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DPP-4と認知機能との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
DPP4と認知機能.jpg
今年のFrontiers in Aging Neuroscience誌に掲載された、
糖尿病との関連で指摘されることの多い、
インクレチンを分解するDPP-4という酵素と、
認知機能との関連についての論文です。

老化と関連のある物質というのは、
昨日取り上げたオステオポンチンなど複数が指摘されていますが、
インスリン分泌を刺激するインクレチンを分解する酵素であるDPP-4も、
その1つの候補となる物質です。

インクレチンであるGLP-1は、
血糖を下げる以外に酸化ストレスを抑制し、
炎症を抑えるような働きがあります。
その反対に血液のGPP-4活性が高いと、
炎症や酸化ストレスが促進されるという知見もあります。

つまりDPP-4は老化を促進する物質である、
という可能性があるのです。

今回の研究は中国において、
60歳以上の年齢の糖尿病のない1229名の住民において、
血液のDPP-4活性の高さと、
認知機能との関連を検証しています。

対象者を登録してその経過を追ったものではなく、
ある時点での認知機能とDPP-4活性との関連を検討したものなので、
それほど精度の高いデータとは言えません。

その結果、
血液のDPP-4活性が4分割して最も低い群と比較すると、
最も高い群は2.26倍(95%CI; 1.36から3.76)、
有意に認知機能低下のリスクが増加していました。

これはまだそうした傾向があった、
と言う程度のものなのですが、
動物実験においてはDPP-4阻害剤による治療が、
認知機能の低下を予防した、という報告もあり、
DPP-4阻害剤やGLP-1アナログを、
治療に使うという選択肢がすぐに浮かぶ、
と言う点がこの知見の1つの大きな魅力です。

まだインクレチン関連薬で認知症が明確に予防された、
というようなデータはありませんが、
老化の1つの現れである筋肉量の病的な低下(サルコペニア)に対しては、
100例程度のデータですが、
DPP-4阻害剤で糖尿病の患者さんにおける改善がみられた、
という2つの報告があります。

このように老化の病態の一部に、
DPP-4が関連しているという知見は興味深く、
まだ確実性があるというレベルのものではありませんが、
今後の知見の積み重ねに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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