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真空採血管をめぐるあれこれ [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
外来は午前中だけです。
午後は産業医の面談に廻る予定です。
朝からカルテの整理をして、今PCに向かっています。

さて、今日の話題です。

まず、この写真を見て下さい。



これが、真空採血管です。
血液検査をする時に、
このチューブの中に血液を採って、
それを検査にまわします。

色々なタイプのものがありますね。
血液には色々な成分が含まれていて、
何を検査するかによって、
使う採血管の種類が違います。
血はそのままにしておくと固まってしまうので、
固まると検査の出来ない成分を測る採血管には、
抗凝固剤と言って、
予め血が固まるのを抑える薬が入っています。

僕のところのような、
検査室のない診療所では、
この採血管に血液を採って、
それを検査会社の検査室に運んで、
検査をする訳です。

真空採血管の中は陰圧になっていて、
必要な量の血液を吸い込む仕組みになっています。

どうでしょう。
これだけ聞くと、便利な仕組みに思えますよね。

でも、この採血管には幾つかの問題があって、
最近の事件にも結び付いているんですね。

それを今からご説明します。
これをご覧下さい。



採血管の隣にあるのが、ホルダー付きの採血用具です。
以前紹介した、使いまわしで問題になったものですね。

こうやって、差し込んで使います。


血管に針を刺し、
そこに採血管を差し込むと、
陰圧が掛かって、
血液が自動的に採血管の中に入ります。

問題なのは、陰圧が解除され、
採血管と血管とが、同じ圧になった瞬間です。

その時、採血管の中から、
血液が僅かに逆流する可能性が指摘されました。

以前の真空採血管は、滅菌ではなかったので、
中の細菌が採血の時に、
感染する可能性があることが分かったのです。
このことを受けて、
最近の採血管は滅菌のものに変更されています。
上の写真も滅菌の採血管ですね。

以前「ホルダー」使いまわしの話の時に、
厚生労働省の通達のことを取り上げましたが、
この通達は、そもそも真空採血管の採血のリスクについて、
検討したことが元になっているんです。
採血管の中の血液が逆流すると、
連結されている周辺のホルダーが、
汚染される可能性がある、
という理屈ですね。

採血の方法についても検討が加えられ、
「駆血帯を外してから採血管を差し込む」という
非現実的な方法が決定され、
現場の混乱の原因となっています。
その通達自体は活きていますが、
それ以外の方法も容認するような玉虫色の状態が、
現在も続いているようですね。

一番の問題は、
討議をされているような先生の中には、
実際に採血をされているような方は、
おそらく1人もいないということですね。
そのために、非現実な提案が、
平然と通達になってしまうのです。

採血というのは、リスクのない手技ではないのです。
それが、例の特定機能健診、要するにメタボの健診ですね、
それでは、ある年齢の、殆ど国民全員に義務付けられるような形になっています。
これは天下の悪法だと、僕は思いますね。
せめて、希望者だけにする、
というのが合理的だと思うのですが、
皆さんはどうお考えになりますか?

今日は混乱の続いている採血の話でした。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。


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コメント 2

つばさ

はじめまして。
私はインターフェロン治療中のC型肝炎患者です。
昨日もいいことを読ませていただきました。今日も思いもかけないことを教えていただきました。採血の欠かせない治療なので常にそのリスクにさらされていること改めて知りました。また重要な討議が現場を知らない人たちによってなされていることも驚きでした。
石原先生のような方がこうやって書いてくださらなかったら私たち患者はそんなことを知る由もありません。大事なことをいつも易しく、しかも優しく書いてくださって感謝しております。
by つばさ (2008-06-18 21:46) 

fujiki

つばささんへ
読んで頂きありがとうございます。
長い治療で大変だと思いますが、頑張って下さい。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2008-06-19 06:25) 

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