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最も安全な入浴法は何か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
入浴法と身体リスク.jpg
2014年のInternational Journal of Biometeorology誌に掲載された、
色々な入浴法の安全性を比較した論文です。
愛知医科大学などの研究者による日本発の研究です。

日本の伝統的な入浴法は、
40度前後のお湯に首まで浸かるというもので、
これを全身浴(全身温浴)のように言うことがあります。

ただ、この全身浴では全身に水圧が掛かるので、
入浴の前後で血圧の急変動が起こりやすく、
交感神経が緊張して心臓にも負担が掛かります。
頭を除く全身が高温に包まれるので、
体温は過度に上昇する可能性が高くなり、
脱水が進行する可能性もあります。

よく引用されている東京都長寿医療センターの調査によると、
2011年の1年間で全国で17000人余りが、
こうした入浴前後の身体の変化をきっかけとして、
入浴中に急死したと推計されています。
これは交通事故による死亡者数の3倍を超える人数です。

このように危険な行為である全身温浴ですが、
それでも多くの人が好んで行っているのは、
入浴にはリラックス効果があり、
気分が良くなり疲れが取れると、
多くの人が実感しているからです。

それでは、
入浴法を変えることにより、
全身温浴の健康へのリスクを、
軽減させることは可能なのでしょうか?

元々その目的で、
2000年頃に日本の研究者により推奨されたのが、
38度程度のぬるめのお湯に、
お腹の上くらいの部分まで時間を掛けて浸かる、
所謂「半身浴」です。

この半身浴はその後ダイエット効果が高いと称され、
一般に大きく広がりましたが、
温浴効果として全身浴に勝るということはそもそもありませんし、
上半身が冷えることは、
その時の室温にもよりますが、
結構不快に感じることがあります。

それでは温浴効果とリラックス効果があり、
安全性にも優れた入浴法はないのでしょうか?

欧米ではサウナの健康効果が研究されていて、
日本的な入浴と簡単に併用できるものとして、
ミストサウナが注目されています。

そこで今回の検証では、
7人の健康な男性ボランティア(おそらく学生)に、
38℃の半身浴を20分間と、
42℃のミストサウナと半身浴の組み合わせで20分間、
そしてミストサウナに顔面のみ冷風を送風して20分間という、
3パターンの入浴法を比較して、
深部体温の上昇や脈拍血圧の変化などの違いを検証しています。

その結果、
半身浴と比較しても、
血圧や脈拍、体温の上昇は、
ミストサウナでは急激ではなく、
その温熱効果は保たれたまま、
より安全な入浴法であると考えられました。
入浴による水分喪失も、
半身浴と比較してミストサウナでは軽度にとどまっていました。
身体に与える影響には違いはありませんでしたが、
顔に送風することは、
入浴の快適さを高めていました。

最近ではまた全身浴を、
推奨されるような「専門家」の方がいらっしゃるのですが、
「入浴の科学」のまともなエビデンスは少なく、
殆どは日本の小規模の研究に過ぎない、
という点はしっかり押さえておく必要があると思います。

まあ、快適にリラックス出来ると実感される入浴法が、
個人には合っているのではないでしょうか?
怪しげなうんちくに惑わされるのは危険だと思いますし、
そもそも入浴という行為自体、
一定の負担は身体に掛けるものなので、
安全ではないという点も理解しておく必要があると思います。
この点は運動と同じだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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