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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月26日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの身辺雑記的話題です。

東京での新型コロナウイルス感染症の拡大が止まりません。

昨日はクリニックは休診でしたが、
一昨日のRT-PCR検査の結果が、
今どきどうして…という感じですが、
ファックスで送られて来るので、
それを確認して、
患者さんに連絡を入れ、
それから陽性者については保健所に届け出をしました。

品川区の保健所は、
30名の担当者が24時間体制で動いていて、
夜間帯も15名の職員が対応に当たっています。

聞き取りをしていても、
「何の権利があってお前はそんなことを言うんだ!」
みたいな人がいるでしょ。
本当に大変だと思います。

1昨日の検査は3分の2が陽性でした。

こんな感じの陽性率が連日続いていますから、
これはもう治まる訳がないですね。

目立っているのは矢張り家庭内感染と職場での感染で、
職場から家族へ、というルートが、
感染急拡大の1つの典型になっている、
という気がします。

職場での感染は、
今はもう本当に「何処で感染したか分からない」
というようなケースが多いのが特徴です。
デスクワークでマスクは常時していて会話はしていて、
原則複数で食事はしていない、
というような状況でも実際に感染は拡大しています。
それが家庭に流入して、
2倍、3倍にすぐなってしまう、という構図です。

尾身先生は家庭内感染より、
会食での感染を重視されていて、
いつも気を緩めずに会食を避けて、
と言われているのですが、
勿論その趣旨は理解しているつもりですし、
正しいとは思う一方で、
現場の皮膚感覚としては、
最近は会食などしていない人に、
感染が広がっているという事例を多く経験しているので、
実体は少し違っているのではないか、
という思いもしています。

会食による感染の予防も重要な一方で、
家庭内感染の抑止も、
矢張り重要な要素ではないでしょうか?

会食を止めよう、飲食店の営業時間を制限しよう、
という方向での対策は、呼びかけも含めて行われていますが、
家庭内感染の抑止という面では、
分かりやすいメッセージは発せられておらず、
対策も取られていない、という気がするからです。

現状家庭内感染が増えている原因には、
家族で感染者が出た場合に、
本来は宿泊療養や入院の適応であるのに、
空きがないので自宅療養になってしまっている、
というケースが多いという点が大きいと思います。

この1週間だけでも5例くらいそうしたケースを経験しています。

もう軽症者は自宅療養、という方針に切り替えるのではあれば、
そこに手厚く人員や予算を配分し、
自宅療養中の感染拡大を防ぐ対策が、
もっと積極的に行われる必要があるのではないでしょうか?

日本でのしっかりしたデータがないので、
推測にしか過ぎないのですが、
先日ご紹介した家庭内感染のメタ解析の数値より、
日本の今の家族内感染率は遥かに高いように、
現場での感覚としては思うからです。

それからここ数日目立っているのが、
某新橋辺りにあるPCRセンターと称する場所からの、
陽性事例の再検依頼です。

これは市町村毎の方針があるのだと思いますが、
現状品川区においては、
PCRセンターなどで受けた自費検査で、
陽性もしくはその疑いという結果が出て、
その本人から保健所に問い合わせがあった場合、
医療機関での再検査は公費を使用して問題ない、
行政検査として問題ない、
という方針になっています。

つまり、COCOAでの陽性と同じ扱いということです。

ただ、あの検査センターと称するところはですね、
結果も「陽性」という記述ではなくて、
「感染の疑いがあるので、医療機関を受診してください」
というような文言になっているのですね。
それで、かかりつけ医がいれば、
それで相談をして下さい、
全くないという場合にはこちらでも斡旋をすることがあります、
というような対応であるようです。
こちらへはね、
紹介状の1通も、検査データの報告も、
何もないのですね。

やりっぱなしで自己責任というのは、
それはちょっとあまりに無責任で酷いのじゃないかしら。

これね、無症状であることが前提の検査でしょ。
要するに無症状の一般住民の、
RT-PCR検査のみの陽性者、
無症状性感染者をあぶりだすための検査、
と言ってもいい性質のものですね。

ただ、無症状で検査のみ陽性、という人が、
実際にどのような人なのか、
ということがしっかりと分かっている訳ではないのですね。

その中には本物の無症状の感染者もいるでしょうが、
もう病気としては治っていて、
PCRの陽性のみが続いている、という人もいますよね。
偽陽性もありますし、
中には慢性的に陽性になっている、
というケースも否定はできません。

現状無症状感染者は、
陽性となった検査施行時から、
10日間の隔離ということになっています。

ただ、これはクラスターなどで、
有症状の感染者から感染した場合を、
想定している措置ですよね。

バカバカ無症状者に検査をやりまくって、
陽性になった人を対象としている方針ではなくて、
そうした場合にどうするべきかは、
議論して決めないといけない事項です。

それが決まっていなくて、
通常の感染者と同じ扱いで、
この自費検査の陽性者が急増している、
という点が臨床的には大きな問題です。

要するにこうした大規模検査というのは、
事後措置とセットで決めないといけないのですね。
検査だけやりました、ニーズがあるので、
というように検査母体の企業の方はそう思われていて、
社会貢献をされているつもりなのかも知れませんが、
それは違うと思うんですよ。
結果的に僕のようなクリニックの業務も圧迫しているし、
保健所の業務も圧迫しているんですよ。
それを理解してほしいな、というように思います。

要はね、陽性者の隔離施設も同時に建設して、
検査とその運用を同時に行うようなやり方であれば、
それはもう大賛成ですし、
そこで取られたデータを、
今後の研究に活かすことが出来れば一石三鳥だと思うのです。
陽性者は検体を取って、
ウイルスの遺伝子解析も行えばよいと思うんです。
勿論多方面にしっかり許可は取って頂いて、
そこまでやればこれはもう日本人のみならず、
人類に対しても偉大な貢献ではないでしょうか?

今やっていることはそうじゃないんですよ。
やりっぱなしで医療機関への紹介も何もないんですよ。
自己責任で適当にやってくれ、というだけなんですね。
それではもう、ただ有害であるだけのように思います。

ただ愚痴ってもそれまでですし、
この自費検査の分がですね、
数100人とかそれ以上という規模で、
感染者に上乗せされていくのですね。

想像するだけで憂鬱になるような話です。

それでもまあ、やれることをやるしかないですし、
腰も痛くて満身創痍の感じですが、
何とか乗り切りたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月18日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動や検診などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日は新型コロナウイルス感染症を巡る現状です。

東京では感染拡大が止まりません。

現状の感染拡大の意味合いは、
個人的な見解としては、
家族内感染が拡大している、
ということと同じであると思います。

家族内感染が止まらないのです。

これは正直当たり前のことで、
現状家族内感染を防ぐための対策が、
全く行われてはいないからです。

東京都の統計をみますと、
宿泊療養より自宅療養の方がずっと多くなっていて、
自宅療養は1200人を超えています。

問題はこの自宅療養の内容だと思うのですね。

個々の事例のお話しを聞いているとですね、
少なくともクリニックのある品川区において、
自宅療養が積極的に選択されている、
というような現状はないのですね。

同居者がいれば、
基本的には軽症でも宿泊療養が選択されるのですが、
結局空きがないと「待機」ということになるのです。
「待機」になるとどうなるのかと言うと、
毎日保健所から電話連絡はあり、
「体調はどうですか?」というような質問はあるのですが、
それ以外は医療もケアも何もありません。
感染予防のために何かの措置が取られる、
というようなこともありません。

そのうちに軽症者であれば症状は改善するので、
「今から宿泊施設に行っても意味がないですね」ということになり、
患者さん本人も勿論希望はしませんから、
そのまま何となく自宅で経過をみることになってしまいます。

これが、「自宅療養」と言われるものの実態であると、
現状を見る限りは思います。

「家族全滅」というケースが、
クリニックで関わった中では3軒ほどありました。
(守秘義務および患者の特定を避ける観点から、
一部は事実と異なる記載をしている部分があります。
ご理解下さい)

1例は高齢の両親と娘さんという3人家族で、
都営住宅に入居をされていた方です。
まず母親に軽い咳やだるさが出現。
それでも軽症であったので、
夫を連れてあちこちの医療機関を受診していました。
数日して今度は父親が咳込みと発熱の症状あり。
高熱になったため、
インフルエンザと新型コロナの遺伝子検査をして、
2日後に新型コロナウイルス感染症と診断されました。
同じ日に別の医療機関で母親も検査を受け、
こちらも新型コロナウイルス感染症と診断されます。
その時点では娘さんは無症状であったのですが、
数日後に咳や熱などの症状が出現しています。
この事例は高齢の夫婦の感染は、
阻止することは困難であったと思われますが、
もっと早期に適切なアドバイスがなされ、
迅速に入院が可能であれば、
娘さんへの感染は防がれたのではないか、
と思われたケースです。

もう1つの事例は50代の夫婦と、
10代の娘と息子4人の家族のケースですが、
娘さんの高校の部活でクラスターが発生し、
濃厚接触者として自宅待機になります。
その時点で一度RT-PCR検査が施行されて陰性でした。
ところが、陰性が判明した2日目に娘は発熱し、
その翌日に行われたRT-PCR検査で陽性が判明します。
自宅待機になってから陽性が判明するまでに、
5日が経過していて、
特に陰性が確認されてから2日は、
娘は自由に活動していました。
それから五月雨的に他の家族が発熱や下痢、
だるさなどの症状呈し、
次々と検査で陽性が判明しました。
この事例は濃厚接触者の管理の難しさを実感させるものです。
クラスター発生で濃厚接触者を認定して隔離して、
その隔離が適切に行われていれば、
有効性があるのですが、
結局行われていることは「自宅待機」で、
それで検査で陰性とされれば、
「もう大丈夫」と絶対思うでしょ。
いくら「2週間は注意して」と言っても、
それは人間の心理的に困難であると思うのです。

要するに、現状家庭がブラックボックス化していて、
そこに1000人以上の感染者が待機しているのです。
それがすぐに2倍になり3倍になりますよね。
500人が1000人に増え、1500人になっても、
全然おかしくありません。
いやむしろそうなるのが必然です。

ここからはもう2択で、
早期の隔離をして家族内感染を拡大しないために、
宿泊療養を今の3倍くらいにどうにかして拡充するか、
それとも何もしないで放置して、
「ステイホーム」、要するに家庭の感染を外には出すな、
という対策のみを行い、
一旦拡大した感染が、
自然におさまるのを待つのかの選択です。
家庭内感染を阻止するために、
専門のスタッフを大幅に増員して、
定期的に家庭を巡回して指導を行う、
というのもオプションとしてはありますが、
今はもうそのタイミングは逸したと思います。

現状は後者の選択肢が選ばれているのだと、
今の情報を見る限りは理解しているので、
これはもう感染の数倍の拡大を、
一旦は覚悟して対処するより他はないようです。

個人的には日々の仕事をこなしつつ、
少しでも検査結果を迅速に患者さんに届けられるように、
また家族内感染のリスクを減らし、
患者さんの自宅療養での不安を、
少しでも和らげられるような対応に、
微力ながら尽くしたいとは思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月9日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後はレセプト作業の予定です。

今日はちょっと限界という感じで、
正直もう無事に1日を送れそうな気がしません。

少々愚痴のような話題になることをお許し下さい。

体調がまず非常に悪いのです。
感染ではないのですが腰痛が悪化していて、
集団のインフルエンザ接種とか、
老人ホームやグループホームでの診察などがあると、
急激に悪化します。
今も痛くてたまりません。

昨日も結果が出次第、患者さんに連絡する予定で、
午後5時からPCR検査の結果のファックスを待っていたのですが、
午後8時になっても結果が来ません。
嫌な予感がして、
片端から検査会社の電話を掛けまくって、
漸く当直のような人につないでもらったのですが、
「今出力中のようです」のような返答です。
5時には来る結果が8時になっても来ないのですから、
連絡くらいしてくれてもいいでしょ。
何もないんですよね。
結局大騒ぎをして午後9時過ぎには結果が届いて、
それから患者さんにはお伝えしました。

他の検査会社の話を聞きますとね、
検査翌日の昼には大体結果が届いているんですね。
「何で遅いの?早くする方法はないの?」
と聞いても何の答えもありません。
行政検査なので検査代も高いんですね。
公費の時は良いのですが自費だと困ります。
検査が高いのは、仕方のない部分もあるんですよね。
保険点数として価格を決めているので、
それを下回ることが出来ないという理屈なのです。
医療機関が儲けているという訳ではなんですよ。
検査代をうちは請求されているだけなのです。
でもね、これだけ安い検査が沢山流通していて、
勿論精度管理はしっかりしているとしても、
やること自体は同じでしょ。
検査会社は明らかに相当儲けている訳ですよね。
間違いなくそうでしょ。
それなら、もう少しその利益で、
配送のスタッフを増やしたりして、
結果が出るまでのタイムラグを、
もっと短縮してくれてもいいのではないでしょうか?

通常なら会社自体の利益優先でもいいと思いますが、
ある意味今は「非常時」でしょ。
PCR検査の結果がどれだけ早く出せるかで、
感染予防効果が違うんですよね。
これは論文もありましたよね。
以前ブログでも紹介しましたが、
介護施設のような感染リスクの高い集団では、
1週間に一度全員検査を行なって、
結果は数時間以内に出るようであれば、
感染防御効果が期待できるんですね。
それが1日掛かるようだと、
もう統計的には予防効果は証明されないんですね。

こうした場合の時間は、
それだけ重要なんですよ。

そんなことは百も承知の筈なのに、
何で対策はしないのかしら。

本当に本当に、嫌になってしまいます。

①当院のRT-PCR検査陽性率
大したことのない底辺の医療機関の記録ですが、
一応まとめておきます。

今年の6月までの期間においては、
原則としてRT-PCR検査は保健所や公的検査機関のみで、
行なわれていました。
その後各地域でPCRセンターが開設され、
クリニックなどの一般医療機関においても、
唾液のRT-PCR検査の施行が認められるようになりました。
現在では感染防御の上、
鼻腔からの検体採取も認められるようになっています。

クリニックでは7月の初めから都と集合契約を結び、
唾液のPCR検査を開始しました。
今では必要に応じて鼻腔の検査も行っています。

7月から11月の末までに、
行政検査として269名のRT-PCR検査を施行。
陽性者は27名で、
トータルな陽性率は10.0%です。

内訳としてみると、
7月の陽性率が12.5%、
8月は8.0%、9月は78件と最も検査数は多かったのですが、
陽性は2件のみで陽性率は2.6%でした。

それが10月は18.6%が陽性、11月は16.3%が陽性となっています。

これだけを見ても、
7月で鎮静化した感染が、
10月から持ち上がって、
それ以前を超える感染拡大につながっていることが分かります。

②「民間検査」と称するものについて
「民間検査」と言う言葉はテレビのニュースで知りました。
保健所が感染を確認する「行政検査」と対比する意味合いだと思います。

面白い用語を考案するものです。

当クリニックでは、
基本的に集合契約に基づいて、
「行政検査」のみを行なっています。
これは症状があって新型コロナウイルス感染症を疑うケース、
COCOAのアプリでの接触確認を含めて、
感染者との濃厚接触が疑われるケースで行なうもので、
全くの無症状で感染機会のはっきりしない時に、
「安心のために」行う検査は含まれていません。

行政検査は公費となるので検査自体は無料で、
医療機関の場合診察料などは掛かります。

これは管轄は厚労省になる訳です。

その一方でRT-PCR検査自体は、
行政検査以外でも行うことが出来、
必ずしも医療機関でなくても施行が可能です。

これは当初は海外渡航の必要なビジネスマンなどが、
「PCR検査の陰性証明」が、
渡航のために必要であることから、
経産省の意向により始められたものです。

こうした検査をする検査機関を、
経産省は招聘し募っていたという経緯があり、
僕が知っている小規模の検査会社も、
説明会などで強く施行を求められたので、
「仕方なくやることになった」と言っていました。

これが敢くまで渡航のための検査に限られているのであれば、
それで何の問題もなかったのですが、
実際には国内の帰省などでも検査をしたり、
スポーツやエンタメの団体などが、
興行のために全員に検査をしたり、
というようなことになってくると、
当初の思惑を離れて、
「商売としての民間検査」がはびこるようになって、
そこには利益優先の悪質な業者もあり、
ダンピング的な低価格競争もあったりして、
当初の健全な目的からは、
かなり離れてしまっているのが実際だと思います。

本来は民間検査の精度管理は、
行政検査と同じ水準で行われるべきものですが、
実際にはそうした検査なりチェックが行われている、
ということは全くなく、
検査のレベルは検査会社の自主性に、
任せられているのが実際です。
仮に利益優先の会社があるとすれば、
そんな管理にお金を掛ける訳がないですよね。

ただ、最初にも書いたのですが、
推奨出来ない「民間検査」の方が、
データが早く届くなどサービスは良いのですね。
クリニックで契約している大手の検査会社は、
グズグズ対応なのですね。
これを何とかしないと「行政検査」の方がいい、
というようには言い切れないですよ。

クリニックの近隣ではですね、
明らかにお金儲けの施設があって、
「PCR検査即日可能!」とかと宣伝しているのですね。
それはそれで問題だし、
テレビで大宣伝しているようなところも問題だと思いますが、
その一方でね、
通常の医療機関が、
「民間検査」を自費で行なっているケースも多いのですね。
本来は診療をしているのであれば、
行政検査をして、
その結果にも責任を持つべきでしょ。
基本的に「発熱者やコロナの疑いの人は受診お断り」
と言っていて、
それで「安心のための検査は自費でどうぞ」
というのは何か矛盾している行為のように、
思ってしまいます。

③もう症状では全然新型コロナは分からない、ということ
はっきり扁桃炎があったら、
それはコロナではない、
と断言をされている先生がいたんですね。
これは事実なのですが、
今はそれは通用しないというのが、
臨床での実感です。

実例がありましてね、
1人の方は咽頭痛と発熱があって、
夜だけ上がる、という症状だったのですね。
それで休日診療所を受診して診察を受けたのですが、
担当医はのどを診察して、
「これは扁桃炎だからコロナじゃないよ。検査は要らない」
と言って帰したんですね。
翌日咽頭痛が強いということでクリニックを受診されて、
RT-PCR検査の結果は陽性でした。

もう1つの例は咽頭痛があって、
2か所の耳鼻科と1か所の内科で、
いずれも扁桃炎ということで診断されたのですね。
それが治りが悪いということで受診をされて、
矢張りPCRは陽性でした。
ただ、この話には続きがあって、
熱は下がったので入院ではなく、
自宅療養の方針となって、
観察期間が終了したのですが、
その翌日に高熱になったのですね。
その人にはかかりつけ医がいたのですが、
連絡をすると、
「コロナと診断された人は来てもらっては困る」と、
受診を断られたので、
それでクリニックに連絡があったのです。

正直診察するのは嫌だな、
とは思ったのですが、
誰も診ないというのなら、診るしかないですよね。
診察したら、扁桃周囲炎でパンパンに腫れているんですね。
あちこちに掛け合って、
コロナ外来を経由して入院となりました。

これはおそらく扁桃炎の原因自体はコロナではないと思うのですね。
合併例で、重症化した、ということだと思います。

新型コロナの症状が出てから9日以降で無症状であれば、
もう周囲への感染はしない、
と言うこと自体はほぼ事実と信じていいと思うのですが、
実際には症状がいつ出現したのか、
分からないケースが多いんですね。

そこで対応を誤ると、
結局感染を広げてしまうことになるでしょ。

難しいですね。

扁桃炎で複数の医療機関を受診した事例などは、
途中で何処かでコロナをもらった、
という可能性も高いと思うのですね。

今は症状から新型コロナの判定は出来ない、
疑ったらすぐ検査するしかない、
というのが僕にっての経験的事実です。

今日は新型コロナを巡ってのあれこれをお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月6日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
レセプト作業などして過ごす予定です。

ちょっと混沌としていまね。

クリニックでも毎日COVID-19の診断のために、
RT-PCR検査をしていますが、
その多くが最近は家族内感染の事例です。

数日前の事例でお話ししますと、
息子さんが高熱と咽頭痛で発症したのですが、
休日診療所を受診して、
「咽頭の発赤が強いのでコロナではない」
と断言されてアセトアミノフェンだけが処方されたのですね。
それから数日熱が下がらなくて、
保健所経由でPCRセンターで検査をして、
陽性が確定したのですが、
その時点で5人家族が一緒に暮らしていて、
発熱者を1週間くらい自宅で診ていたのですね。
都の審査によって入院という判断になったのですが、
今度は入院先が見つからない、ということになって、
そのまま数日自宅待機となって、
その間に他のご家族にも咳や咽頭痛などの症状が出たのです。
家族はクリニックを受診して、
そのうちの1名が陽性となりました。
それなのに、ですよ、
最初の感染した息子さんは、
待機しているうちに解熱したのですね。
そうしたら、もう入院は必要ないということになって、
結果として2人も家族で感染者が出ているのに、
何もせず、家で家族一緒に様子をみているだけ、
という事態になってしまったのです。

こういう事例がそれこそ沢山あってですね、
まず診断されるのが遅いし、
感染経路はほぼ全て不明なんですね。
ほぼほぼ分からないのです。
それで家族に1人感染者が出るでしょ。
濃厚接触者ということで家族の検査をするのですが、
比較的重症でも入院先が見つからないのでそのままだし、
軽症だともう、
家で様子をみて下さい、という感じになっているのですね。

色々な意味でお手上げで、
家族内感染を放置しているので、
これはもう感染拡大を阻止出来る訳がないですよね。

ちょっと呆然としてしまいます。

この間読んだシンガポールの事例だったと思うのですが、
家庭内感染のリスクを検証した論文があって、
シンガポールでは専門のスタッフが巡回して、
家族内感染の予防のための指導に廻っているんですね。
そのスタッフから感染が広がったりすることもあるので、
なかなか難しい面もあるのですが、
こういうことを是非やった方がいいですよね。

もう多くの事例で入院や宿泊療養が出来なくなっていて、
家族で患者を診ているのが実際なんですね。
家族内感染が増えているというのは、
要するにそうした意味で、
それ以外の感染経路は不明というのが実態なのです。

こうした事態になった時には、
家族内感染予防のために、
その指導をするような態勢が、
最も重要な対策であるのですが、
それが全くないのが実際なのですね。

勿論病院のスタッフや看護師も足りないのは事実なのですが、
クリニックの現場で考えますとね、
それ以上に足りないのがそうしたスタッフなのです。

これがとても重要だと思います。

患者さんの家族の話を聞いてもね、
そのことを一番心配されているんですよね。
家族に感染を広げないためにどうすればいいのか、
と試行錯誤をしているのですが、
一般の方にそうした試行錯誤をさせる、
というような態勢はまずいですよね。

これはもう早急にそうしたスタッフを養成して、
巡回するような体制づくりが急務である、
というように思います。

検査についてはね、
大手の検査会社の対応が遅いんですよ。
今検体を出して、
結果がファックスされるのが翌日の夜なんですね。
早くて夜なのです。
なので通常結果をお伝えするのが2日後になってしまうのですね。
これじゃ遅いよね。
ファックスというのも原始的だし、
何とかならないかと思うのですが、
ロジスティックの問題なんですね。
検体を迅速に運ぶという体制が弱くて、
1日のうち1回しかそのための集配がないのですね。
検査をする場所には1日に1回しか運ばないので、
結局朝に検査をしても夕方にしても、
検査の結果は同じにしか届かないのです。

これじゃ駄目だよね。
でも言っても改善は全くされません。

安い自費検査があるでしょ。
診断や診療のためではない、という名目で、
金もうけ目的がありありなのですが、
そっちの方がサービスは良いし、
結果が出るのも早いんですね。

金もうけ目的のクリニックは、
「医療目的ではない」という趣旨の自費検査をじゃんじゃんやって、
陽性になると保険請求して、
高額な検査費を公費で請求しているんですね。
近所のクリニックは自費検査をじゃんじゃんやっていて、
この間陽性者が出たのですが、
そうしたらお金を返したのですね。
それは要するにそうした処理をしている、
ということだと思うのです。
でも、実際には自費検査は安いので、
その差額は懐に入れている、
ということになります。
厳密に言えば不正請求ですよね。

集合契約をしている大手の検査会社は、
検査の価格は下げないんですよね。
そのために自費でも高額になってしまうので、
無症状だけれど心配、
というような人は皆、
精度管理も怪しげで低価格の自費検査に走るでしょ。
何か間違っているな、
というように思うのですが、
改まる気配はありません。

大手の物流の会社などが、
自前の低価格のPCR検査を販売したりしているでしょ。
良いことをしているつもりなのは分かるのですが、
実際には本来濃厚接触者に当たる人が、
自費検査を受けて安心してしまって、
それで感染をばらまくという結果になるのですよね。
濃厚接触者は2週間の隔離が必要なのですが、
それがざるになってしまうのです。
陽性が出ても強制力はないから、
届け出もしないということもありますよね。

要するに、
検査をすることを感染防御に繋げるという視点が、
そこにないことが問題なのですね。

家族内感染が野放しで、
行政が責任を放棄してお手上げになっている現状では、
感染防御を民間で担うしかないのが現実なのです。

検査をするだけで感染防御になりますか?

ならないですよ。

それくらいならね、
ロジスティックを大量に投入して、
医療用の検査が迅速に結果が出て、
それが迅速に医療機関に届くような体制に、
お金を出してもらえないですかね。

集合契約をしている多くの医療機関やPCRセンターで、
即日に結果を出せるような体制が作れれば、
それだけでかなり状況は変わるのですよ。

大手の検査会社はそうしたことをする気が、
120%ないんですよ。

それをどうにかしないと現状が変わりません。

それから家庭内感染を家庭で防御するための、
マニュアルとサポートするスタッフや技術開発、
体制整備が重要だと思うのです。

専門スタッフが感染者の家庭を巡回して、
必要な器具は全て提供するようにすれば、
それだけでかなり状況は変わるでしょ。

今は保健所から電話が入って、
「熱がありませんか?」くらいのことを言われるだけなんですよ。

それじゃ絶対駄目ですよ。

すいません。
愚痴が過ぎました。

重要なことだけ最後にもう一度言います。

今の感染拡大の主体は「家庭内感染」なのに、 それを予防することを行政は全くしていないのです。 何の対策もしていないのです。 隔離すら出来ていないのです。 誰かがそれをやらないと感染拡大は止まらないのです。

このようなことを考えつつも、
日々の診療をこなし、
自分に出来ることを、
細々と続けるしかないのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんは良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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久しぶりに「レセプト」で地獄を見る [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は雑用に追われる予定です。

昨日は更新できませんでした。

保険診療の医療機関は、
毎月10日までに前月の診療報酬の明細(レセプト)を、
支払基金などに提出します。
以前は紙で記載をして印刷したものを、
期限までに医師会を通じてか、
もしくは直接国保連合会や支払基金に提出していたのですが、
最近は電算化が進行して、
殆どの医療機関で電子カルテを導入し、
電算でレセプトを作成して、
それをネットで送る手続きを行ないます。

月の6日から10日までがその提出で、
1日から2日前には提出を済ませたいのですが、
ギリギリになることも多く、
今月は祝日などもあって、
10日の夕方までにレセプトを作成して、
それから夜に送ろうと段取りをしていたのです。

レセプトを送る前には、
レセプトチェッカーに掛けて、
レセプトの様式に誤りがないかどうかをチェックします。
1枚ごとのレセプトでそうした作業が出来ると便利なのですが、
クリニックで導入している電子カルテでは、
そうしたことは出来ず、
全てのレセプトが出来上がってから、
それをまとめてチェックすることになります。

記載のミスや抜けなどで、
10から20件くらいのエラーが表示されるのはいつものことです。

ところが、
今回やけにチェックに時間が掛かり、
何と100件以上のエラーが巻物のように出て来ました。

それが10日の午後9時のことです。

期限はその日の午前0時までです。

見た瞬間に呆然としました。

間に合わないじゃん!
ということです。

何故このように大量のエラーが出たのかと言うと、
「適切な医事コメントが選択されていない」
という記載でした。

たとえば療養費同意書の交付を行なうと、
その点数を入力してから、
医事コメントとして交付の年月日を入力する必要があります。

それは通常カルテ記載と同時に、
コメントを一覧から選んでセットにしたものが登録してあるので、
それを選べば済む話でした。

ところが、
今年の10月1日施行分より、
そのコメントが自由入力ではなく、
厚労省の指定するコメントに変更になりました。
どのコメントを使用する必要があるのかは、
膨大な一覧表が存在していて、
そこから手入力で選択する必要があります。

更にややこしいのは、
電子カルテの場合、
9月30日までは有効であったコメントと、
10月1日以降に必要なコメントが、
全てちゃんぽんでデタラメに並んでいるのです。
その中から正しいものをより分けて入力しなければなりません。

その作業をいきなり100件以上、
1から2時間の間にやらなければならないことになったのです。

出来るのかしら…
呆然となりました。

勿論こうしたことがある、という話は聞いてはいたのです。
電子カルテのメーカーの人にも連絡はしていました。
ただ、コメントは膨大でどれが変更になり、
どれがそのままで良いのか、
という点が確認出来ません。
湿布のコメントが新しくなるよ、
薬剤血液濃度のコメントや腹部エコーのコメントも変わるよ、
という辺りは聞いていて、
実際に9月の提出の時には、
そのコメントがないと警告表示が出ていました。
そのために、9月の時点で警告のないものについては、
問題ないのではないか、
というように思っていたのです。

しかし、それは全くの誤りで、
カルテメーカーの移行の問題もあるのでしょうが、
10月のチェックの時に、
ごっそりとエラーが積み上げられてしまったのです。

突貫工事のようにコメントを切り替え、
どうにかこうにかギリギリで提出に至りました。

そんな訳で今も呆然とつつ、
それでも今日もこれからCOVID-19陽性者に、
結果も説明をして、
それから保健所の届け出をしないといけないので、
書類を整理しつつ待っているところです。

あっ、今お出でになりました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナウイルス検査65000件拡充、の裏側 [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日で休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

今日は身辺雑記的話です。

新型コロナウイルス感染症は、
未だ国内でも収束の気配を見せていません。
東京は高止まりでかろうじて推移しているという感じで、
急激な増加に向かうリスクも秘めています。
明らかに東京発の感染が、
北海道や大阪で増加を続けています。
仮にこれで東京の感染者が急増して、
旅行の推奨も今のまま続くとすると、
深刻な事態がすぐそこまで迫っている、
という気がします。

もう少し危機感を持つべきではないでしょうか?

現状問題とされているのは、
これから季節性インフルエンザの流行期に入り、
発熱する患者が増加することで、
医療体制が逼迫するのではないか、
という懸念です。

そこで東京都の最近の発表では、
検査可能数を従来の4倍の65000件に拡充し、
全医療機関の4割に当たる2800医療機関で、
発熱患者の診療が出来る体制を整えた、
としています。

「体制を整える」ではなく、
もう「整った」と言っているんですよね。

何故こんなことが可能となったのでしょうか?

今日はその裏側をちょっとお話したいと思います。

クリニックに10月初旬に封書が届き、
それと同じ頃に医師会を通じてファックスも届きました。

内容は「季節性インフルエンザ流行に備えた体制整備にご協力ください!」
というもので、
発熱患者の診療を自院で行なう医療機関は、
対応可能な患者の人数や可能な検査を、
専用のサイトから東京都に申請し、
それを元にして東京都が、
「診療・検査医療機関」の指定を行なうというものです。

クリニックでは発熱患者は、
診察場所を完全に分けて診察をしていますし、
インフルエンザの迅速検査や新型コロナウイルスのRT‐PCR検査も、
既に行政検査の契約を結んで検査をしていますから、
別に協力することはやぶさかではないと言うか、
既に対応をしているのですが、
指定を受けて下さい、ということなので、
真面目にネットから指定を行ないました。

この「お願い」には実は抱き合わせに、
「発熱外来診療体制確保支援補助金」の申請について、
という項目が記載されています。

クリニックで発熱患者を診察することには、
当然感染のリスクがあります。
昨年まではマスク1枚か、
時にはマスクもせずにインフルエンザの検査を行なっていたのですが、
仮にその患者さんが新型コロナウイルス感染症であれば、
油断をしていれば施行している医者が感染してしまいます。
そのため、今年のガイドラインでは、
インフルエンザの検査を行なう際にも、
マスクとゴーグル、手袋に防護衣など、
フル装備で行なうことが求められているのです。

毎回こうした時間を掛けて準備をし診察をするので、
患者さん1人にこれまで以上のエネルギーとコストを要します。

その部分を国や都はどのように考えているのでしょうか?

「発熱外来診療体制確保支援補助金」の内容を読んでみると、
たとえば1日で20人の発熱患者を診察出来るという申請を出し、
それが認められた場合に、
その日10人の患者しか受診をしなかった時には、
その差の10人分の医療費相当分を、
この補助金として補填する、と書かれています。

毎日20人の患者を診ると申請すれば、
その20人分の医療費は、
患者が来なくても補填するというのです。

そんな上手い話があるのでしょうか?

明らかにこの補助金は、
今後の発熱者の増加に対応した体制を作るために、
僕のような弱小の医療機関に与えられた餌なのです。

ただ、実はこれには裏があります。

この補助金は期限内に申請すれば、
そのままの金額が振り込まれるのですが、
それは発熱患者対応に使われることを前提としています。
つまり、それ以外の用途に使うことは許されず、
仮にそうした使用がされなかった場合には、
後日返還が要求されるという仕組みになっています。
更に以前給付がされた、
新型コロナによって経営が悪化した医療機関への、
補助金があるのですが、
それと一体のものとして扱われていて、
総額がそれを超えることも不可となっているのです。

つまり、見かけ上は、
発熱患者を診ることにより、
自動的にお金が入るように思われますが、
実際には色々と条件が付けられていて、
殆ど都の会計から拠出されるお金は微々たるもので、
医療機関としてのメリットは殆どない仕組みなのです。

都から送られて来た資料には、
そうしたことは全く記載されていません。

こうした詐欺まがいの手法により、
2800の医療機関が登録の申請を出し、
そこで検査可能な人数として申請された数字を、
足し合わせたのが都が発表した65000件という検査数になるのです。

税理士さんにその辺りのからくりを聞いたので、
発熱医療機関の登録はしましたが、
補助金の申請はしませんでした。

毎日次々と新型コロナについてのファックスが届き、
それによりまた振り回される日々が続いていますが、
気を引き締めて感染防御に留意しつつ、
冬本番に備えたいと思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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インフルエンザワクチンがない! [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日は身辺雑記的な話です。

インフルエンザワクチンが入荷しません。

クリニックではインフルエンザワクチンは、
医療品卸会社を通じて納入されます。
メーカーからの直売は許されません。
充分に在庫のある商品であれば、
必要な数を注文してそれが入荷されるのを待てば良いので、
何も問題もありませんが、
インフルエンザワクチンに関しては、
毎年非常なストレスが待っています。

注文を出しても、
その本数が入って来ることはありませんし、
何日までに納入をお願いしますと言っても、
その通りになることもありません。
50本のワクチンを注文したのに、
何の説明もなく5本しか入って来ないということもありますし、
希望日には全く入荷はなく、
1週間後にようやく半分入荷した、
というようなこともあります。

こんな状況があるので、
卸の担当者に直接会って、
その年のワクチンが流通する前に、
「今年は○○本が必要になりそうです」
という話をしておいて、
その本数を確保してもらうように交渉することになるのです。

ただ、毎年その交渉も一筋縄では行きません。

特に今年に関しては、
全くこちらの事情を聞いてもらえない、
という状況が続いていて、
10月中に老人ホームの入所者と職員の接種を、
開始しないといけないのですが、
それに必要な160本ほどのワクチンが、
とても工面出来そうにない、
という絶望的な状況となっています。

今年に関しては担当者から、
「昨年の分は最低限確保する」という話はあったのです。
その上でAというメーカーのワクチン70本を、
9月中に納入、というようなメモを渡されたのです。
それから10月の間にBのメーカーのワクチンを何本、
11月上旬までに残りのワクチンを納入、
というようなプランのメモです。

これを信じて、ワクチン接種のスケジュールを組んだのですが、
それがそもそもの誤りでした。

それとは別にメーカーAの担当者に話を聞きました。
すると今年はトータルでは13%、
昨年よりワクチンを増産しているという話があり、
通常は10月に4割、11月に4割、12月に2割を出荷しているが、
今年についてはそれを1ヶ月近く前倒ししている、
というような説明がありました。
最初の出荷は9月の17日頃にあり、
19日くらいには卸に入る予定なので、
次の週の初めにはクリニックへ入荷されておかしくはない、
というように説明を受けました。
10月には基本的に毎週ワクチンの検定があり、
週終わりには卸には納入される予定だ、
というのです。

この情報を得た上でワクチンを待ちました。
しかし、9月の26日になってもワクチンは入荷しません。
担当者に連絡するとメーカーからの入荷が遅れている、
という返事です。

本当だろうか、と疑問に思いました。
結局最初の入荷があったのは9月29日のことで、
10月1日の接種ギリギリです。
それでも最初の説明通り入荷しているなら、
「色々頑張って調整してくれたんだろうな」と思うところですが、
予定されたメモの半分しか入荷はなく、
メーカーAの70本はまるまる入荷しませんでした。

そのことを担当者に言うと、
別に「申し訳ありません」と言うことはなく、
「入荷がいつもより遅れているみたいです。
ひょっとしたら検定が落ちてしまったのかも知れませんね」
と他人事のようなことを言うだけでした。

確かに作られて出荷を待っていたワクチンが、
検定で不承認となり、出荷が見送りになる、
ということがあることは知っています。

毎年予定されたワクチンが入荷しないと、
必ず「検定落ち」のような説明がされていたので、
本当にそんなことがたびたびあるのだろうか、
という点については疑問に思っていました。

それでAメーカーの方に直接お聞きすると、
矢張り検定落ちなどはしていない、
という返事でした。
卸の担当者の言ったことは口からでまかせだったのです。

問題は予定の70本が一体何処に消えてしまったのかです。

おそらく、他の医療機関に納入されてしまったのだろうな、
ひどいな、とは思いましたが、証拠はありません。

その後ワクチンは、
依頼したよりかなり少ない量で、
納入はされましたが最初のメモとは、
比べものになりません。

そして、決定的なことが数日前に起こりました。
初めてAメーカーのワクチンが4本のみ納入されたのですが、
そのロットは9月のうちに最初の出荷されたものでした。
つまり、本来9月に納入される筈だったワクチンのごく一部が、
多分返品なのかどうか、
戻って来たという訳です。
担当者の説明は「今週入荷したワクチンを何とか確保しました」
という嘘で塗れたものでした。

ワクチンが前倒しで出荷されていることは、
何度もメーカーの方に確認しているのですが、
卸の担当者に「何故ワクチンが予定通り入らないのか?」と聞くと、
「出荷が遅れているようです」と真逆の答えが返って来ます。
都合が悪くなると何度電話をしても居留守を使います。
11月のいつに次のワクチンが入荷するのかと聞いても、
「それはメーカーの都合なので分かりません」と言うだけです。
全て嘘なのです。
メーカーはきちんとスケジュール通りに出荷していて、
それは予定通り卸には納入されているのです。
問題はそこでワクチンが「卸」という名前のブラックボックスに吸い込まれ、
こちらに届かなくなってしまうだけのことです。
ワクチンがないならないで、
その通りに言ってくれれば問題は起こらないのですが、
あやふやな説明しかなく、
最初は期待を持たせるようなことを言い、
それにも嘘が散りばめられているので、
混乱に拍車が掛かるだけなのです。

何故こんな不合理な仕組みがまかり通っているのでしょうか?

公的な商品であるワクチンの流通が、
こんなブラックボックス経由で良いのでしょうか?
いや良い筈がありません。

今年は前述にように老人ホームの接種者が多く、
その分は絶対に確保しないといけないのですが、
このままだとそれは不可能なまま、
流行期に突入してしまいそうです。

誰か何とかしてくれないでしょうか?

毎日妻と顔をつきあわせ、
絶望と怒りに身体を震わせているのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年9月18日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

今日は身辺雑記的話です。

クリニック周辺では先週から、
新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生していて、
その対応に追われている日々です。

8月の中旬くらいに山があり、
その後は確かに鎮静化するように思われたのですが、
9月1週目以降は明らかに増加に転じていて、
昨日(17日)は最近では最も多い11人の、
唾液のRT-PCR検査を施行しました。

インフルエンザのシーズンを見据えて、
鼻腔検体でのインフルエンザと新型コロナウイルスの、
抗原迅速検査も少しずつ試みています。
これは一度で両方のチェックが出来るので、
確かに効率的ではあるのですが、
鼻腔のRT-PCR検査と感染リスクは同じなので、
その都度防護衣とゴーグル、手袋を含めた、
完全防御で検体採取を行なわないといけないので、
人数をこなすことは困難です。

濃厚接触者が増えると、
万一感染が起こった時に厄介なので、
基本的に採取から検査まで僕1人でやっています。

私見では東京だけはもう一度都市封鎖に近いことをしないと、
感染の収束は望めないように思います。
今回の感染拡大は、
間違いなく東京発であるからです。
これで4連休でしょ。
縦割り打破とかデジタル化とか言っていないで、
これ何とかしろよ、と思いますが、
どうにもならないことかも知れません。

先日とてもつらいことがありました。

先週の診療日に保健所から連絡があって、
濃厚接触の家族が親子でRT-PCR検査を受けなければいけないので、
受けてもらえないだろうか、というのです。

その日の午後はそれほど予定は詰まっていなかったので、
受けられます、とお返事をしました。

行政検査の段取りはこういうもので、
まず保健所からクリニックに連絡があり、
それが保健所から本人に伝えられて、
それから本人からクリニックに連絡が入る、
という段取りです。

時に本人から直接連絡が来る時があり、
そうした場合には、
こちらから保健所に確認の連絡を入れます。

行政検査を請け負っている医療機関では、
新型コロナウイルス感染症を疑わせるような症状があれば、
医療機関のみの判断で唾液のRT-PCR検査を、
行政検査として施行することが出来ますが、
無症状の場合には、
濃厚接触者であるかCOCOAのアプリで接触の連絡が入ったか、
そのどちらかであることの確認が必要です。
これはどちらも医療機関のみでは判断出来ないので、
保健所に確認することが必要となるのです。

その日の午後に、
その濃厚接触者の親子は受診をされました。

濃厚接触者に施行されるRT-PCR検査は、
保健所の指示による行政検査なので、
検査代に本人負担は発生しません。

しかし、それはその人が保険診療をした場合の、
検査の部分のみの自己負担をゼロにするという形で行われるので、
クリニックを受診されたような場合には、
診察料などは通常の保険診療として、
自己負担分は払って頂くような形になります。

品川区にはPCRセンターがあり、
そこでのみ鼻腔からのRT-PCR検査が、
行政検査として認められているのですが、
この場合は医療機関の受診ではないので、
検査受診者の自己負担は一切ありません。

つまり、
同じ濃厚接触者であっても、
何処で検査をするのかによって、
負担は違うということになるのです。

これはそういう決まりになっているので、
別に不正請求とかそういうことではなく、
保健所でも「PCRセンターでの検査は無料ですが、
医療機関を受診しての検査は、
診察料については通常の健康保険での支払いがあります」
という説明がされている筈です。
保健所の担当者とのお話でも、
それは確認しています。

しかし、何度も確認したつもりでも、
これがトラブルになるのです。

その日の午後濃厚接触者の家族は約束通りに受診をされ、
診察の上検査をしてお帰りになりました。

検査の際に確認していることは、
結果は電話では説明は出来ず、
必ずもう一度受診をして頂いて、
その時に結果を説明して、
症状なども確認の上その後の対応についてもお話し、
結果の報告書をお渡しする、ということです。

勿論どうしても来れないというような、
ご事情のある場合には個別に対応していますが、
全くの初診という方が多いので、
電話などでは本人確認が出来ず、
そうした対応をしています。

2日後の朝に連絡をもらうようにお願いをしていて、
当日になり電話があったのですが、
開口一番「陰性ですか?陽性ですか?」
と聞かれました。

それで、
「電話では結果はお伝えしていないので…」と言うと、
「行くのは嫌です」と即答されました。
勿論事情があって来れないこともあると思いますので、
やむを得ない事情のある場合は個別に別個の対応はしています。
検査の際にもそのことは確認していて、
その時には「分かりました」と言われていたのです。
それで「何かご事情がありますか?」とお聞きすると、
「行けば再診料を取られるんでしょ」と言われるので、
「それはそうです」とお話すると、
「ただじゃないといけないんじゃないの?そんなの違反でしょ」
と詰問調で言われました。
それでもう一度仕組みをお話しました。
無料になるのは検査料だけなので、
診察料はかかることになっていて、
それは保健所にも確認している事項なのです。
しかし、聞き入れてはもらえません。
「役所とか保健所とかに通報しますよ。法律違反じゃないの」
とまで言われたので、
これはもう会話にはならないなと思って、
電話は切りました。

すぐに保健所には問い合わせをして、
こうした場合はどうするべきなのかと聞きましたが、
「対応には誤りはありません」と言われました。
「そのくらいはいい方ですよ。私達はもっと罵詈雑言を毎日浴びせられて、
理不尽なことを言われています」
と言われたので、
それで少し気分が落ち着きました。

その後はもうしつこいくらいに、
何度も検査を受けられる方にはご負担を含めた説明をしています。

僕が熱が出たらお終い、
クリニックを閉めるしかない、という日常を、
もう7か月以上続けていて、
一応どうにか綱渡りのように続けられてはいますが、
いつどうなるのか分かりません。

それでも、
心配をされていた患者さんが、
検査が陰性と知ってほっとされる瞬間だけは、
こちらも少し救われたような気分になるのです。

以上地域医療の現場からお伝えしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年8月10日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日のためクリニックは休診です。
8月11日と12日はお休みを頂き、
13日からは通常通りの診療に戻ります。

ただ、9日は1日ずっとレセプトをしていて、
夜にはRT-PCR検査の結果説明を15分間隔で10人しましたし、
明日は訪問診療には廻りますので、
休みという感じはあまりありません。
今年は勿論奈良にも行きません。

東京の状況としては、
感染者は相変わらず多いのですが、
先週のような混乱は少し落ち着いているという印象はあります。

8月8日にRT-PCR検査を10人以上提出して、
結果は10日になるかなあ、と覚悟していたのですが、
9日の午後5時にはファックスが送られて来たので、
それから電話をかけまくって、
15分間隔でクリニックに来て頂いて、
順番に結果説明をしました。

2日前に陽性確認した方の濃厚接触者のご家族がいて、
軽症ですがもう入院になったとお話を聞いたので、
1週間ほど前よりは保健所の対応も迅速化していると感じました。

この病気は学校の寮のクラスターでも分かるように、
濃密な空間での集団生活では非常に高い感染率で、
周囲に感染を拡大させます。

従って、
家族や寮、シェハウスなど、
こうした集団で感染者が確認された場合には、
速やかな隔離が必須です。
一方で1人暮らしの軽症者であれば、
自宅療養で基本的には問題ありません。

ただ、現状の問題は自宅療養ではケアも医療もなく、
ただ放置されたような状態になってしまう、
ということです。

自宅療養は今後拡大するのであれば、
オンラインの形でも良いので、
主治医は決めて定期的に状況をお聞きするなど、
経過観察の体制づくりが必要ではないかと、
地域診療の立場からはそのように思います。

僕自身は自宅療養が想定されるような場合には、
「何か心配なことがあれば、
いつでも連絡をして下さい」
というように最近はお話するようにしています。

現状のシステムは、
敢くまで医療崩壊を起こさないということと、
重症化する患者に如何に医療を集中させるのか、
という点に力点があって、
圧倒的に多い軽症者をどのようにケアして、
感染の拡大を防ぎ、
患者さん1人1人に不安なく療養をしてもらうのか、
という観点がない点が問題なのです。

その意味ではゆるい感じで良いので主治医を決めて、
常に連絡が取れるような状況を、
作るのが良いのではないでしょうか?

現状は軽症者には一切治療はないのですが、
プラセボ(偽薬)でも良いので、
何かこれを飲めばある程度安心、
と思えるようなものがあると、
非科学的ではあってもメンタルケアとしては、
意味があるのではないかと個人的には思います。

その意味ではイソジンも発想としては悪くありません。

ただ、内分泌屋の立場としては、
大量のヨードをそのために使う、
というのはあまり推奨出来ません。
使う人は矢鱈と使うでしょうからね。

アズノールのうがいのようなものでも悪くないと思いますし、
感冒には一定の効果が報告されている、
亜鉛のサプリみたいなものでも良いのではないかしら。

バイオテロもどきの危険な行為を抑止するためにも、
軽症者や無症状感染者の不安を軽減し、
サポート出来るような態勢づくりが、
今後は重要になるように思います。

保健所の方も検査会社の方も病院の方も、
今本当に踏ん張っていらっしゃるというように思います。

これで良い方向に向けば良いとは思います。
現状の対策では、
これ以上やりようがないですものね。

僕も微力ながら、
日々できることをしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

こんな時期に何ですが、
出来れば下記書籍もよろしくお願いします。
発売中です。

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践!  コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践! コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?

  • 作者: 石原 藤樹
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2020/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年8月8日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

新型コロナウイルス感染症(COCID-19)の感染が止まりません。

クリニックの検査でも、
この1週間は陽性率が高くなっていて、
診察上は「これは違うな」と思うようなケースでも、
陽性の事例が多く認められています。

間違いなく市中感染が拡大しています。

今流行が拡大しているのは、
間違いなく保健所などの対応が、
パンクしてしまっているからです。

クリニックでも家族などの濃厚接触者の唾液RT-PCR検査の依頼が、
この1週間くらいは多いのですが、
お聞きすると陽性者が出ても、
入院になるのか、宿泊療養となるのか、
自宅療養となるのかの対応がなかなか決まらず、
結果としてあまり感染防御が出来ないままに、
家族が一緒に暮らしていて、
更に感染が広がってしまう、
という悪循環になっています。

濃厚接触者が発熱などの症状を呈していれば、
その時点ですぐにRT-PCRを施行すれば良いのですが、
無症状の場合には、
その時点ですぐにRT-PCR検査を行なうことが、
必ずしも感染の拡大阻止に繋がるとは言えません。

無症状の感染者でのRT-PCR検査の陽性時期や期間は、
事例によりまちまちで、
文献的にもあまりまとまったデータがなく、
その時点での検査で陰性であることが、
「無罪証明」には決してならないからです。

今日検査が陰性であっても、
翌日に陽性になる可能性が充分にあるからです。

問題なのは検査を受けた多くの人にとって、
その検査は感染していないという、
安心のために行われていると理解されていることです。
濃厚接触者の検査は、
敢くまでどのくらいの感染の広がりが想定されるのかの、
「当たり」を付ける目的のもので、
感染と非感染の振り分けをするためではないのですが、
それを理解してもらうのは、
なかなか難しいのが実際です。

東京や大阪や沖縄で今起こっていることは、
市中感染の状態になっているのに、
泥縄的に検査数のみを増やしているので、
陽性となった場合の保健所など行政の対応が追い付かず、
それが却って感染をより広げる原因となっている、
という悲惨な状態です。

医療崩壊を食い止めるということに力点を置き過ぎたために、
多くの軽症事例の行き場がなくなって、
結果として感染を発見しても、
適切な対応が取れないために、
感染が拡大し続けているのです。

システム的な問題もあります。

クリニックで唾液のRT-PCR検査を行なって、
陽性になりますよね。

保健所に発生届をファックスで出し、
それから折り返しの電話で補足の説明をします。
保健所ではその情報を元に、
入院の必要性などの優先順位を付けて、
それを東京都の担当部署に送付します。
入院や宿泊療養の判断をするのは、
東京都になるのです。
品川区はほぼ収容はパンク状態で、
品川区在住でも品川区で入院や宿泊療養が出来るとは限りません。
その采配は全て東京都でしているのです。

単純に考えて、
これで毎日数百人の情報が都に集まり、
それを都内の宿泊施設や医療機関の情報と照らして、
対応を決めるだけで、
多くの時間が費やされてしまうのです。

それが更に地区の保健所に伝えられ、
それから本人や家族に伝えられるということになるのです。

このシステムは、
医療崩壊を防いで、
重症の患者を効率的に入院させる、
と言う点では一定の効果を挙げています。

しかし、感染を収束させるという点では、
全く機能しないばかりか、
むしろ感染の拡大を助長してしまうのです。

軽症者や無症状感染者の多くは、
適切な決定がなされないまま、
自分達の責任で、
家族や周辺の人達と、
一緒に生活せざるを得ないからです。

RT-PCR検査を増やしても、
この状況は全く解消はされません。

検査は症状が出た時点で、
速やかに行なえるという体制があればいいのです。
そのスピード感こそが命であって、
無症状の人に検査をして、
陰性で安心することには何の意味もありません。
現状は無症状の人に「安心」のための検査を多数行うことで、
結果として検査機関もパンクして、
迅速に出るべき結果が却って遅延してしまっているからです。

家族や会食をした友人、
同じフロアで仕事をしている同僚が、
新型コロナウイルス感染症と診断された時、
周辺で長く接触していた人に、
症状がなくても一旦検査をすること自体は、
悪いことではありません。
ただ、その時の検査で陰性であっても、
ある程度の確率では既に感染していると、
そう想定した方が良いので、
陰性であっても濃厚接触であれば、
陽性として経過をみることが必要なのです。

無症状の濃厚接触者は、
感染している可能性を念頭に、
周囲との接触を避けて2週間(期間には別の意見もあります)
経過をみることが何より必要なのです。
その間に症状が出現すれば、
速やかに検査を行ないますが、
無症状のままに経過していれば、
必ずしも検査をする必要はないのです。

これが無理な状態となれば、
もうロックダウンしか手はありません。

今重要なことは、
陽性患者を迅速に隔離することです。
そのためにはマンパワーが圧倒的に不足しているのです。

飲食店や映画館などが感染防御の対策を取ることは、
確かに新規の感染者の増加予防には役立ちます。

しかし、今最も感染拡大の要因となっているのは、
家族などでの周辺の感染拡大なのです。
それを防ぐためには、
感染者が発見された段階で、
速やかにその患者を隔離出来るような対策が必要です。
たとえば1人暮らしであれば、
体調をみながらの自宅療養で問題はないのです。

現状は重症者以外の行き先を決めるのに、
数日から1週間くらいの時間が掛かってしまい、
その間に感染が周辺に拡大し、
それが更に周辺に拡大するという、
いたちごっこの悪循環に陥っているのです。

これでは絶対に感染は収束しません。

現状の問題は行政が感染収束の対策を取っていない、
ということです。
最悪の事態を免れるための対策は取られているのですが、
それは感染拡大を抑えるための対策ではない、
と言う点が問題なのです。
しかし、このペースで感染が拡大すれば、
医療崩壊を防いでいる堤防もいずれは決壊して、
最悪の事態に至ることは、
もう火を見るより明らかです。

堤防があるので、
川の増水を実感出来ない、
というのが現在の東京の状態です。

どうか一刻も早く、
感染者が迅速に振り分けられ、
それぞれのあるべき場所に速やかに隔離されるための、
そうした対策に努力を集中して下さい。

理性のある人が少しでもいることを祈りつつ、
今日も僕なりに必死に、
診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

一刻も早くこの状態が解消されますように。

石原がお送りしました。
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