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妊娠初期のβブロッカー使用の安全性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
βブロッカーの妊娠中の安全性.jpg
2018年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
βブロッカーという降圧剤の、
妊娠中の使用の安全性についての論文です。

妊娠高血圧症は、
母体と胎児の双方に影響を与える大きな問題です。

そのために妊娠中の高血圧症に対しては、
降圧剤の使用が考慮されます。

ただ、妊娠中の薬剤の使用は、
胎児の成長に影響を与える可能性が否定出来ません。

βブロッカーというタイプの降圧剤は、
妊娠高血圧に対して、
世界的には最も広く使用されている薬です。

日本においては禁忌ではありませんが、
積極的な推奨ではありません。
リスクを考慮した上でその使用は慎重に判断するべき、
というニュアンスの添付文書の記載となっています。

βブロッカーは胎盤を通じて、
母体に移行することが分かっています。
また、胎児の発育遅延の可能性を指摘する報告もあります。

ただ、現状それほど明確に、
βブロッカーの妊娠中の使用と、
胎児の奇形などの異常との関連が証明されたことはありません。

今回のデータは北欧の5カ国とアメリカにおいて、
北欧5カ国では2310825件、
アメリカでは1358708件の妊娠事例の、
大規模な疫学データを活用したもので、
そのうち北欧で3577件、アメリカで14900件では、
妊娠高血圧症を合併しており、
北欧のデータの19.1%に当たる682件と、
アメリカのデータの11.2%に当たる1668件では、
βブロッカーを妊娠初期に使用していました。

その結果、
妊娠中のβブロッカーの使用と胎児の奇形や予後との間には、
有意な関連は認められませんでした。

今回のデータはこの分野では最も大規模なもので、
βブロッカーが妊娠中の高血圧症治療の選択肢として、
有用である可能性を示唆するものです。

こうしたデータが蓄積されることにより、
妊娠中の高血圧治療の指針が、
より整備されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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