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メタボ改善のための太極拳の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メタボに対する太極拳の効果.jpg
Annals of Internal Medicine誌に、
2021年6月1日ウェブ掲載された、
太極拳のメタボ改善のための有効性についての論文です。

勿論中国発の研究です。

国や地域によってその基準値については違いがありますが、
内臓脂肪の増加を簡単に測る物差しとして、
臍の高さのお腹周り(腹囲)があり、
それが一定の基準を越えていて、
他に血圧や血糖の上昇などの検査異常があると、
その後高率に動脈硬化が進行して、
心筋梗塞や脳卒中などのリスクになることは、
国や地域を問わず公衆衛生的事実として認識されています。

日本でもその考えに基づいて、
メタボリックシンドロームとして定義され、
メタボ健診が行われているのです。

メタボを指摘された場合には保健指導が行われ、
その主な軸となるのは食事と運動です。

ただ、それではどのような運動が、
メタボの改善に有効なのか、
という点については、
それほど科学的なデータがある、
という訳ではありません。

太極拳はご存じのように中国のお家芸の運動で、
高齢者の朝の習慣として定着しているものです。

高齢者が継続的に可能である、と言う点では、
健康のための運動の有力候補ですが、
それでメタボが改善するのか、
腹囲や体重が減少するのか、
と言うような点については、
これまであまり科学的なデータが存在していませんでした。

そこで今回の臨床研究は香港において、
50歳以上の一般住民で、
腹囲が男性90センチ以上、女性80センチ以上
(国際学会のIDFの基準値)の543名を、
くじ引きで3つの群に分けると、
コントロール群は特に運動指導を行わず、
通常運動群は1週間に3回、
1時間のジョギングと筋力トレーニングを組み合わせた運動を指導し、
太極拳群は週に3回1時間の指導を行なって、
12週間はそれを継続し、
その後は本人の自由に任せて、
38週までの経過観察を行なっています。

その結果、
12週の時点でコントロールと比較して、
通常運動群では腹囲が1.3センチ(95%CI:-1.8から-0.9)、
太極拳群では1.8センチ(95%CI:-2.3から-1.4)有意に減少し、
その腹囲減少は38週時点でも維持され、
より改善は顕著となっていました。

検査データにはそれほどの動きはありませんでしたが、
HDLコレステロールは運動群で増加し、
中性脂肪は低下する傾向を示しました。

このように、太極拳は通常の運動プログラムと比較して、
遜色のない効果をメタボ改善に発揮していて、
一部はより有効性が高いという結果を示しています。

ただ、太極拳が浸透している地域での研究ですから、
慣れた運動の方が続けやすかった、ということはありそうですし、
中国でこうした臨床研究をして、
太極拳の方が劣っている、
という結果は絶対出せないようにも思いますから、
ある程度割り引いて考える必要はあるかと思います。

ただ、メタボ改善のような目的の運動は、
おそらくその地域地域で、
定着している慣れたものを中心に据えるのが、
一番有効性を得られやすいということは、
ほぼ事実と考えて良いのではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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