動脈硬化所見の可視化が病気の予防に与える影響について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のLancet誌に掲載された、
心血管疾患の予防のために、
頸動脈のエコー所見を分かり易く説明することの、
有効性についての論文です。
医者はどうしてもこうした研究を軽視しがちですが、
公衆衛生や医療コスト全体を考える時には、
こうした検証が重要となることは間違いないと思います。
体重の管理や運動習慣、バランスの取れた食事、禁煙などが、
動脈硬化による病気の予防のために重要であることは、
これはもう間違いのない事実ですが、
その継続的な実行はそれほど簡単なことではありません。
医療の専門職としては、
その知識や経験を総動員して、
病気の予防のためにはどうすれば良いのかを説明するのですが、
その重要性は往々にして不充分にしか伝わりません。
特にまだ病気をしていない人の場合には、
痛みなどの症状もないので、
なかなか予防のために生活を改善する、
というモチベーションが得られにくいのです。
ただ、そうした人でもテレビやネットの情報などには、
極めて敏感に反応して、
そこで指示された通りの反応を取ったり、
勧められた食材を食べたリすることがしばしばあります。
つまり、生活改善の試みがなかなか成功しないのは、
指導する医療者の方法にもおそらくは問題がありそうです。
今回の研究はスウェーデンのもので、
1つ以上の心血管疾患リスクのある、
また病気は発症していない、
登録時に40歳、50歳、60歳の3532例に対して、
頸動脈の超音波検査を含む健診を施行。
対象者をくじ引きで2つに分けると、
一方は通常の結果説明のみを行ない、
もう一方では超音波検査結果の分かりやすい画像を渡し、
更に看護師が電話で内容を確認する、
という試みを行なっています。
その画像がこちらです。
その1年後に再評価を行なったところ、
超音波検査の画像説明などを行なった群において、
行なわなかった群と比較して、
心血管疾患のリスクスコアの有意な改善を認めました。
つまり、
そのままだと生活を変えよう、とまでは思わなかった人が、
こうした試みをすることにより、
このままではまずいので生活を改善しよう、
と一定レベルは思ってくれた、
という結果になっています。
こうした試みは、
一方でそれほどの臨床的意義のない検査結果を、
殊更に大袈裟に伝えてしまう、というリスクもあるのですが、
幾ら健診をしても、
それが生活改善に繋がらなければ、
トータルには病気の予防にならないのですから、
ある程度は生活改善を促すための検査やプレゼンテーションにも、
一定の意義があると考える必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のLancet誌に掲載された、
心血管疾患の予防のために、
頸動脈のエコー所見を分かり易く説明することの、
有効性についての論文です。
医者はどうしてもこうした研究を軽視しがちですが、
公衆衛生や医療コスト全体を考える時には、
こうした検証が重要となることは間違いないと思います。
体重の管理や運動習慣、バランスの取れた食事、禁煙などが、
動脈硬化による病気の予防のために重要であることは、
これはもう間違いのない事実ですが、
その継続的な実行はそれほど簡単なことではありません。
医療の専門職としては、
その知識や経験を総動員して、
病気の予防のためにはどうすれば良いのかを説明するのですが、
その重要性は往々にして不充分にしか伝わりません。
特にまだ病気をしていない人の場合には、
痛みなどの症状もないので、
なかなか予防のために生活を改善する、
というモチベーションが得られにくいのです。
ただ、そうした人でもテレビやネットの情報などには、
極めて敏感に反応して、
そこで指示された通りの反応を取ったり、
勧められた食材を食べたリすることがしばしばあります。
つまり、生活改善の試みがなかなか成功しないのは、
指導する医療者の方法にもおそらくは問題がありそうです。
今回の研究はスウェーデンのもので、
1つ以上の心血管疾患リスクのある、
また病気は発症していない、
登録時に40歳、50歳、60歳の3532例に対して、
頸動脈の超音波検査を含む健診を施行。
対象者をくじ引きで2つに分けると、
一方は通常の結果説明のみを行ない、
もう一方では超音波検査結果の分かりやすい画像を渡し、
更に看護師が電話で内容を確認する、
という試みを行なっています。
その画像がこちらです。
その1年後に再評価を行なったところ、
超音波検査の画像説明などを行なった群において、
行なわなかった群と比較して、
心血管疾患のリスクスコアの有意な改善を認めました。
つまり、
そのままだと生活を変えよう、とまでは思わなかった人が、
こうした試みをすることにより、
このままではまずいので生活を改善しよう、
と一定レベルは思ってくれた、
という結果になっています。
こうした試みは、
一方でそれほどの臨床的意義のない検査結果を、
殊更に大袈裟に伝えてしまう、というリスクもあるのですが、
幾ら健診をしても、
それが生活改善に繋がらなければ、
トータルには病気の予防にならないのですから、
ある程度は生活改善を促すための検査やプレゼンテーションにも、
一定の意義があると考える必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2018-12-19 06:17
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