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プロトンポンプ阻害剤による骨折リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
プロトンポンプ阻害剤と骨粗鬆症論文.jpg
先月のBritish Medical Journal 誌に掲載された、
プロトンポンプ阻害剤による、
骨折リスクの上昇についての論文です。

プロトンポンプ阻害剤は、
最も強力な胃酸の分泌抑制剤で、
世界的にも最も使用されている胃薬です。

しかし、その胃酸を強力に抑えるという性質から、
特に長期連用した場合の、
お身体への良くない影響が、
指摘されている薬剤でもあります。

この中には腸管の感染症を起こし易くしたり、
血液のマグネシウムを低下させたりするような、
ほぼそのメカニズムの確認されているものもありますし、
ある種の癌を増やすのでは、
というような、
まだ推測の域を出ないものもあります。

その中でこの薬の連用が、
骨粗鬆症を進行させるのでは、
という危惧については、
主にヨーロッパで多くの報告があります。

そのメカニズムはまだ明確ではありませんが、
胃酸の抑制により、
腸管からのカルシウムの吸収が抑えられ、
二次性の副甲状腺機能亢進症に、
近い状態になる、
という推測がされています。
それ以外に骨の細胞自体に影響を与えるのでは、
という報告も存在します。

しかし、その頻度を含めて、
その骨折のリスクが実際にどの程度あるのか、
という点についての、
データの確実性にはまだ欠ける部分がありました。

そこで今回の研究では、
アメリカに住む閉経後の女性8万人弱を分析対象とし、
骨折の有無とプロトンポンプ阻害剤の使用との、
関連性を検証しています。

その結果…

最も歩行困難の原因となり易い、
大腿骨頸部骨折(足の付け根の骨折)のリスクは、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
その年数と共に有意に増加し、
4年の継続で1.42倍となり、
6~8年の継続では1.54倍となっています。
それがプロトンポンプ阻害剤を中止すると、
その後2年間はリスクは高い状態が続きますが、
それ以降は未使用者と同等になります。

年齢や骨粗鬆症の治療の有無などで補正しても、
その傾向自体はなくならず、
概ねプロトンポンプ阻害剤の2年以上の使用により、
3割程度は大腿骨頸部骨折のリスクが、
上昇する、という結果が示されました。

多くの骨折リスクの因子のうち、
唯一喫煙とは関連性があり、
喫煙歴のない女性のみを対象とすると、
プロトンポンプ阻害剤による骨折リスクの上昇は、
統計上は消失しました。

この結果をどう考えれば良いのでしょうか?

閉経後の女性で、
特に喫煙歴のある場合には、
プロトンポンプ阻害剤の2年以上の使用により、
大腿骨頸部骨折のリスクが3割程度上昇する可能性があります。
従って、極力そうした状況では、
プロトンポンプ阻害剤の使用は、
2年以内に留めるのが妥当と考えられます。

高度の逆流性食道炎や再発性の潰瘍などで、
継続の必要性の高い患者さんの場合には、
そのメカニズム上ビタミンDの補充を検討すると共に、
骨密度の検査も、
継続的に行なう必要があります。

皆さんもご注意下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

MDISATOH

Dr.Ishihara 私はプロトンポンプ阻害薬は飲んでいませんが、より
作用の弱いヒスタミンH2受容体阻害薬であるファモチジン20mgx2を持続的に飲んでおります。抗精神薬の副作用で有る胃痛を防止出来ます。然し、このまま持続的に飲んで居て良いものか時々思います。
by MDISATOH (2012-02-24 10:23) 

fujiki

MDISATOH さんへ
コメントありがとうございます。
H2ブロッカーについては、
勿論副作用は皆無ではありませんが、
骨粗鬆症や易感染性に関しては、
プロトンポンプ阻害剤と同じようなことは、
言われていないと思います。
by fujiki (2012-02-25 08:16) 

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