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チャンピックス消失! [悪口]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は妻の病院に行って、
夜はちょっと遊びに出る予定です。

それでは今日の話題です。

糖尿病薬の副作用死の話の、
続きを書く予定だったのですが、
昨日呆れてびっくりしたので、
今日はその話を挟んで、
糖尿病薬の話の続きは明日に延ばします。

昨日某製薬会社の担当者の方がおいでになって、
チャンピックスが品薄で供給困難な状態のため、
当面年内は新規の処方は出来ません、
と言われました。

チャンピックスは禁煙治療の飲み薬で、
通常3ヶ月間連続して使用しますが、
初回は少量から開始するため、
最初の処方はスターターパックと言って、
初回用の2週間分の処方が使用されます。

そのスターターパックを、
製薬会社は今年はもう流通させない、
と言うのです。

それは想定外に処方が増加したため、
対応困難になった、ということのようです。

ただ、唐突なこの決定は、
如何にも某製薬会社のプランの杜撰さを感じさせます。

今年の10月からタバコが値上げになることは、
かなり前から分かっていたことですし、
その前には大物芸能人を使ったテレビCM等の宣伝を、
大々的に行なっていたのです。

当然それは処方の増加を見込んだ戦略の筈で、
それでいながらちょっと処方が増えると、
すぐに流通が困難になり、
数ヶ月間以上ストップしてしまう、
と言うのは、
尋常なこととは思えません。

その製薬会社は世界に冠たる企業の筈で、
薬剤の供給というのは、
単なる商品の流通とは、
また別個の意味合いを持つ公共性の高い事業の筈です。

確かにこれまでも、
インフルエンザワクチンの不足や、
インフルエンザの治療薬の不足など、
同様の事態はありました。

ただ、それは明らかに異常な疾患の流行と、
桁外れの需要拡大があったればこそです。

今回のように自分で宣伝を打って、
需要拡大を見込んでおきながら、
実際にちょっと需要が拡大すると、
すぐさま流通がストップするなど、
商品の公共性から考えて、
本来あってはならないことの筈です。

つまり公共性のある商品である、
と言う認識があるなら、
大宣伝のCMなど流すべきではないのです。
逆に流すなら、
ちょっとやそっとの需要拡大では、
ビクともしないだけの増産体勢があるべきです。

先週にも製薬会社の担当者がお見えになり、
その時の話では、
増産をかけているので、
薬剤自体は充分にあるのだが、
なかなか卸さんのレベルまで廻っていかないので、
もう1週間程度お待ち下さい、
というニュアンスの説明でした。
それが数日で掌を返した流通ストップの声明です。

正反対の説明が数日毎に上から降りてくるのですから、
担当の方も本当に気の毒です。

その昔セガという会社があって、
新しいゲーム機の「セガサターン」を、
大宣伝の後に発売したのですが、
それが流通せずにすぐに品切れになり、
会社も結局潰れました。

普通考えれば某製薬会社も、
死ぬ気で増産体勢を組み、
一刻も早く供給すべきではないかと思いますが、
そうしないところを見ると、
そんなことをするより、
「足りなくなったんだから仕方ねえだろ。
もうちょっと待ってろよ」
というような上から目線の対応で、
多分経営判断としては正解なのでしょうし、
それで潰れることもなく、
その方が儲かる仕組みになっているのかも知れません。

チャンピックスは結構高価な薬ですし、
それを飲んで禁煙をしよう、
と思う方の1人1人にも、
それなりの真面目な思いがあるのです。
僕もその思いに応えようと、
僕なりに真剣に禁煙治療に取り組んでいるつもりです。

ただ、その気持ちは多分、
巨大なカフカの城のような大企業の壁の向こうには、
何1つ届いてはいないのでしょうし、
彼らが考えていることは、
損得の計算と、
もう処方を始めた方の薬が供給出来なくなった時、
その患者さんから訴えられた時の、
対応策くらいのような気がします。

企業が本当に誰の側を向いて、
その公共性の高い商品を販売しているのかは、
その美辞麗句を連ねたCMより、
こうした時の対応にこそ、
顕れているような気がします。

製薬会社の顧客は、
その薬を使用する患者さんの筈です。
しかし、製薬会社と患者さんとの間には、
医者や薬剤師が入り、
それが製薬会社にとっては、
ある種の緩衝材になるので、
多少の不祥事があっても、
流通がへっぽこで確保されなくても、
直接謝るような必要は多くの場合なく、
流通がストップするような事態に対する、
危機意識が欠如しているように思えます。
CMでタレントやきれいなお姉さんが、
皆さんの健康やら幸せな明日のために何たらと、
歯の浮くような台詞を並べ立てるのは、
別に皆さんのためではなく、
多くは自分たちの利益と、
テレビ局の利益のためなのです。

僕はジェネリック薬品は大嫌いですが、
こうした事態を見ると、
こんな製薬会社の薬は、
逸早く全てジェネリックにしてもらって、
その流通を確保した方が、
どれだけましかとも思えます。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 4

hiiragiyama

わが薬局でも仕事が終わった後、その話をしながら掃除しました。日本だけの需要が増えたわけで、それもまだ半月も経っていないのにこの状況はとても理解できません。
先生が言われるとおり前から予想できたことではないのでしょうか。
製薬会社からのFaXでは1月には供給再開できると書いてありましたが、これが病気の治療薬であれば、もう少し対応が違うのでしょうか?
by hiiragiyama (2010-10-13 22:25) 

fujiki

hiiragiyama さんへ
多分禁煙の補助剤なら、
この程度の対応で充分だろう、
と考えているように思います。
日本で急に増産するようなことを、
親会社が簡単に認めないのかも知れないですね。
でも、急に3ヶ月ストップというのは、
ちょっと酷過ぎる気がします。
ただ、考えてみると、
同じようなことはこれまでも結構あって、
薬の流通というのは、
色々な意味で問題があるように改めて思います。
by fujiki (2010-10-13 23:07) 

和田裕一

ずいぶん前の記事ですが拝読して思うところがありました。
製薬会社の姿勢への疑問はまったく同感ですが,同時に,「生活習慣の改善なんか自分でやるのが当り前だろう,薬に頼るな」という日本人の貧困な考え方も少なからず影響しているように思えます。
私の目下の関心事は体重を落とすことですが,サプリメント(その功罪はまた別にして)でやると言うと,「薬に頼るな」と言われます。同様に不眠症で処方してもらっている催眠剤についても,「倒れるまで起きてれば?」という暴論から,何を心配しているのか分からない「習慣性になるのでは」という疑問が出されます。
私は,要は先の大戦におけるガダルカナルと同じで,合理的な方法を考えずに,とにかく「頑張れ」と言うだけ,という国民性があると見ています。そのために,「足らぬ足らぬは努力が足らぬ」とばかりに,せっかく科学に裏打ちされた合理的な解決法があっても,そんなことより努力したら?と冷酷に言い放つことが多く,このためにおっしゃるような制約会社の不手際があっても,インフルエンザワクチン不足と違い世論は騒がないのだと思います。

by 和田裕一 (2012-01-07 04:50) 

fujiki

和田さんへ
コメントありがとうございます。
急に「なくなりました」という話だったので、
ちょっとハイテンションになって書いた記事で、
今読み返すと何となく恥ずかしいものがあります。
合理精神はコスト意識と似たところがあり、
日本人には矢張り欠けている部分のように、
僕にも思えます。
by fujiki (2012-01-07 08:27) 

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