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尿路感染症に対する消炎鎮痛剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
尿路感染症に対する消炎鎮痛剤の効果.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
合併症のない尿路感染症に対する、
抗生物質の使用の可否についての論文です。

近年抗生物質の害が強く指摘されるようになり、
日本でも抗生物質の使用を抑制しよう、
という動きがあります。

抗生物質は細菌感染症の治療薬で、
医療の歴史において、
非常に画期的なブレイクスルーをもたらしたものですが、
その一方で万能薬的なイメージが付き過ぎたために、
あまり意味のない予防的な使用や、
ウイルス感染症の可能性の高い風邪症候群への、
適応を考慮しない使用などが行われるようになり、
抗生物質の効かない耐性菌の問題などが、
生じる結果となっているのは、
皆さんもご存じの通りです。

そのため抗生物質の使用の適正化の試みが、
色々な面で行われるようになりました。

今回はその流れの中で、
抗生物質の使用頻度が多く、
その適応と考えられている、
膀胱炎などの合併症のない尿路感染症に対する、
抗生物質の使用が、
本当に必要なものであるのかを検証しているものです。

スイスの17のプライマリケアの医療機関において、
203名の合併症のない尿路感染症の患者さんを登録し、
患者さんにも主治医いにも分からないように、
一方は消炎鎮痛剤であるジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレンなど)を、
1日75mgで3日間使用し、
もう一方は同じ見た目のカプセルで、
抗生物質のノルフロキサシン(商品名バクシダールなど)を、
1日400mgでおなじく3日間使用して、
3日後の症状や合併症の有無を比較検証しています。

その結果、
3日後に症状が改善したのは、
消炎鎮痛剤群の54%に対して、
抗生物質群では80%で、
有意に抗生物質が有効という結果になっています。
更には腎盂腎炎への悪化は、
消炎鎮痛剤群では5%に当たる6名で認められたのに対して、
抗生物質群では1例も認められませんでした。

このように女性の合併症のない尿路感染症に対しては、
対処療法より抗生物質の使用の方が、
その使用が適正であれば明らかに有用性が高く、
その使用は必要と考えられますが、
その一方で抗生物質を使用している患者さんでは、
濫用に繋がり易いこともまた事実で、
濫用にならないようにどのように歯止めを作ってゆくのかが、
今後は重要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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