SSブログ

アルコール性ケトアシドーシスの話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はアルコール性ケトアシドーシスの話です。

昨日お話したように、
2型糖尿病のケトアシドーシスは、
日本に多く欧米に少ないのですが、
その一方でアルコール性のケトアシドーシスは、
欧米では報告が多くされながら、
日本では最近まであまり報告がありませんでした。
しかし、ここ10年くらいはその報告事例は増え続けています。

アルコール性ケトアシドーシスというのは、
アルコースを大量に飲んでいるような人が、
体調不良で食事が出来ない状態が続いた時に、
急激な脱水と血液のケトン体という酸の貯留が起こり、
血液が酸性になって、
悪化すれば昏睡状態やショックで死に至る、
という病態のことです。

大量のお酒が常に身体の中にあると、
分解されたアルコールは、
ケトン体や中性脂肪、乳酸などに姿を変えます。
つまりこれにより、
酸が身体に溜まり易い状態となります。

アルコールの多飲で食欲がなくなり、
胃腸の調子が悪くなると、
食事を摂らなくなるので、
身体は衰弱と脱水が進行し、
このため血糖は低下し、
インスリンの分泌は抑えられるので、
結果としてインスリン欠乏状態が生じ、
ストレスホルモンが上昇して、
更にケトアシドーシスが起こり易い状況になります。

そして、身体の緩衝作用の限界を超えると、
急激にアシドーシスが進行して、
昏睡状態に至るのです。

従って、糖尿病性ケトアシドーシスは、
血糖が上昇しますが、
アルコール性ケトアシドーシスは、
典型例では血糖は低下します。

しかし、糖尿病でアルコールの多飲があるような場合には、
両方の要素があるので、
血糖は上昇する場合もあれば、
低下に傾く場合もあって、
単純ではありません。

初期症状は矢張り悪心、嘔吐、腹痛が多く、
お酒飲みの人が、
最近はお酒もあまり飲めず、
食事も水分も摂っていない、
という状況ではこの病気を強く疑います。

治療は脱水の改善とブドウ糖の投与で、
糖尿病がなければ、
通常はインスリンは必要ではありません。

つまり、アルコール性ケトアシドーシスは、
脱水を伴う、高度のブドウ糖欠乏状態です。
ビタミンB1 の欠乏を伴っていることが多く、
補充しないと脳症や神経障害、
心不全の原因となります。

お酒を多く飲まれる糖尿病の方は、
実際にはかなり多く、
コントロールが利く方であれば問題はないのですが、
これも実際には、
酒量のコントロールは困難な方が多いのです。

その場合、
どのような治療が糖尿病に対して望ましいのか、
正直非常に迷うところです。

身体の代謝の状態を、
もっと簡便に掴む方法があれば、
糖尿病の治療はより安全性の高いものになると思うのですが、
現状は血糖値や尿のケトン、
血液の乳酸やケトン体の数値などを、
適宜組み合わせてゆくより無いのかもしれません。

今日はアルコール性ケトアシドーシスの話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(36)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 36

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0