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収縮期高血圧の健康に対する影響(1990年から2015年の大規模データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
世界の高血圧と病期リスク.jpg
昨年のJAMA誌に掲載された、
収縮期血圧とその健康への影響を、
世界レベルで解析した論文です。

2014年のLancet誌に掲載された、
1997年から2010年にイギリスで、
125万人という膨大なデータを解析した論文によると、
診察室で測定された収縮期血圧が、
90から114mmHgを超えると、
心血管疾患のリスクは増加しています。

つまり、100から110mmHgくらいより高い血圧は、
それだけで病気のリスクになるのです。

その一方で降圧剤などによる治療の効果が、
明確に現れるのは収縮期血圧が140を超えるくらいからで、
2015年のSPRINT試験では、
120未満を目標とする血圧コントロールにより、
生命予後にも有意な改善が認められたとする結果が報告されて、
センセーションを巻き起こしましたが、
血圧を何処まで下げるべきか、
というような点については、
まだまだ相反する知見もあり意見もあります。

2014年のLancet誌の論文はこれまでにない規模のものでしたが、
イギリスのみのデータです。
世界的に見て、
人間の血圧値はどのように推移し、
仮にこれまでの疫学データが正しいとすると、
どれだけの影響を健康に及ぼしているのでしょうか?

今回の研究では、
1980年から2015年の間に発表された、
世界154か国の844の臨床研究のデータから、
869万人に及ぶ収縮期血圧の数値と、
生命予後を含む病期の発症との関連を検証しています。

これまでにない、
世界規模の検証です。

収縮期血圧値としては、
過去の疫学データで心血管疾患のリスクが増加するとされる、
100から110mmHgを超えているかどうかと、
従来の高血圧の指標である140mmHgを超えているかどうかの、
2つの指標で検討を行っています。

その結果、
1990年から2015年という25年の間に、
血圧が100から110mmHg以上の人の頻度は、
人口10万人当たり73119人から81373人に増加し、
140mmHg以上の頻度は、
人口10万人当たり17307人から20526人に増加していました。

つまり、この間に人間の血圧は世界的に上昇している、
という結果です。

ここから年間人口10万人当たりの、
血圧が高いことより発生する死亡を推計すると、
血圧が100から110mmHg以上で135.6人から145.2人に増え、
140mmHg以上で97.9人から106.3人に増えるという計算になります。

つまり、収縮期血圧値のコントロールというのは、
近年その影響はより大きくなっていて、
その目標の設定は緊急性が高い、
と言うことが出来ます。

降圧剤の治療における目標設定というのは、
これとはまた別個の問題で、
仮に収縮期血圧が100から110mmHg以上の全員に、
降圧剤を使用するようなことになれば、
医療費は天文学的に跳ね上がることは明らかで、
またそのことの有効性も確立はしていません。

どちらかと言えばこのデータは、
生活習慣の改善から、
どれだけ適正に血圧をコントロールするかを、
考えるための指標と考えるべきで、
コレステロールや血糖値と同様、
「私たちは健康的なレベルより高い血圧を持っている」
という意識を持つことが、
まずは必要な第一歩であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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