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心不全に対する減塩の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心不全に対する減塩の効果.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌のレビューですが、
心不全の予後改善のために減塩が良いという、
どの教科書にも書いてある当たり前のアドバイスが、
実はあまり明確な根拠に乏しいという、
興味深い内容の論文です。

食事の塩分を制限することが健康に良いという考え方は、
高血圧や心臓病、腎臓病などにおいて、
ほぼ確立された事実と考えられています。

ただ、1日10グラムを超えるような、
明らかな食塩過多が悪いということであって、
1日5グラムを切るような厳しい塩分制限が、
本当に健康的なのか、と言う点については、
その見解は一定していないのが実際です。

たとえば高血圧症においても、
一応ガイドライン上では1日6グラム未満の減塩が、
推奨されてはいますが、
強い塩分制限はむしろ高血圧の患者さんの予後を悪化させる、
という報告もあります。

心臓の機能が低下して、
身体に水が溜まったり、呼吸が苦しくなったりする心不全では、
体液量が体内のナトリウム量で規定されるという考えから、
極力塩分を制限した方が、
心臓への負担が減り予後の改善に繋がる、
という考え方があります。

その見地から現行の日本のガイドラインでは、
慢性の心不全の患者さんでは、
1日6グラム未満の塩分制限が推奨されています。

ところが、
実際にはより強力な塩分制限により、
心不全の予後に悪影響があり、生命予後も悪化した、
というような報告もまた認められます。

今回のレビューでは、
これまでに行われたこの分野の主だった臨床データを、
メタ解析の手法でまとめて解析していますが、
それによると評価に値するデータは、
全体で9つの研究のトータル479名のものしかなく、
個々の研究の症例数は、
いずれも100例に満たない小規模な研究ばかりでした。

減塩の効果を入院中の患者さんで見ると、
減塩の明確な効果は認められませんでした。
一方で外来のみの検証では、
4つの研究のうち2つでは明確な予後の差はなく、
残りの2つでは一定の心不全のレベルの改善効果が認められました。

つまり、入院しているような、
比較的重症の事例では、
過度の減塩はむしろ患者さんに悪影響を与える可能性がある一方、
比較的軽症の外来の心不全の患者さんでは、
減塩には一定の予後改善効果がありそうです。

この場合の減塩というのは、
概ね1日2から3グラムという高度のものなので、
免疫力を落とし、生命予後を悪化させることも、
充分に想定出来ます。
入院では厳密な減塩が可能となる一方、
外来では実際にはそこまでは出来ないので、
それが結果の違いとなったようにも思われます。

いずれにしても、
1日5グラムを切るような減塩が、
心不全においても予後改善に結び付くという根拠は乏しく、
ガイドライン上の常識ではあっても、
今後は再検証が必要な事項ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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