高齢者が汚れた空気の中でジョギングすることのリスクについて [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のLancet誌に掲載された、
排気ガスで汚れた空気の中でジョギングすることの、
健康リスクについての論文です。
これは皆さんが多分そうだろうなと感じていることを、
化学的に検証して、
矢張りそうか、という結論に至ったものです。
無理のないジョギングやウォーキングの習慣が、
肥満の予防や筋力の維持、体調の維持に繋がり、
呼吸機能や心機能の改善にも良い影響を与えることは、
多くの精度の高い科学的な裏付けのある事実です。
健康のためや楽しみのために、
ウォーキングやジョギング、マラソンなどがブームとなっていて、
休日ともなれば皇居の周りや公園などは、
そうした人たちで大賑わいとなります。
ただ、たとえば皇居の周りなどは交通量の多い道路ですから、
空気は粉じんや排気ガスで間違いなく汚染されています。
その汚染された空気を吸い込みながら行う運動が、
果たして健康に良いことなのでしょうか?
正直非常に疑問です。
今回の研究はイギリスにおいて、
その素朴な疑問に真っ向から取り組んだものです。
年齢は60歳以上で、
特に病気のない健康な40名と、
慢性閉塞性肺疾患(COPDのGOLDステージ2)に罹患している40名、
そして虚血性心疾患に罹患している39名を登録し、
それぞれをくじ引きで2つに分けると、
一方はバスやタクシーが頻繁に通るオクスフォード・ストリートで、
もう一方は車の通らないハイド・パークで、
それぞれ2時間のウォーキングを行い、
その前後の呼吸機能の変化や症状の変化などを、
比較検証しています。
COPDも虚血性心疾患も、
治療により半年間以上、
増悪なく症状が安定していて、
ウォーキングには問題がないという点が条件となっています。
まずオクスフォード・ストリートとハイド・パークで、
空気の分析をしたところ、
公園より道路では一酸化窒素やPM2.5など、
排気ガスや粉じんの成分が多く認められました。
COPDの患者さんにおいては、
公園でのウォーキングと比較して道路でのウォーキングでは、
その後の咳や痰、息切れや喘鳴などが、
有意に増加を認めていました。
病気のない人も持病のある人もいずれの群においても、
ウォーキングはその後の呼吸機能の改善効果を認めていましたが、
公園と比較して道路ではその改善の程度は低く、
特にCOPDの患者さんにおいては、
その環境による開きが大きくなっていました。
そしてCOPDの患者さんでは道路でのウォーキングは、
むしろ呼吸機能を悪化させていて、
その程度は大気中の排気ガスの成分や粉じん量と相関していました。
要するに、
ウォーキングが健康的なのは汚染されていない環境でのことであって、
交通量などの多い道路でのウォーキングは、
特にCOPDの患者さんにとっては有害な可能性が高い、
という結果です。
これは当然とも言える結果ですが、
交通量の多い道路で高齢者が平気でジョギングなどをしている、
東京などの大都市の状況を見ると、
もう少し走る側も行政などの環境を管理する側も、
考え方を変える必要があるのではないでしょうか。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のLancet誌に掲載された、
排気ガスで汚れた空気の中でジョギングすることの、
健康リスクについての論文です。
これは皆さんが多分そうだろうなと感じていることを、
化学的に検証して、
矢張りそうか、という結論に至ったものです。
無理のないジョギングやウォーキングの習慣が、
肥満の予防や筋力の維持、体調の維持に繋がり、
呼吸機能や心機能の改善にも良い影響を与えることは、
多くの精度の高い科学的な裏付けのある事実です。
健康のためや楽しみのために、
ウォーキングやジョギング、マラソンなどがブームとなっていて、
休日ともなれば皇居の周りや公園などは、
そうした人たちで大賑わいとなります。
ただ、たとえば皇居の周りなどは交通量の多い道路ですから、
空気は粉じんや排気ガスで間違いなく汚染されています。
その汚染された空気を吸い込みながら行う運動が、
果たして健康に良いことなのでしょうか?
正直非常に疑問です。
今回の研究はイギリスにおいて、
その素朴な疑問に真っ向から取り組んだものです。
年齢は60歳以上で、
特に病気のない健康な40名と、
慢性閉塞性肺疾患(COPDのGOLDステージ2)に罹患している40名、
そして虚血性心疾患に罹患している39名を登録し、
それぞれをくじ引きで2つに分けると、
一方はバスやタクシーが頻繁に通るオクスフォード・ストリートで、
もう一方は車の通らないハイド・パークで、
それぞれ2時間のウォーキングを行い、
その前後の呼吸機能の変化や症状の変化などを、
比較検証しています。
COPDも虚血性心疾患も、
治療により半年間以上、
増悪なく症状が安定していて、
ウォーキングには問題がないという点が条件となっています。
まずオクスフォード・ストリートとハイド・パークで、
空気の分析をしたところ、
公園より道路では一酸化窒素やPM2.5など、
排気ガスや粉じんの成分が多く認められました。
COPDの患者さんにおいては、
公園でのウォーキングと比較して道路でのウォーキングでは、
その後の咳や痰、息切れや喘鳴などが、
有意に増加を認めていました。
病気のない人も持病のある人もいずれの群においても、
ウォーキングはその後の呼吸機能の改善効果を認めていましたが、
公園と比較して道路ではその改善の程度は低く、
特にCOPDの患者さんにおいては、
その環境による開きが大きくなっていました。
そしてCOPDの患者さんでは道路でのウォーキングは、
むしろ呼吸機能を悪化させていて、
その程度は大気中の排気ガスの成分や粉じん量と相関していました。
要するに、
ウォーキングが健康的なのは汚染されていない環境でのことであって、
交通量などの多い道路でのウォーキングは、
特にCOPDの患者さんにとっては有害な可能性が高い、
という結果です。
これは当然とも言える結果ですが、
交通量の多い道路で高齢者が平気でジョギングなどをしている、
東京などの大都市の状況を見ると、
もう少し走る側も行政などの環境を管理する側も、
考え方を変える必要があるのではないでしょうか。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2017-12-22 06:26
nice!(10)
コメント(0)
コメント 0