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鉄剤の効果的な飲み方は? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
鉄の吸収とサプリメント.jpg
2017年のLancet Haematology誌に掲載された、
鉄欠乏性貧血の患者さんの、
最も効果的な鉄剤の飲み方は何かを検証した論文です。

若い女性に多いのが鉄欠乏性貧血で、
女性は生理の出血により定期的に鉄分が不足しやすくなる一方、
ダイエットを気にして食事制限をすることも多いので、
二重の意味で貧血が増えるのです。

そこで貯蔵鉄が不足して貧血を生じやすいような女性では、
鉄剤の薬やサプリメントを、
補充することが推奨されます。

ただ、飲み薬の鉄剤というのは、
それほど効率の良いサプリメントではありません。

使用頻度の高い硫酸鉄の場合、
食事と一緒に飲んだ場合の吸収率は2から13%で、
食間での使用でも5から28%というデータがあります。

つまり、その吸収率は決して高いものではなく、
吸収される鉄よりも、
そのまま便から排泄される鉄の方が、
ずっと多いというのが実際です。

ここで問題となるのは、
吸収されない鉄分が多いことが、
便秘や吐き気などの不快な症状の原因となるので、
鉄剤の服用の持続が困難となることと、
鉄剤の血液濃度の一時的な上昇により、
血液中の鉄の吸収を調整するホルモンである、
ヘプシジンの濃度が高まり、
それが結果として鉄の吸収を更に抑制してしまう、
という悪循環があることです。

このためより効率的な鉄剤の服用法として、
間隔を空けて高用量を使用することが良いのでは、
という意見がある一方で、
少量を頻回に使用した方が良いのでは、
というような意見もあって、
その見解は必ずしも一致していません。

今回の研究はその点を検証したもので、
例数は少ないのですが、
放射能でラベルした鉄を使用して、
直接的に鉄の吸収率を測定して比較している点が特徴です。

スイスのチューリッヒにおいて、
18から40歳の鉄欠乏のある女性
(貯蔵鉄の指標であるフェリチンが25μg/L以下であることで評価)を登録し、
1つ目の試験では40名をくじ引きで2つに分け、
一方は毎朝60ミリグラムの硫酸鉄を朝8時に毎日内服し、
もう一方は1日おきに内服して、
毎日では14日間、
1日おきでは28日間の使用を継続します。
2つ目の試験では、
一方は1日120ミリグラムの硫酸鉄を3日間毎日1回で服用し、
もう一方は60ミリグラムを2回に分けて服用して、
2週間空けて両者を入れ替えてもう一度同じことを試みます。

その結果、
1日おきの服用では、
鉄の吸収率は21.8%(95%CI; 13.7から34.6)であったのに対して、
毎日の服用では、
16.3%(95%CI; 9.3から28.8)となっていて、
1日おきに服用した方が毎日服用するより、
吸収率は有意に高くなっていました。
そして、トータルな全日での合算でも、
身体に吸収された鉄分の量は、
毎日飲むより1日おきに飲む方が、
より多くなっていました。

1日に1回と2回の服用の比較では、
その鉄分の吸収率には有意な差はなく、
1回より2回の分けた方が、
血液中のヘプシジン濃度は有意に高くなっていました。

要するに、
鉄剤の吸収率を高く保つためには、
ヘプシジン濃度をなるべく上げないことが重要で、
そのためには服用の間隔を空けることにより、
血液中の鉄の濃度が高い時間をなるべく少なくすることが、
有用性が高いという結論になっています。

同量の鉄を補充するのであれば、
少し時間は掛かっても、
毎日ではなく1日おきに服用するのが、
効果的と考えて良いようです。

ただ、この試験は重症の鉄欠乏貧血の患者さんを、
対象としたものではないので、
そうした患者さんでは元々ヘプシジン濃度は抑制されており、
また別個の結果が出る可能性もある、
と言う点には注意が必要です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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