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アレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎の鑑別法とその意義 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の鑑別.jpg
Otolaryngology Head & Neck Surgery誌に、
2024年1月31日付で掲載された、
アレルギー性鼻炎と慢性腹腔炎の鑑別についての論文です。

アレルギー性鼻炎は花粉症のように、
特定の抗原タンパク質に反応して、
鼻の粘膜がアレルギー性の炎症を起こし、
鼻水や鼻閉などの症状が持続する病気です。
鼻水や鼻詰まりが同じように生じる病気として、
慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)があり、
こちらは鼻の奥に繋がっている、
副鼻腔という空洞に、
持続的な細菌などの炎症が起こる病気です。

アレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎は、
症状のみから鑑別することは難しい側面があり、
通常耳鼻科で経鼻内視鏡検査で確認したり、
レントゲンやCT、MRIなどの検査で、
副鼻腔への膿汁の貯留を、
検出することで診断されます。

この2つの病気には、
抗アレルギー剤やステロイド剤の点鼻薬など、
共通する治療薬もありますが、
アレルギー性鼻炎は専ら抗ヒスタミン剤で、
鼻水を止めて様子を見ることが多く、
慢性副鼻腔炎は少量の抗菌剤を継続したり、
膿汁の排泄を促す薬を使用したり、
重症の事例では手術療法も検討される、
という違いがあります。

実際に単なるアレルギー性鼻炎との判断で、
市販の抗ヒスタミン剤を長期間服用していて良くならず、
病状の悪化した慢性副鼻腔炎の合併例が、
少なからずあることが報告されています。

今回の研究では、
自覚的に「鼻のアレルギー」の症状のある219名の一般住民を対象として、
経鼻内視鏡などの精査を行ってその診断を確定し、
慢性副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の頻度を検証すると共に、
通常慢性副鼻腔炎の症状確認に施行されている、
22項目の質問からなるSNOT-22という自覚症状調査票の項目と、
その診断への有用性を確認しています。

その結果、
鼻アレルギー症状を申告した219名のうち、
91.3%に当たる200名はアレルギー性鼻炎と診断されましたが、
45.2%に当たる99名は慢性副鼻腔炎とも診断されました。

つまり、アレルギー性鼻炎と診断される患者さんの約半数は、
慢性副鼻腔炎を併発している可能性がある、
という結果です。

ここで症状質問票との対比で検討すると、
鼻をかむ回数が多い、粘着な鼻水が出る、
鼻が詰まる、という症状が比較的重く、
軽度の味覚嗅覚障害を伴うような場合に、
慢性副鼻腔炎併発のリスクが高いという結果が得られました。

このように慢性のアレルギー性鼻炎と、
自己判断している患者さんのうち、
半数近くは慢性副鼻腔炎を併発している可能性があり、
特にその症状から疑われる場合や、
抗ヒスタミン剤の使用により改善が見られない場合には、
その可能性を積極的に疑って、
診断を受ける必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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