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カロリー制限の健康寿命延長効果について(猿とネズミの実験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
猿の寿命とカロリー制限.jpg
今月のNature Communications誌に掲載された、
猿の健康寿命がカロリー制限により延長した、
とする論文です。

「長年の論争が決着した」として、
一般の新聞などでも報道がされました。

1980年代よりアメリカの2つの研究機関が、
アカゲザルという猿を使用して、
カロリー制限食の寿命への効果を検証した試験を、
それぞれ独自に行っていました。

その結果は2000年代に論文化されましたが、
その結果は相反するもので、
一方はカロリー制限で寿命が延長したとしたのに対して、
もう一方ではその効果は認められませんでした。

今回の検証は2つの研究チームが、
合同で2つの研究データをまとめて検証しているもので、
それによると、
中高年(16から23歳)の猿のみで解析すると、
カロリー制限により寿命の延長効果が認められました。
癌の発症リスクについても、
2つのグループで違いはあるものの、
カロリー制限で低い傾向を示しました。

2つの研究グループの試験のデザインは、
かなり異なっているので、
単純な比較は難しく、
結果には矢張り食い違いのある部分も多いのですが、
トータルに見て大人になってからのカロリー制限が、
寿命に良い影響を与える可能性が高いことは、
間違いのないことのように思います。

ここで言うカロリー制限は、
通常の摂取カロリーに対して、
30%のカロリー制限を行うもので、
その栄養素の組成については、
ほぼ同一になっています。
炭水化物のカロリー比率は6割弱で、
糖質制限ではありません。

カロリー制限の寿命への影響については、
2013年のPLos One誌にネズミの論文が掲載されています。
それがこちらです。
ネズミのテロメアとカロリー制限.jpg
こちらは通常の食事と、
そこから40%のカロリー制限食を比較したところ、
3か月齢の大人のネズミにおいて、
その寿命が延長し、
染色体の老化の指標であるテロミアが、
より長かったという結果になっていました。

このようにネズミでも猿でも、
大人になってからのカロリー制限は、
その後の寿命や健康に、
それほど著明とは言えないにせよ、
良い影響を与えるという結果が得られています。

これをどのように人間に適応するべきかは今後の問題ですが、
大人になってからのカロリー消費が、
おそらく昔より減少しているであろう現代人においては、
成人になってからどれだけカロリー制限を計画的に行なうのかが、
健康のためには重要なことなのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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