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DHAの非アルコール性脂肪肝炎進行予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
オステオポンチンがDHAで低下する.jpg
今年のPLOS ONE誌に掲載された、
オステオポンチンと脂肪肝炎に関する論文です。

非アルコール性脂肪肝炎というのは、
お酒をあまり飲まない人に、
アルコール性脂肪肝炎に似た、
中性脂肪の過剰な肝臓への蓄積が起こるもので、
進行すると肝硬変や肝臓癌のリスクも高まります。
内臓脂肪の蓄積と大きな関連があり、
メタボリックシンドロームの、
内臓病変の1つとして考える見方もあります。

内臓脂肪の蓄積が、
免疫老化と呼ばれるようなT細胞の変化をもたらし、
オステオポンチンという炎症物質の過剰な産生が、
慢性の炎症を惹起して老化を進行させるのでは、
という仮説があります。

この考え方からすれば、
内臓脂肪の蓄積によって生じる非アルコール性脂肪肝炎というのも、
この免疫老化の1つの現れということになる訳です。

今回の論文は免疫老化と直接に関連するものではなく、
DHA(ドコサヘキサエン酸)という、
青身魚の脂に多く含まれる多価不飽和脂肪酸(ω3脂肪酸)の、
高脂肪食によってもたらされた非アルコール性脂肪肝炎への、
進行予防と治療効果をみた動物実験の論文ですが、
脂肪肝炎の炎症マーカーの1つとして、
オステオポンチンを測定していて、
その変化を見ているという点で、
DHAのオステオポンチンへの効果もみるような結果となっています。

高脂肪食を22週間継続する負荷で、
メタボリックシンドロームと、
非アルコール性脂肪肝炎の状態となったネズミに対して、
その時点で解剖して検査をした場合と、
高脂肪食にオリーブオイルを加えた場合、
高脂肪食にDHAを加えた場合、
普段の飼料に戻してオリーブオイルを加えた場合、
普通の飼料に戻してDHAを加えた場合の、
4種類のパターンの食事を8週間継続し、
その後に解剖して検査を行なった場合の比較を行っています。

その結果…

オリーブオイルの補充では、
肝細胞の炎症や線維化は抑制されなかったのに対して、
DHAの補充を行なうと、
炎症性マーカーを含めて脂肪肝炎の進行が抑制されていました。
オステオポンチンも、
血液濃度においてはあまり変化を認めていませんが、
肝細胞内の発現量についてみると、
DHA群で強い抑制が認められました。

更に食事を高脂肪食から通常の飼料に戻し、
そこにオリーブオイルやDHAを添加すると、
肝臓の状態はほぼ高脂肪食負荷前の状態に、
改善していることが確認されました。

これを昨日の免疫老化と内臓脂肪との話と組み合わせて考えると、
内臓脂肪の蓄積に伴い、
肝細胞にも免疫老化が起こって炎症が持続し、
脂肪肝炎や肝臓の線維化などの変化が進行しますが、
DHAには内臓脂肪の組成を変化させて、
炎症を軽減する効果があり、
更に食事の脂肪量を低下させることにより、
その効果は持続可能なものとなって、
一旦進行した脂肪肝炎も、
改善する可能性がある、
ということになります。

これはまだ動物実験のレベルの知見で、
そのまま人間に適応可能であるかどうかは分かりませんが、
多くの慢性病に実は老化の促進という共通項があり、
それが食事+薬もしくはサプリメントという組み合わせで、
一定レベル改善させることが可能だ、
というデータは興味深く、
今後の検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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