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心臓以外の手術前後のスタチン使用効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
手術前後のスタチンの使用効果.jpg
今月のJAMA Intern Med誌にウェブ掲載された、
コレステロール降下剤のスタチンを、
手術前後に使用して、
患者さんの生命予後が改善するかどうかを検証した論文です。

スタチンはコレステロールの合成酵素の阻害剤で、
コレステロール降下剤として広く使用されている薬です。

このスタチンには、
コレステロールの降下作用に加えて、
抗炎症作用などが別個にあるとされていて、
それが大きな手術後の、
急性腎障害や心筋梗塞、脳卒中などの発症予防に、
有用なのではないか、
という考えが以前よりありました。

ただ、これまでの臨床データは、
必ずしもその予測を証明していません。

たとえば、今年のJAMA誌に掲載された論文では、
心臓手術の前に高用量のスタチンを使用して、
その後の急性腎障害の予防効果を見たのですが、
急性腎障害の予防効果は確認されず、
事例によってはむしろ逆にリスクが増加する、
と言う結果になっていました。

ただ、これは心臓手術に限ったデータなので、
心臓以外の手術においても、
同じことが言えるとは限りません。

そこで今回の研究では、
アメリカの退役軍人の大規模な疫学データを活用して、
心臓以外の手術の前後1週間以内にスタチンを使用した患者さんを、
未使用の患者さんと比較して、
スタチンの使用と術後の生命予後との関連を検証しています。

その結果…

98486例の手術事例を解析した結果として、
術中もしくは術直後のスタチンの使用により、
術後30日間の総死亡のリスクは、
18%有意に低下していました。
(95%CI; 0.75から0.89)
術後の合併症のリスクも18%有意に低下していて、
(95%CI; 0.79から0.86)、
特に心臓関連の合併症が27%と、
最も大きな減少を示していました。
(95%CI;0.64から0.83)

このように、今回のデータにおいては、
心臓手術以外の大手術において、
手術前後のスタチンの使用は、
生命予後を含めて、
患者さんの予後を改善するという結果が得られました。

ただ、これは最初から患者さんを登録して、
スタチンを使用するかしないかをクジ引きで決めるような試験ではないので、
別個の患者さんの背景因子などが、
結果に影響をしている可能性はあります。

最近はこうしたコレステロール降下作用以外を期待した、
スタチンの研究はあまり良い結果が出ていないのですが、
今回のものはそこをかろうじて踏みとどまったというような内容で、
今後の検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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