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COVID-19後遺症の出現比率(2022年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ後遺症メタ解析.jpg
JAMA誌に2022年10月10日掲載された、
新型コロナ後遺症の発症頻度についてのメタ解析の論文です。

COVID-19後遺症については、
これまでも何度も記事にしています。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、
体調不良が長期間持続することは以前より指摘されていて、
その呼び名も定義も、
必ずしも統一されていませんが、
概ね感染に罹患後3か月以上持続する症状で、
それにより日常生活や仕事などの社会生活に、
一定の制限が必要となったり困難が生じる場合に、
COVID-19後遺症や新型コロナ後遺症、
COVID-19罹患後症候群やロングCOVID、
などの名称が使用されています。

その症状も数多く報告されていますが、
報告の多いものでは大きく3つに分かれるというのが、
今の一般的な考え方です。
その3つというのは、
①咳や痰がらみ、息切れなどの呼吸器症状
②感情の変化や身体の痛みなどを伴う、全身の倦怠感
③物忘れや集中力低下などの認知機能障害
の3種類です。
他に味覚嗅覚障害がありますが、
これは持続することはあるものの、
他のCOVID-19後遺症とは別に考えることが通常です。

今回の検証では、
2020年から2021年に発症した、
有症状の新型コロナウイルス感染症の、
これまでの臨床データをまとめて解析することで、
世界22か国、トータル120万人以上の事例における、
COVID-19後遺症の頻度とその傾向を検証しています。

その結果、
罹患後3か月以上持続する、
上記3種類のCOVID-19後遺症とされる症状のうち、
少なくとも1種類が見られる人は、
有症状のCOVID-19の罹患者のうち、
6.2%(95%UI:2.4から13.3)に達していました。

その内訳としては、
呼吸器症状が3.7%(95%UI:0.9から9.6)に認められ、
持続する倦怠感が3.2%(95%UI:0.6から10.0)、
認知機能障害が2.2%(95%UI:0.3から7.6)に、
それぞれ認められていました。
(この95%UIというのは、95%CIと同じ意味ですが、
confidence(信頼)という用語は事実と異なり、
むしろ信頼出来ない区間なのでuncertainty (不明瞭)とするべきなのだ、
という最近の考え方によってその用語が使用されています)

年齢性別に分けて検証すると、
20歳未満では性差はなく2.8%(95%UI:0.9から7.0)に何らかの後遺症が、
20歳以上では性差があり、
男性は5.4%(95%UI:2.2から11.7)、
女性は10.6%(95%UI:4.3から22.2)に何らかの後遺症が、
認められていました。

この後遺症の症状は、
入院を要した比較的重症の患者さんでは、
平均で9.0か月(95%UI:7.0から12.0)持続していて、
入院を要しなかった軽症の患者さんでは、
平均で4.0か月(95%UI:5.6から4.6)持続していました。
これは罹患時からの期間になりますから、
軽症の事例では罹患後3か月を超えて症状が持続していても、
概ね1か月くらいで改善することが多い、
ということを意味しています。
一方で後遺症のうち15.1%(95%UI:10.3から21.1)においては、
罹患後12か月を超えて症状が持続していました。

このように、
新型コロナウイルス感染症の罹患後には、
トータルで6.2%の患者さんで、
3か月以上持続する後遺症と言われる症状が認められます。
そのうち最も多いのが呼吸器症状で、
次に多いのが倦怠感、認知機能障害と続いています。
後遺症の症状は20歳以上の女性に多く、
入院を要した重症事例においては、
持続が平均で9か月と長い傾向が認められます。
後遺症が認められた事例のうち15.1%では、
症状は1年を超えて持続していました。

COVID-19後遺症の疫学は、
このようにほぼ明らかとなったと言って良いのですが、
問題は長期継続するような事例における有効な対処や治療法の解明で、
今後そうした点においても、
有用な知見が発表されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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