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品川区梯子を外す [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は夏の休診期間でクリニックは休診です。

受診予定の方にはご迷惑をお掛けして申し訳ありません。

8月10日の夜にはどうにかレセプトを出して一区切りという感じ。

11日から少しだけ遊びに出たのですが、
夕方になって嘱託医をしている老人ホームから連絡があり、
看取りの入所者の方のチアノーゼが進行している、
という「不幸の電話」のようなお話でした。

それからまた夜遅くに電話があり、
メールがありまして、
今日は朝4時に起きて、
予定は勿論全てキャンセルして、
取り急ぎ老人ホームに向かっている、
という現状です。

そんなに遊んではいないのですよ。

昨日と今日だけどうか自由にしてはくれないのでしょうか?
せめて、10日のことであれば、
幾らでも対応は出来たのですが、
今日の今日ですか、と考えると、
頭がグルグルとしてしまいます。

結局休みゼロで夏季休診期間は終了、
ということになりそうです。

今日は少し新型コロナワクチンの話をします。

僕は基本的には、決まったことについては、
その内容にいささか賛同をしかねる部分があっても、
協力出来るところは協力し、
従うべきところは従うようにしています。

それはワクチンに関しても同じです。

クリニックのある品川区においては、
最初は集団接種という形で、
福祉施設などを利用したワクチン接種が始まり、
それから一部の病院などが、
先行接種会場として認証されました。

それが6月の初めに、
クリニックなどでも個別接種が開始される、
という話になり、
説明会が6月9日にあって、
正式には6月21日からクリニックでも接種を開始しました。

接種対象者は品川区の規定に準ずる、
という形で最初は高齢者を優先する、
ということになっていました。

使用されるのはファイザー・ビオンテック社のワクチンで、
毎週(もしくは隔週)どのくらいの量を接種するのか、
計算して最初は区に、途中からは医師会に連絡をして、
翌週にワクチンが届く(もしくは取りに行く)、
という段取りです。

ワクチンは凍結されているのですが、
クリニックでは解凍して冷蔵保存になります。
当初は冷蔵したらすぐ使い切り、
ということでしたが、
今では1か月は冷蔵で保存可、
ということになっているので、
1か月のスケジュールを立てて、
使い切るように調整をするのです。

ワクチンは原則きっかり3週間で2回の接種を行います。
その3週間後がワクチンの使用期限内であれば、
それを込みで考えれば良いのですが、
期限を外れてしまうと、
次回のワクチンの注文に、
それを反映させなければいけません。

1本のバイアルで6回接種する決まりで、
一旦常温に戻してしまうと、
6時間以内には接種をしないといけないので、
6人をセットで考えて予約を取るのですが、
なかなか思うようにはいきません。

ある全くの初診の方が、
「どうしてもお宅で接種したい」と言うので、
予約を入れたのですが、
当日の接種予定時間の直前になって、
「キャンセルする」と一方的に通知された、
ということがありました。

連絡があるだけましな方で、
全く何の連絡もなく、
ドタキャンということも稀ではありません。

その度に、真面目に死に物狂いで電話を掛けて、
キャンセル待ちの方を探すのです。

それでも調整をしながらワクチン接種を開始したのですが、
まだ7月の中旬、つまり個別接種開始から、
1か月も経たないうちに、
医師会からファックスで通達が来て、
今後ワクチンの不足が予想されるので、
新規の個別接種の予約は一旦中止として下さい、
という一方的な指示がありました。

あまりの段取りの悪さに驚きましたが、
それでも真面目に新規の方はお断りするようにしました。

ただ、前述のように、
ワクチンの計画は先へ先へスケジュールを組まないと成立しないので、
調整期間もなく、明日からこうなりますと言われても、
現場は困ってしまうのが現実です。

それでも皆この理不尽な要求にも抗いもせず、
頑張っているのだろうな、と思っていると、
商店街から仰天するチラシが届きました。

クリニックの近隣に、
健康診断に特化したクリニックがあるのですが、
そこはクリニックであるにも関わらず、
先行接種の対象機関に認定されていたのですね。

そのチラシによると、
そのクリニックの「ご好意」により、
何ら年齢などの制限を設けることなく、
商店街のお店の家族や従業員に、
ワクチン接種を特別に実施する、というのです。

ワクチンが足りないので新規予約を中止しろ、
と言っているのに、
同じ近隣の健診クリニックでは、
商店街に限って新規受け付けを制限なくドシドシ行う、
と言っているのです。

こんな馬鹿な話があるでしょうか?

そればかりではなく、そのクリニックでは、
「うちで区民健診を受けてくれればワクチンも打ちますよ」
という宣伝までしていて、
近隣のクリニックからも苦情が出ているのです。

現状新型コロナワクチンは全て公費で賄われる、
公的接種という扱いである筈です。
その健診クリニックはそれを、
自分達の金儲けのための道具として使用しているのです。

こんなことがまかり通っていることも驚きですが、
それを指導することが出来ない、
品川区や医師会も、
機能していないと言って過言ではないと思います。

このように一部で余って自由に打ちまくっている一方、
足りないので新規予約が中止されたワクチンですが、
8月3日になって、
再び驚天動地のファックスが送付されました。

どういうものかと言うと、
ワクチン不足が深刻化したために、
品川区においては、
12から15歳への接種と、
難病や寝たきりのために集団接種会場での接種が困難な場合以外は、
全ての接種を集団接種会場に一本化して、
個別接種は中止すると言うのです。

この年齢区分の話などは、
それまでに一度も議論されたことはなかったのですね。

にも関わらず、
この通達で急に年齢制限などが記載され、
要するに集団接種で面倒な対象のみを、
個別接種で施行しろ、それ以外は手を出すな、
というような方針が何の前触れもなく決定されたのです。

医師会は本来、
区がそうした理不尽な決定をしても、
それに反対するべき役割の筈ですが、
区の通知の翌日には医師会の同様の文書も配布されているので、
そうした抵抗もしたのかどうか不明のままです。

ワクチンが不足しているから、
対象の絞り込みを行う、
というのはまあ妥当な考え方ではあります。

ただ、その2週間前には新規接種中止の通達が出て、
数日前にはそれは解除するけれども、
ワクチンの配布数は大幅に少なくなる、
という通知が出ているのです。
そこまでは、ワクチンの数は減っても、
接種自体はこれまで通りで継続する、
という方針が示されていたのですね。
それが一転して数日で対象者が大幅に変更され、
ほぼ「打つな」という方針に変更されているのです。
それも「いつからそうする」という日付やスケジュールが、
文書の何処にも明記されていないのですね。

現場でスケジュール作りと、
廃棄ワクチンを作らないために日々努力している、
末端医療機関の我々に対して、
こうした仕打ちはあまりにも不誠実で、
あまりにも無体なものではないでしょうか?

これまで真面目に付き合っては来ましたが、
最近のワクチン供給の迷走ぶりは、
あまりにも現場を無視した酷いもので、
その上一部の医療機関だけが何故か潤うという不公正なものなので、
そろそろ撤退するのが良いのかしら、
それもシャクには触るしなあ、と、
日々悶々としているのが現状なのです。

減らすのはそれでいいんですよ。
ただ、こちらも先を見ながら、
ワクチンの廃棄を避けようと、
スケジュール管理に知恵を絞っているので、
せめて猶予期間などをおいて、
スケジュールを明確化して欲しいですよね。
後、特定の医療機関のみがフリーハンド、
というような不公正は止めて頂きたい。
それから、対象者を限定するのであれば、
これも猶予期間やスケジュールを明確化して欲しいですよ。
数日前とは全く違うことを、
1枚のファックスで通知してそれでお終い、
というのはこちらをあまりに馬鹿にした話ではないでしょうか?

今日は品川区に梯子を外された、
という話題でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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UZAK

おはようございます。
いつも有益な情報ありがとうございます。

石原先生の心中お察しいたします。
お疲れ様です。
by UZAK (2021-08-13 08:39) 

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