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日本に脳梗塞の多いのは何故か? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は東京は朝から雨です。
気温も急降下して肌寒い朝ですね。
風邪も流行っているようです。
ご注意下さい。
今日は胃カメラの日なので、カルテの整理をして、
今PCに向かっています。

さて、今日の話題です。

今日は脳梗塞と塩分の話です。

ご存知の方も多いかと思いますが、
日本では、脳梗塞が多く、
アメリカでは、心筋梗塞が多いんですね。
この違いは、徐々に狭まりつつはありますが、
今も続いています。

どうしてでしょうか?

当たり前のことのようで、
改めて聞かれると、
ちょっと頭を捻りますね。

両方とも動脈硬化を原因とする病気です。
動脈硬化が進行する要因があれば、
どちらも増えておかしくはありません。
実際、糖尿病が動脈硬化を進めることは、
立証された事実で、
糖尿病があると、脳梗塞も増えるし、
心筋梗塞も増えます。
しかし、その増え方には、
矢張日本とアメリカとでは違いがありますね。
動脈硬化以外に、何か要因の違いがありそうです。

日本で脳梗塞の調査が始まったのは、
昭和10年頃のことだと、言われています。

その結果、東北地方では30代や40代で発作を起こすことが、
稀ではないことが、明らかになりました。

一方で、関西より南の地域では、
同じ日本でも、脳梗塞の発症は少なく、
年齢も70代を越えて起こることが多かったのです。

何故でしょうか。

この時点では、食事や生活習慣を、
日本と海外とで比較するような考えは、
あまりありませんでした。

第二次大戦の敗戦があり、
アメリカの栄養学の考えが、
どっと日本に入って来ました。
以前取り上げた牛乳信仰も、
その頃に入って来た概念です。
当時平均的アメリカ人の食事での、
塩分の量は7グラム程度でした。
それに対して、東北地方の調査結果では、
なんと平均25グラム以上の塩分を毎日取っていたのです。

これでは、アメリカ人に異常な食生活と思われても、
仕方のないところがあります。

昭和30年代から血圧測定が一般的になります。
それまでは、病院以外で血圧を測ることは、
殆どなかったのです。

一般の人の血圧を測り、
健康状態と対比するような研究が多く行なわれ、
その結果、血圧の上昇と塩分摂取量に関係のあることが、
推測されました。
東北地方の高塩分食が、
高血圧の原因となり、東北地方の冬の寒さが、
脳梗塞の発作を起こす、
という1つのストーリーが作られたのです。

ここで1つの問題は、
高血圧と塩分との関係は、それほどクリアーなものではなかった、
ということです。
皆さんは、塩分を取り過ぎると高血圧になる、
というのは証明された事実のように思われるかも知れませんが、
データは必ずしも説得力のあるものではないのです。
ちょっと、意外でしょ。
それに対して、塩分と発作との関係は、
もっと明確なものだったのです。

どうもこの辺に秘密がありそうです。

日本人とアメリカ人の食生活の違いは何でしょうか。

戦後すぐくらいでの対比で言えば、
塩分は圧倒的に日本で多く、
脂質は圧倒的にアメリカの方が多かったのです。
その後、日本人の塩分量は減り、
12グラム程度になりました。
その一方で、牛乳を沢山飲むことが健康にいい、
という宣伝と、肉食の普及に伴い、
日本人の脂肪の摂取量は格段に増えました。
それに伴って、日本人の脳梗塞は減り、
心筋梗塞は増えていったのです。

シンプルに考えれば、
塩分の摂取増加は脳梗塞に繋がり、
脂肪の摂取増加は心筋梗塞に繋がる、
という構図が見えて来ます。
同じ動脈硬化の病気と言いながら、
そこには大きな違いがあるのですね。

このうち、脂肪の増加が心筋梗塞の繋がるメカニズムは、
はぼ明らかになっていますが、
塩分の増加が脳梗塞に繋がるメカニズムは、
必ずしも明らかではありません。

塩分の必要量についても、
色々の意見があって、面白いですね。
塩分とその身体に与える影響というのは、
結構広範で奥が深いのです。
分かっているようでいて、分からないことも、
沢山あります。
まことしやかに嘘が言われることも多いですね。
今度またその話題を取り上げたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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