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大西洋ダイエットの健康効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大西洋ダイエットの有効性.jpg
JAMA Network Open誌に、
2024年2024年2月7日付で掲載された、
スペイン発の大西洋ダイエットの健康効果についての論文です。

健康に良い食事の代表として、
推奨されることの多い食事習慣の1つが、
「地中海ダイエット」と呼ばれるものです。
これは地中海に面したギリシャなどの食生活を、
1つの典型としているもので、
その内容は必ずしも報告や研究で一致している訳ではありませんが、
ナッツやオリーブオイルを多く摂り、
野菜や果物、魚を多く摂り、
赤身肉や加工肉はあまり摂らない、
というような特徴は一定しています。

今回の研究で対象となっている、
「大西洋ダイエット(Atlantic Diet)というのは、
スペインやポルトガルの一部の伝統食を元にしたもので、
野菜や果物、ナッツやオリーブオイルなどを多く摂る点は、
地中海ダイエットと同じですが、
それに加えてポテトやパンを多く摂り、
ドライフルーツや乳製品も多く摂る、
という点に特色があり、
地中海ダイエットより肉やワインの摂取も多い、
と記載されています。

つまり、地中海ダイエットより、
動物性脂肪や炭水化物が、
やや多いという違いがあるのです。

今回の研究はこの大西洋ダイエットを広めたいスペインにおいて、
通常の食事と大西洋ダイエットを比較して、
その健康面での有効性を検証しているものですが、
今時の特徴として、
環境への負荷に配慮し、
二酸化炭素の排出量(カーボンフットプリント)の、
比較も行っている点が特徴です。

対象となっているのはスペインの250の家族で、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はそれまでと同じ食事を継続し、
もう一方は専門的な指導の元に、
大西洋ダイエットを実践して、
その効果を6か月に渡って観察しています。

有効性の指標となっているのは、
所謂メタボリックシンドロームの比率で、
食事の変化により、
メタボの改善がどの程度見られたのかを比較しています。
この場合のメタボの基準は、
血圧などの検査値は日本のものと同等ですが、
腹囲については、
男性が110センチを超える、女性が88センチを超える、
という日本とは異なる基準が採用されています。

その結果、
通常の食事と比較して、
家族に大西洋ダイエットを指導すると、
観察期間中のメタボの発症リスクは68%(95%CI:0.13から0.79)、
個別のメタボの項目のリスクは42%(95%CI:0.42から0.82)、
それぞれ有意に低下していました。
一方で二酸化炭素の家庭毎の排出量については、
両群で明確な差は見られませんでした。

正直大西洋ダイエットと地中海ダイエットの違いは、
それほど大きなものとは言えないように思いますが、
食事指導を継続的に行うことにより、
半年程度の期間でもメタボの改善には結びつく、
という結果と考えれば、
意義のある研究ではあったように思います。

地中海ダイエットが持ち上げられ過ぎたので、
スペインやポルトガルとしては、
「いやいやうちの食事も大して違いはないぞ」
という意思表示のようにも思われ、
健康のみならず健康負荷まで評価して、
各地域の料理を比較し序列化するようになるのは、
ちょっと行き過ぎのような気がしなくもありませんが、
良くも悪くも食事もその価値を、
多角的に競争する時代になったのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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