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JAK阻害剤による円形脱毛症治療(第3相臨床試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAK阻害剤による円形脱毛症治療.jpg

the New England Journal of Medicine誌に、
2022年3月26日掲載された、
円形脱毛症に対する、
関節リウマチ治療薬の有効性を検証した論文です。

円形脱毛症は、
その原因に自己免疫的機序が想定されている脱毛症で、
俗に5円玉禿げと呼ばれるような、
ストレスで一時的に起こる軽度のものから、
全身の体毛に病変が広がるような重症のものまで、
事例によりその状態は様々です。

男性ホルモンに影響される、
男性型の脱毛や加齢に伴う脱毛とは、
その性質が根本的に異なっているのです。

そのため円形脱毛症の治療には、
ステロイドなどの免疫や炎症を抑制する薬剤が、
使用されてきました。

最近円形脱毛症の治療にその有用性が期待されているのが、
JAK阻害剤です。

JAK阻害剤は細胞内の炎症経路を活性化させる、
JAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害する薬剤で、
この経路を阻害することにより、
炎症性のサイトカインの作用が抑制され、
炎症が抑制されるという効果があります。

そのため、関節リウマチの治療薬として使用されていますが、
同様の自己免疫的機序が想定される円形脱毛症にも、
その有効性が期待されているのです。

今回の第三相臨床試験では、
SALTと呼ばれる臨床スコアで、
中等症から重症と診断された円形脱毛症に対して、
JAK阻害剤であるバリシチニブを、
1日2㎎と4㎎で使用し、
偽薬との3群に分けて、
臨床試験を施行しています。
勿論どの群が選択されたかは、
患者さんにも担当医師にも分からない形の試験です。

このバリシチニブの使用量は、
現行日本で関節リウマチの治療に施行されている量と同じです。

654名が登録されたBRAVE-AA1試験と、
546名が登録されたBRAVE-AA2試験が、
同時に解析されていますが、
いずれにおいてもバリシチニブは、
円形脱毛症の臨床スコアを有意に改善していて、
2㎎より4㎎でよりその効果は顕著に認められていました。

費用対効果や有害事象のリスクを考えると、
この薬剤を軽症の円形脱毛症に使用することは適切ではありませんが、
全身の脱毛を伴うような重症事例においては、
極めて有効性の高い治療の選択肢となった、
と言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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