3時半で終了とさせて頂きます。
受診予定の方はご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
脳出血の降圧基準.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
脳内出血急性期の血圧コントロールのあり方についての論文です。

脳内出血後の急性期に、
どれだけ血圧を下げれば良いのか、
という問題には、
まだ明確な結論が出ていません。

脳の中に出血が起こると、
ほぼ確実に血圧は上昇します。

血圧が上昇すれば、
それだけ出血は止まり難くなりますから、
出血は広がり、
患者さんの予後に悪影響を与えることが想定されます。

しかし、
その一方で脳内出血時には、
その病変の周辺の血流は低下していて、
血流の維持のためには、
一定の血圧の上昇が、
必要ではないのか、
という考え方もあります。

脳卒中後には血圧は下げ過ぎない方がいい、
と言われることの1つの理由はここにあります。

現状のアメリカのガイドラインにおいては、
平均血圧を110mmHg未満、
もしくは160/90mmHg未満というのが、
1つの指標となっていますが、
この数字の根拠は、
実際にはあまり精度の高い臨床データに、
裏打ちされたものではありませんでした。

患者さんの予後を最善にするためには、
脳内出血急性期の血圧コントロールの目標値は、
どのくらいに設定するべきなのでしょうか?

その疑問に応えるため、
今回の文献においては、
オーストラリアや中国、フランス、イギリス、
などの世界中の多施設において、
トータル2839名の発症後6時間以内の脳内出血の患者さんを、
くじ引きで2つの群に分け、
一方は1時間以内に収縮期血圧を140未満とすることを、
目標とした降圧治療を行ない、
もう一方は180未満を目標としたマイルドな降圧を行ないます。

日本では九州大学が参加しています。

検証されているのは、
その後90日間の、患者さんの死亡や重度の障害の発症が、
主なチェック項目で、
それ以外に障害の程度の経過です。

その結果…

通常より厳しい血圧のコントロールを行なっても、
患者さんの死亡リスクや重度の障害が残るリスクには、
通常のコントロール群との比較で、
有意な差はありませんでした。

ただ、
障害の程度は血圧を厳しくコントロールした方が、
より低下する傾向が有意に認められました。

この結果は非常に微妙です。

血圧のコントロールを急速に厳格に行なっても、
血腫の縮小などの変化は認められていません。
死亡のリスクにも有意な差は認めていません。
ただ、それでも血圧を下げることにより、
患者さんによってはその障害の程度が改善するとすれば、
血腫に対する効果など以外の影響によって、
脳の機能の低下が抑えられている、
ということになります。

この辺りは今後の更なる検証が必要ですし、
今回のデータでは、
中国のデータの占める比率が大きく(全体の3分の2)、
アジアでは脳出血の頻度は多いことから、
これはアジアに限定した知見として、
考えるべきかも知れません。

この研究に補足的なものとして、
アメリカでほぼ同様の研究が進行中で、
その結果は2016年に出る予定とのことですから、
その内容が明らかになると、
よりこの問題は明確化されて来るものと思われます。

脳内出血の急性期の血圧の目標値については、
まだ明確な基準が存在しませんが、
患者さんの状態を注視しながら、
状況によってはより正常に近いコントロールを目指すことが、
患者さんの状態の改善に、
結び付く可能性があるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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