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サーバリックスの市販直後調査を考える [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

ホームページの方でメール相談をお受けしているのですが、
最近返信が遅れ気味になっていますことを、
お許し下さい。
数日でお返しするのを原則としていますが、
1週間程度掛かってしまうケースがあります。
先週返信させて頂いたメールが、
届かずに戻って来てしまいました。
お名前をお書きする訳にはいきませんので、
お心当たりの方は、
どうかもう一度ご連絡頂ければ幸いです。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

昨年末から、
ヒトパピローマウイルスワクチン、
サーバリックスの使用が始まりました。

このワクチンは女性の外陰部に感染して、
子宮頸癌の大きな原因の1つとされる、
ヒトパピローマウイルスの感染を、
予防するためのワクチンです。

人間に感染する発癌性ヒトパピローマウイルスには、
多くの種類がありますが、
欧米ではそのうち16型と18型の感染が多く、
そのためこのワクチンはその2つの型の感染を、
予防するためのワクチンです。

日本では欧米と比べると16型と18型の感染は少なく、
そのためその効果はやや劣りますが、
20代から30代に限って言うと、
その比率は日本でも8割を占めており、
それほどの差はないのだ、
と言うのがグラクソ社の説明です。

診療所のある渋谷区では、
今年から10代の女性に限り、
ワクチン接種1回当たり1万円の補助が開始されました。
診療所でも希望者にワクチン接種を行なっています。

それでいつも気懸りになるのは、
ワクチンの副反応です。

先日今年の6月までののべ11万人への接種において、
どれだけの副反応が報告されたか、
という市販直後調査の結果が公表されました。

勿論これは医療機関の自発的な報告によるものですから、
その比率などにはあまり意味のないことを、
注意して数字を見る必要があります。

副反応報告症例数は224例、463件。
そのうち重篤な事例が30例49件とされています。
死亡事例の報告はありません。

余談ですが、これを見ると、
昨年の新型インフルエンザ国産ワクチンの、
100人以上の死亡事例の報告というのが、
如何に異常なものであったかが良く分かります。

さて、重篤事例のうち、
ちょっと気になるのはショックです。
これは初回に多く、
重篤なものが4例報告されています。
それ以外に喘息発作の事例が3件、呼吸停止(!)が1件、
いずれも重篤事例として報告されています。
失神が3件、失神寸前が2件、という報告もあります。
これに冷汗や気分不快の重篤事例を含めると、
重篤なアレルギー症状の事例が、
13例ほど報告されている、
ということになります。

サーバリックスには免疫増強剤(アジュバント)が使用されていて、
これは基本的には輸入新型インフルエンザワクチンに、
使用されていたのと同等のものです。

これにより、
実際にウイルスに感染した時の自然な抗体上昇の、
12倍以上という抗体の上昇が、
ワクチンにより惹起されるのです。

新型インフルエンザの輸入ワクチンを打った方は、
実際には殆どいなかったのですから、
このアジュバントを使用するのは、
今回が初めて、ということになります。

他の副反応に関しては、
他のワクチンと特に違いはないと思われますが、
アジュバントの成分によるアレルギー反応に関しては、
特に初回の接種時には、
充分に注意する必要があると思われました。

診療所では現時点でアレルギーの事例はありませんが、
打った場所の腫れや痛みは、
矢張り他のワクチンより強い、
と言う印象はあります。
また、強いものではありませんが、
接種後の身体のだるさは体調不良は、
これもやや多いかな、という印象です。

このワクチンの効果は、
現時点ではかなり画期的なものであることは、
間違いがありません。
ただ、子宮頸癌の予防に関しては、
まだ6~7年程度の検討しか発表されてはいないので、
まだ未知数であるのは確かです。
現状分かっていることは、
6年間で16型と18型の持続感染を、
100%阻止している、
ということだけです。
ただ、今までのワクチンの歴史を考えれば、
これだけでも画期的な実績であることは確かです。

その安全性については、
現状は大きな問題は指摘されていませんが、
これまでにない成分を含むワクチンであることは確かで、
アレルギーを含め慎重な検討が今後も必要であると思います。

今日はサーバリックスの、
市販直後調査の内容についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 3

yasuko

はじめまして、
福岡県のある病院で、先月(十月)、サーバリックスのワクチン接種の三回目で、接種部位が高くて、三角筋を突き抜け肩峰下滑液包にワクチンが入ってしまい、ものすごい炎症を起こしました。
増強剤のアジュバントが重い肩関節炎を引き起こしてはまったのです。一ヶ月間は腕が上がらず、いま接種後、六週間をすぎ、リハビリのお陰で最近はやっと腕が上がるようになりましたが、現在も通院中です。

もちろん、メーカーにも、アジュバントが関節炎を必ず引き起こす強い物質であるため、注意喚起をして下さいと、何度も伝えています。

整形外科医では、ラットによるアジュバント関節炎は、実験などでよく知られているようですが、私は婦人科で接種しました。肩の構造には詳しくなかったようで、いまだに、謝罪の一言もありません。涙
石原先生がお書きのように、実際はこのワクチンがアジュバントを含む輸入ワクチンの第一号と言ってもよい状況です。
これまでの国産ワクチンのガイドラインとは別に、アジュバントを含むワクチンには、重い関節炎を引き起こす可能性がある訳ですから、接種部位には、特段の注意が必要だと、、、、厚労省にもメールをしましたが、無反応です。


by yasuko (2010-12-02 01:29) 

fujiki

yasuko さんへ
貴重な情報をありがとうございます。

確かに日本人で三角筋の薄い方は、
筋肉注射にリスクが高い場合があると思います。
成人ですと、そうした場合はお尻に打つのですが、
サーバリックスの場合、
三角筋部に接種部位が限定されているので、
その点に問題がある、という気がします。
皮下注射でもその効果はさほど変わらず、
副反応も皮膚の腫れがやや強くなる程度、
との製薬会社の説明なので、
三角筋の薄い方では、
浅めに打った方が安全だ、と思いました。
他人事ではなく、診療所でも注意をしたいと思います。

注意喚起や副作用情報の発表は、
厚労省の担当部局の、
課長さんがほぼ単独で決める案件のようなので、
厚労省に直接ご相談された方が、
却って良いかも知れません。
長妻大臣の時に、目安箱のようなものが設置されているので、
そちらにメールをされるのが良いかも知れません。
(大臣が変わってから駄目かも知れませんが)

多分、通常のケースでは、
同じような副作用事例が、
数例は集まらないと、
行政は動かないようです。
製薬会社は行政の顔色を見て動くので、
行政が動かなければ、
単独で動くことはないようです。

by fujiki (2010-12-02 08:28) 

yasuko

メッセージ、ありがとうございます。
厚労省へのメールは先月の半ばにしておりますが、個人の声ではなかなか届きにくいのが現状のようです。

ただ、メーカーのHPは、接種方法について、今月に入り急遽内容を変更してありました。肩関節に入らないような図になっていました。

将来の子宮頸がんの予防という前向きな行動が、重い肩関節炎になっ
てしまい、本当に辛いです。
本日も痛み止めの点滴とリハビリでした。

今後は、公費で、中学生女児に接種するようですが、今一度、接種部位などの安全対策を十分に行ってほしいと感じております。
そして二度と、私のような症例がでないように、願っています。

アジュバントという増強剤が添加されている、輸入ワクチンであることを行政も、医療現場にきちんとしたメッセージを発してほしいと思います。

by yasuko (2010-12-03 23:08) 

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