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「アステロイド・シティ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アステロイド・シティ.jpg
映画作家としては、
当代アメリカを代表する1人である、
ウェス・アンダーソン監督の新作が、
今ロードショー公開されています。

初日に観たのですが、
映画館はほぼ満席の盛況でした。
ただ、大きないびきをかいて寝ている方もいて、
それを聴いて怒っているような人もいました。

これは1950年代のアメリカを舞台に、
「アステロイド・シティ」という3幕の戯曲の上演のドキュメンタリーを、
テレビで放映しているというモノクロパートと、
その戯曲自体が「映画」として上映されるカラーパートが、
交互に差し挟まれるという複雑な入れ子構造になっていて、
物語自体は西部の町を舞台に、
天才の少年少女が集まって表彰される、
科学賞の集まりに、
色々な背景を持つ家族が集まるという、
所謂グランドホテルスタイルの群像劇となっています。

物語をわざわざ「舞台劇」としているのは、
極彩色のポスターみたいな非現実的な映像を、
多分成立させるための仕掛けなんですね。
コーエン兄弟の映画に近いようなスタイルで、
こうした仕掛けをスムースに受け入れられるかどうかが、
この映画が好きになるかどうかの分かれ目、
という気がします。

かなりもってまわった感じの作劇なので、
個人的にはもっとストレートな映画の方が好きなのですが、
途中で衝撃的かつユーモラスに描かれる「未知との遭遇」が、
とても魅力的で素晴らしく、
大袈裟に言えば、
映画の新しい可能性を感じさせる場面に仕上がっていました。

それぞれの役柄を余裕を持って楽しそうに演じている、
豪華な出演者の競演も楽しく、
詩的でポップで美しい、
映画そのものの魅力に浸れる作品だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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若年発症大腸癌を疑う症状は? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大腸癌の初期症状.jpg
Journal of the National Cancer Institute誌に、
2023年5月4日付で掲載された、
若年発症の大腸癌を疑う兆候についての論文です。

通常大腸癌は50歳以上の年齢層で増加すると報告されていて、
そのため現行の大腸癌のスクリーニングは、
世界的には50歳以上で施行されていることが殆どです。
一方で日本では厚労省の指針により、
40歳以上で市町村の大腸癌検診が施行されています。

ただ、世界的にも50歳未満での大腸癌の診断が、
増加しているという傾向があります。
アメリカの統計によると、
2011年から2016年の調査において、
年間2%ずつ若年発症大腸癌は増加していて、
2030年までには倍増すると試算されています。

そこでアメリカの専門部会では、
スクリーニングの推奨年齢を2018年から45歳以上に変更しました。

しかし、若年層の検診受診率は低く、
更に若年発症大腸癌の半数は45歳未満で発症しているので、
これだけでは若年発症大腸癌の対策として不充分です。

それでは日本のように対象年齢を40歳まで下げれば、
と思うところですが、
それでは有効性が実証されず、
コスパ的にも問題がある、
というのが欧米の考え方です。

そこで早期発症大腸癌に、
特徴的な症状が何かあれば、
そうした症状のある人のみを対象として、
スクリーニングを施行することで、
有効でコスパ的にも問題の少ない検診となるのではないか、
という考えが成立します。

今回の研究ではアメリカの医療保険のデータを活用して、
50歳未満で診断された早期発症大腸癌の事例、
トータル5075例を、
年齢などをマッチングさせたコントロールと比較して、
診断される3か月以前2年までの間に、
予め設定した腹痛などの17の症状のうち、
どれが最も早期発症大腸癌の診断と関連が深いかを、
比較検証しています。

その結果、
単独の兆候としては、
腹痛、肛門からの出血、下痢、鉄欠乏性貧血の4つが、
その後の大腸癌の診断と一定の関連があり、
複数あるほどそのリスクは高まる、
データが得られました。

具体的には、
上記4つのうち1つがあると、
何もない場合と比較して1.97倍(95%CI:1.80から2.15)、
2つあると3.66倍(95%CI:2.97から4.51)、
3つ以上あると6.96倍(95%CI:4.07から11.91)、
大腸癌診断のリスクは増加していました。

このように複数の兆候と、
若年発症大腸癌との間には一定の関連があり、
今後そうした兆候のある対象に絞って、
若年でも大腸癌のスクリーニングを行うという方法が、
議論される運びになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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