ヴェルディ「椿姫」(2017年新国立劇場上演版) [オペラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
新国立劇場のレパートリーとして、
オペラパレスでヴェルディの「椿姫」が上演されています。
その2日目の舞台に足を運びました。
新国立劇場での「椿姫」の上演は、
初演がロストとインヴァ・ムーラのダブルキャストという豪華版で、
演出はオーソドックスなものでしたが、
横移動の舞台と紗幕を全幕で使用していて、
僕は紗幕が大嫌いなので、
この演出はとても嫌でした。
何回かキャストを変えて同じ演出の舞台が再演され、
それから前回より今回と同じ新演出になりました。
これがどうもひねりすぎの抽象的な演出で、
舞台には巨大な鏡が斜めに置かれていて、
1幕と2幕の2場については、
シャンデリアが下がり、豪華な屋敷の装飾があるので、
まあまあ何とかなっているのですが、
2幕の1場はヴィオレッタの家なのに、
抽象的な空の風景がホリゾントに描かれているだけなので、
とても事実関係が分かりにくくて困ります。
最悪なのは3幕で、
ヴィオレッタはベッドで死にかけている、
という場面の筈なのですが、
この演出では舞台中央に常にピアノがあるので、
ベッドはピアノで代用されているだけです。
また舞台前面にピアノとヴィオレッタがいて、
その後ろには黒い紗幕があり、
他の登場人物は全てその紗幕の後ろで歌い演技をします。
これはどうやら、ヴィオレッタは最初から、
もう死の世界に入り込んでいて、
生者とは別の空間に存在している、
ということのようです。
そして、ラストは通常はヴィオレッタが倒れて終わりですが、
この作品では3幕の最初からヴィオレッタは死の世界にいるので、
最後は手を振り上げて立ったところで終わりになります。
他は何とか許せるとしても、
この3幕の演出はあまりにひどいと思います。
「パリから離れて」の二重唱は、
大きな聴き所の1つですが、
それをソプラノとテノールが、
紗幕を通して離れて歌い、
テノールの顔は亡霊のようにしか見えない、
というのですから、
こんな滅茶苦茶で原作を破壊するような演出は、
本当に酷いと思います。
これは演出家がこうした案を提示しても、
芸術監督なり劇場の責任者が、
きっぱり「ノー!」と言うべきではなかったでしょうか?
いずれにしても新国立劇場のオリジナルの新演出は、
昔から酷いものが多く、
まともなのは「アイーダ」と「トウキョウ・リング」、
「トスカ」など数えるほどしかなく、
後はクズ演出のオンパレードです。
このくらいなら演奏会形式の方がどれだけ良いかと、
怒りに胸が震えることが一度ならずありました。
しかし、中でも今回の「椿姫」は酷いと思います。
歌手についてはロシア出身の新鋭、
イリーナ・ルングのヴィオレッタはなかなかで、
高音がばっちり出るのは何より魅力です。
線は確かに細いという気はしますが、
全編を通して押しが弱すぎるという気はしませんでしたし、
表現力も豊かでした。
対するテノールはもう大物感のあるポーリで、
彼も繊細で軽い声のテノールなので、
ルングとの相性も良く、
二重唱はなかなかの精度と美しさを持っていました。
そんな訳で歌手は悪くなかった「椿姫」でしたが、
演出は最悪なものなので、
あまり楽しい気分にはなれなかったのは、
非常に残念でした。
オペラは難しいですね。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
新国立劇場のレパートリーとして、
オペラパレスでヴェルディの「椿姫」が上演されています。
その2日目の舞台に足を運びました。
新国立劇場での「椿姫」の上演は、
初演がロストとインヴァ・ムーラのダブルキャストという豪華版で、
演出はオーソドックスなものでしたが、
横移動の舞台と紗幕を全幕で使用していて、
僕は紗幕が大嫌いなので、
この演出はとても嫌でした。
何回かキャストを変えて同じ演出の舞台が再演され、
それから前回より今回と同じ新演出になりました。
これがどうもひねりすぎの抽象的な演出で、
舞台には巨大な鏡が斜めに置かれていて、
1幕と2幕の2場については、
シャンデリアが下がり、豪華な屋敷の装飾があるので、
まあまあ何とかなっているのですが、
2幕の1場はヴィオレッタの家なのに、
抽象的な空の風景がホリゾントに描かれているだけなので、
とても事実関係が分かりにくくて困ります。
最悪なのは3幕で、
ヴィオレッタはベッドで死にかけている、
という場面の筈なのですが、
この演出では舞台中央に常にピアノがあるので、
ベッドはピアノで代用されているだけです。
また舞台前面にピアノとヴィオレッタがいて、
その後ろには黒い紗幕があり、
他の登場人物は全てその紗幕の後ろで歌い演技をします。
これはどうやら、ヴィオレッタは最初から、
もう死の世界に入り込んでいて、
生者とは別の空間に存在している、
ということのようです。
そして、ラストは通常はヴィオレッタが倒れて終わりですが、
この作品では3幕の最初からヴィオレッタは死の世界にいるので、
最後は手を振り上げて立ったところで終わりになります。
他は何とか許せるとしても、
この3幕の演出はあまりにひどいと思います。
「パリから離れて」の二重唱は、
大きな聴き所の1つですが、
それをソプラノとテノールが、
紗幕を通して離れて歌い、
テノールの顔は亡霊のようにしか見えない、
というのですから、
こんな滅茶苦茶で原作を破壊するような演出は、
本当に酷いと思います。
これは演出家がこうした案を提示しても、
芸術監督なり劇場の責任者が、
きっぱり「ノー!」と言うべきではなかったでしょうか?
いずれにしても新国立劇場のオリジナルの新演出は、
昔から酷いものが多く、
まともなのは「アイーダ」と「トウキョウ・リング」、
「トスカ」など数えるほどしかなく、
後はクズ演出のオンパレードです。
このくらいなら演奏会形式の方がどれだけ良いかと、
怒りに胸が震えることが一度ならずありました。
しかし、中でも今回の「椿姫」は酷いと思います。
歌手についてはロシア出身の新鋭、
イリーナ・ルングのヴィオレッタはなかなかで、
高音がばっちり出るのは何より魅力です。
線は確かに細いという気はしますが、
全編を通して押しが弱すぎるという気はしませんでしたし、
表現力も豊かでした。
対するテノールはもう大物感のあるポーリで、
彼も繊細で軽い声のテノールなので、
ルングとの相性も良く、
二重唱はなかなかの精度と美しさを持っていました。
そんな訳で歌手は悪くなかった「椿姫」でしたが、
演出は最悪なものなので、
あまり楽しい気分にはなれなかったのは、
非常に残念でした。
オペラは難しいですね。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。