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膀胱癌と糖尿病薬との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

アクトスという薬があります。
一般名はピオグリタゾン。
インスリンの効きを良くする効果のある、
糖尿病治療薬で、
日本開発の薬として、
世界でも広く使われています。

今月(9月)の17日に、
アメリカのFDAは、
このピオグリタゾンに膀胱癌の発症リスクがあるのではないか、
とする中間報告のようなレビューを発表しました。

これによると、
ピオグリタゾンを2年以上使用した患者さんにおいて、
膀胱癌の発症リスクが、
有意に高くなった、というのです。

この結果はまだ結論ではなく、
今後数ヶ月でよりはっきりとしたデータを公表する、
というニュアンスになっています。

以前にも何度か触れましたが、
ピオグリタゾンは、
PPARγの作動薬です。
PPARというのは、細胞の核に存在する受容体で、
細胞の糖の取り込みを増やして、
血糖を下げ、また脂肪の代謝を調節し、
更には動脈硬化を予防する、
と考えられています。

ここまでは良いこと尽くめですが、
一方でPPARの作動薬は、
動物実験のレベルで特定の癌を増やしたり、
心臓病を増やしたりする悪い働きも、
同時に持っていることが示唆されています。

仮に膀胱癌が薬で増えるとすると、
その原因は何でしょうか?

膀胱癌というのはやや特殊なタイプの癌です。

高齢の男性に多く、
喫煙や織物に使われる染料などの化学物質、
免疫抑制剤や頭痛薬も危険因子となることが分かっています。

膀胱という場所は排泄されたおしっこを、
溜めておく袋のようなものです。
従って、多くの身体に有害な物質と、
常に接触している場所でもあります。
そのことが長期的に膀胱の内側の組織を痛め、
癌の抑制遺伝子の変異が起こって、
それが発癌に結び付く、と考えられています。

動物実験では多くの薬剤が、
膀胱癌の原因となります。

しかし、実際にはそれは人間では使用しないような多量の薬を、
使用した実験の結果なので、
人間にそのまま当て嵌まるものではない、
という考えが一般的です。

膀胱癌の発生は、
尿のスムースな流れとも関係があります。

糖尿病では膀胱癌が多い、というデータがありますが、
これは膀胱の働きが低下して、
残尿が多くなることと関係がありそうです。

現状糖尿病でピオグリタゾンを使用中の患者さんで、
膀胱癌が確実に増える、というような根拠はなく、
その継続には現時点では基本的には問題はないと思います。

ただ、特に高齢の患者さんにおいては、
膀胱癌のチェックは定期的に行なうべきだと考えます。

より具体的には、
おしっこの検査は定期的に行ない、
血尿の有無をチェックすることと、
それがなくても膀胱の超音波検査は、
1年に一度は必ず行なう必要性がありそうです。

ピオグリタゾンと膀胱癌との関連性については、
今後のFDAの発表を、
注視しつつ見守りたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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九子

fujiki先生、こんばんわ!
さっきテレビを見ていてびっくりしました。「みんなの家庭の医学」で、先生のブログからの映像流れてましたね。
しっかり見てました。( ^-^)
お名前まで出てたから、いい宣伝になるかもしれませんね!
なんだか嬉しくなって書き込みしちゃいました。
ではまた!
by 九子 (2010-09-28 19:09) 

fujiki

九子さんへ
ありがとうございます。
まあ、ちょっとテロップが出ただけなので、
別に宣伝にはならないと思います。
あれはブログの画像ではなく、
新たにセレクトしたのです。
たったあれだけのものですが、
何度かダメ出しがありました。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-09-29 06:24) 

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