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オミクロン株BA.2変異の特徴 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オミクロン株BA2の特徴.jpg
これは査読前の論文を公開している、
medRxivに2022年1月30日公開された短報ですが、
新型コロナ、オミクロン株の、
BA.1とBA.2 という変異の特徴を比較したものです。

オミクロン株の流行が続いていますが、
現行日本で流行しているBA.1という亜種以外に、
別個の変異を持つBA.2という亜種がヨーロッパなどで流行しており、
その亜種が日本でも報告されるようになって、
注目を集めています。

クリニックが提携しているRT-PCR検査機関でも、
ウイルス量の多い陽性検体ではゲノム解析を行っています。
最初にスクリーニング検査として、
デルタ株に特徴的な変異の有無のみが確認され、
その後ゲノム解析でタイプが同定されるという流れです。

と言っても、
現状デルタ株のスクリーニング陽性例は、
1月初旬の1例のみでしたから、
あまりこのスクリーニングに意味があるとは思えません。

早い時期に、
「どうしてオミクロン株のスクリーニングに切り替えないのですか?」
と検査会社の担当者にお聞きしたのですが、
「そうした要請は行政から受けていないのでやっていません」
という返答でした。

何だかなあ…という感じです。

さて、ゲノム解析は2週間以内に届く、
という予定なのですが、
現状はそれが遅れに遅れていて、
結果が届くまでには1か月くらいが掛かっています。
現状判明している中では、
今年の検体ではデルタ株が1例で、
それ以外は全てオミクロン株のBA.1という結果でした。

ステルスオミクロン、という物騒な呼称がありますが、
これは欧米のオミクロン株のスクリーニングで、
陽性とされないため、
スクリーニングを擦り抜ける可能性がある、
という点からのネーミングで、
日本ではそもそもオミクロン株のスクリーニング自体が、
それほど行われていないのに、
「全ての感染はオミクロン株として対応する」
という行政の通達のみが活きているという奇怪な状態なので、
あまり日本の臨床では意味のない名称です。

上記文献ではオランダの解析データが報告されています。

これは2021年12月下旬から2022年1月初旬のものですが、
8541名の家族内感染の1例目の経過を追い、
そのうちの2122例がBA.2由来、
1から7日の経過観察中に17945例の家族内二次感染事例が疑われ、
そのうちの5702例が確定事例とされています。
ここから二次感染率を算出すると、
BA.1が29%に対してBA.2は39%となっています。

BA.2はBA.1と比較して、
ワクチン未接種者への感染感受性が2.19倍(95%CI:1.58から3.04)、
ワクチン2回接種者への感染時感受性が2.45倍(95%CI:1.77から3.40)、
ブースター接種完了者への感染感受性も2.99倍(95%CI:2.11から4.24)と、
それぞれ有意に増加していました。

ワクチン未接種の感染者からの家庭内二次感染リスクも、
BA.2はBA.1と比較して、
2.62倍(95%CI:1.96から3.52)有意に増加していました。

このように、
BA.2亜種はBA.1と比較して、
感染力は強く、ワクチン接種による予防効果も弱い、
ということが推測されました。

ただ、ワクチン接種を2回以上施行して感染したケースでは、
そこからの感染拡大は従来亜種と同等でした。

BA.2については、
まだ査読前のデータくらいしか情報はなく、
日本での検査の遅れは腹立たしくは感じますが、
その性質についてはまだ不明の点が多いので、
慎重に経過をみたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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