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マイクロプラスチックとナノプラスチックの動脈硬化への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マイクロプラスチックの動脈硬化への影響.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2024年3月7日付で掲載された、
最近問題となっているプラスチックの身体への影響を検証した論文です。

近年プラスチックの環境破壊が注目され、
プラスチックの使用量を減らし、
環境汚染を減らそうとする試みが広く行われています。

これは主に環境への影響で、
私達の身体への直接の影響ではありません。

プラスチックそのものが体内に蓄積することは、
通常はないと考えられていたからです。

しかし、プラスチックが分解劣化し、
非常に微細な細片となると、
それが食品に混ざって体内に入ったり、
空気中の微粒子となって呼吸で肺に取り込まれたり、
皮膚から吸収されるという可能性が否定は出来ません。

このプラスチックの細片のうち、
大きさが1μmから5mmのものをマイクロプラスチック、
より小さくnm(ナノメートル)レベルのものを、
ナノプラスチックと呼び、
上記論文ではこれを総称して、
MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と呼んでいいます。

最近ではペットボトルの水の中に、
一定レベルのナノプラスチックが同定された、
という論文が発表されて話題となりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38190543/

つまり、こうした分解劣化したプラスチックの細片が、
私達の身体の中に存在していることは、
ほぼ間違いのないことなのです。

それでは、その健康影響はどの程度のものなのでしょうか?

今回の研究では、
頸動脈の動脈硬化病変に対して、
血管内治療を行った304名の患者から採取された、
動脈硬化巣(プラーク)の組織で、
マイクロプラスチックとナノプラスチックの測定を行い、
それが健康に与える影響を検証しています。
その後の観察期間を完遂して解析対象となっているのは、
そのうちの257名です。

その結果、
全体の58.4%に当たる150名で、
プラスチックの成分であるポリエチレンが、
頸動脈のプラークから検出され、
そのうちの31名では、
通常の測定法でポリ塩化ビニールが定量されました。

そして平均で33.7か月(±6.9)の経過観察期間中に、
心筋梗塞や脳卒中を発症したか、もしくは死亡したのは、
プラスチックの細片が検出されなかった事例では7.5%であったのに対して、
検出された事例では20.0%という高率になっていました。

今回の研究はまだ確定的なものではなく、
マイクロプラスチックやナノプラスチックの健康影響は、
仮定の域を出るものではありませんが、
こうしたプラスチックの細片が、
炎症などの病変部位に蓄積すること自体は、
おそらくは事実であると考えられ、
その健康影響を含めて、
今後の研究の蓄積を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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