ディアナ・ダムラウ&ニコラ・テステ オペラ・アリア・コンサート [コロラトゥーラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ドイツ出身で現在最も広く活躍しているソプラノの1人、
ディアナ・ダムラウが夫君のバス・バリトン、
ニコラ・テステとのデュオコンサートを、
アジアツアーとして行い、
その一環で日本で1日限りのリサイタルが開催されました。
ダムラウは当代きってのコロラトゥーラソプラノで、
リリックソプラノですが、
僕にとって何より忘れがたいのは、
2011年の震災の年の6月に行われた、
メトロポリタン・オペラの来日公演で、
原発事故の影響を恐れてネトレプコやカウフマンなど、
スターが次々と来日をキャンセルする中で、
お子さんと一緒に来日して、
「ランメルモールのルチア」のタイトルロールを、
見事に歌ってくれました。
コロラトゥーラは割とあっさりとしていて、
技巧を駆使するという感じはなく、
高音もあまり伸ばしたりはしないのですが、
狂乱の場の狂気の表現力と、
そこに至るまでの段取りの精緻さ、
アンサンブルの部分での音楽的なレベルの高さなどが素晴らしく、
技巧を駆使したソプラノとは別個のスタイルなのですが、
ある種孤高のルチアとして、
非常な感銘を受けました。
今回はそれ以来の2回目の来日ということになります。
今回のダムラウは絶好調で、
ともかく声の安定感が抜群です。
デセイ様命のコロラトゥーラ好きとしては、
デセイ様のような速度を上げて突っ走るような高速アジリタや、
超高音を伸ばしまくるような感じが、
ダムラウの歌には基本的にないことは、
まあ不満ではあるのですが、
彼女の資質は明らかにそうしたところにはなくて、
抜群の表現力で、
血肉のみなぎるダイナミックかつ繊細な歌唱、
聴衆の心を確実に駆り立てるような歌唱こそが持ち味で、
その面では当代一であることは間違いがありません。
基本的に単独のアリアより、
感情の持続のあるオペラの舞台でこそ、
その真価を発揮するタイプであると思うので、
今回のリサイタルでは「清教徒」1幕の、
バリトンとの二重唱のくだりが、
最愛の男への純な愛を歌っていながら、
その愛情の強烈さにその後の狂気を、
確実に感じさせるという高度な歌唱と演技で、
彼女ならではの高い音楽性を聴かせてくれました。
これは抜群でした。
またラストに用意された「椿姫」1幕ラストの大アリアは、
カバティーナはかなり短縮版でしたが、
装飾歌唱の一音一音までが、
全て感情に直結して聴衆の心を揺さぶる、
これまで僕が聴いて来た多くの「椿姫」とは、
明らかに次元の違う彼女ならではの、
これも孤高の「椿姫」であったと思います。
ラストはハイEsには上げなかったのですが、
彼女の歌い方ならこの方が確実に良い、
というように思わせました。
これは驚きました。
今回一番楽しみにしていたのは、
マイヤーベーアの「ディノーラ」の「影の歌」で、
これはデセイ様のフランスオペラアリア集で初めて聴いて、
イタリア物とはまるで違うフランス・オペラの繊細な狂乱技巧が、
素晴らしくて感銘を受けたのですが、
その難易度の高さから、
あまり実際にリサイタルなどで歌われることはありません。
これも影との語り口など、
ダムラウならではの表現力で良かったのですが、
矢張りラストなどは高音を伸ばしてはくれないので、
こうした装飾的な歌ではちょっと不満は残ります。
総じて当初予定されていた演目から、
「清教徒」の狂乱の場やマイヤーベーアの珍しいアリアなどが差し替えになり、
より通俗的で無理をしない感じのプログラムになったのが、
少し物足りなくはあったのですが、
ダムラウの現在の高い水準と、
その藝術性と音楽性に充分に触れることが出来た一夜で、
とても充実した気分で帰路に着くことが出来ました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ドイツ出身で現在最も広く活躍しているソプラノの1人、
ディアナ・ダムラウが夫君のバス・バリトン、
ニコラ・テステとのデュオコンサートを、
アジアツアーとして行い、
その一環で日本で1日限りのリサイタルが開催されました。
ダムラウは当代きってのコロラトゥーラソプラノで、
リリックソプラノですが、
僕にとって何より忘れがたいのは、
2011年の震災の年の6月に行われた、
メトロポリタン・オペラの来日公演で、
原発事故の影響を恐れてネトレプコやカウフマンなど、
スターが次々と来日をキャンセルする中で、
お子さんと一緒に来日して、
「ランメルモールのルチア」のタイトルロールを、
見事に歌ってくれました。
コロラトゥーラは割とあっさりとしていて、
技巧を駆使するという感じはなく、
高音もあまり伸ばしたりはしないのですが、
狂乱の場の狂気の表現力と、
そこに至るまでの段取りの精緻さ、
アンサンブルの部分での音楽的なレベルの高さなどが素晴らしく、
技巧を駆使したソプラノとは別個のスタイルなのですが、
ある種孤高のルチアとして、
非常な感銘を受けました。
今回はそれ以来の2回目の来日ということになります。
今回のダムラウは絶好調で、
ともかく声の安定感が抜群です。
デセイ様命のコロラトゥーラ好きとしては、
デセイ様のような速度を上げて突っ走るような高速アジリタや、
超高音を伸ばしまくるような感じが、
ダムラウの歌には基本的にないことは、
まあ不満ではあるのですが、
彼女の資質は明らかにそうしたところにはなくて、
抜群の表現力で、
血肉のみなぎるダイナミックかつ繊細な歌唱、
聴衆の心を確実に駆り立てるような歌唱こそが持ち味で、
その面では当代一であることは間違いがありません。
基本的に単独のアリアより、
感情の持続のあるオペラの舞台でこそ、
その真価を発揮するタイプであると思うので、
今回のリサイタルでは「清教徒」1幕の、
バリトンとの二重唱のくだりが、
最愛の男への純な愛を歌っていながら、
その愛情の強烈さにその後の狂気を、
確実に感じさせるという高度な歌唱と演技で、
彼女ならではの高い音楽性を聴かせてくれました。
これは抜群でした。
またラストに用意された「椿姫」1幕ラストの大アリアは、
カバティーナはかなり短縮版でしたが、
装飾歌唱の一音一音までが、
全て感情に直結して聴衆の心を揺さぶる、
これまで僕が聴いて来た多くの「椿姫」とは、
明らかに次元の違う彼女ならではの、
これも孤高の「椿姫」であったと思います。
ラストはハイEsには上げなかったのですが、
彼女の歌い方ならこの方が確実に良い、
というように思わせました。
これは驚きました。
今回一番楽しみにしていたのは、
マイヤーベーアの「ディノーラ」の「影の歌」で、
これはデセイ様のフランスオペラアリア集で初めて聴いて、
イタリア物とはまるで違うフランス・オペラの繊細な狂乱技巧が、
素晴らしくて感銘を受けたのですが、
その難易度の高さから、
あまり実際にリサイタルなどで歌われることはありません。
これも影との語り口など、
ダムラウならではの表現力で良かったのですが、
矢張りラストなどは高音を伸ばしてはくれないので、
こうした装飾的な歌ではちょっと不満は残ります。
総じて当初予定されていた演目から、
「清教徒」の狂乱の場やマイヤーベーアの珍しいアリアなどが差し替えになり、
より通俗的で無理をしない感じのプログラムになったのが、
少し物足りなくはあったのですが、
ダムラウの現在の高い水準と、
その藝術性と音楽性に充分に触れることが出来た一夜で、
とても充実した気分で帰路に着くことが出来ました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。