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「千夜、一夜」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
千やいちあ.jpg
久保田直監督の失踪人をテーマにした、
オリジナルのシリアスドラマで、
30年間失踪した夫を待ち続ける女性を田中裕子さんが、
夫が2年前に失踪した女性を尾野真千子さんが演じ、
その対象的な2人を中心にして、
佐渡を舞台に静謐なドラマが展開されます。

これは吉田恵輔さんの最近の作品にちょっと似た感じで、
やや極端な妄執に囚われた登場人物達が、
各々の人生のゴールを探して彷徨うようなドラマです。

ただ、吉田監督は結構過激な対立構造があって、
それが個人的な妄執とバランスを取っている感じがあるのですが、
この作品では対峙する人物の間に、
それほど強い対立が起こらず、
せいぜいその場の口げんか程度で、
映像的には終わってしまうので、
その点がやや物足りない印象を受けます。

全てが秘められたままで展開する、
表面的には静謐で内面はドロドロ、
というようなタイプの作品もありますが、
この映画の場合主人公はかなり抑制的なのですが、
周辺の人物はそのまま内面を語る、
という感じなので、
主人公を梃子にして物語が展開する、
という感じにはならず、
その点がどうも中途半端で物足りなく感じるのです。

あとクライマックスに、
ちょっと異様な展開があるんですね。
それはないだろう、という感じで、
僕はちょっと引いてしまったのですが、
ここが良い、と感じる人が居るかも知れません。

映像はそれほど個性的という感じではなく、
可もなく不可もなくという感じ。
上映時間の2時間6分はいかにも長いなあ、という印象で、
1つ1つのカットが非常に長く、
「待つ」ということがテーマなので、
こうしたのかも知れませんが、
もう少し切り詰めた方が良かったように感じました。

見どころは矢張り役者の演技にあって、
主人公の田中裕子さんの唯一無二という個性も素晴らしいですし、
対比された尾野真千子さんが、
如何にもという感じの役柄を、
振幅の大きな芝居で鮮やかに見せていました。
後半に重要な役柄を担う安藤政信さんも、
彼が演じたからこその説得力があったと思います。
特筆するべきは、
主人公にストーカー的につきまとう漁師を演じたダンカンさんで、
主人公の秘められた妄執に対比される、
周囲を巻き込む可視的な情念を演じて、
その2つがぶつかり合うラストは見応えがありました。

総じて狙いはとても良かったと思うのですが、
役者の演技に頼りすぎて散漫に流れた感じがあって、
観客をねじ伏せるようなレベルには、
達していなかったのはやや残念に思いました。

たまに見応えのある映画や面白い映画を、
というような鑑賞には不向きの、
映画マニア向きの作品です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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