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新型コロナウイルス変異株検査への提言 [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日は新型コロナウイルス関連の話題です。

4月21日の朝のニュースを見ていたら、
4月20日の東京の新型コロナウイルス感染症の患者は、
711名報告され、
検査数は6435件、
変異株は初めて100例を越え、
115例が報告された、
という報道がありました。

これね、皆さんはどう理解をされますか?

多分、711例の感染者のうち、
115例が変異株であった、
と理解されるのではないでしょうか?

でもそれは違うんですね。

こちらをご覧ください。
変異ウイルス発生届.jpg
こちらが東京都健康安全研究センターを介した、
4 月20日夜の時点での、
変異株の報告をまとめた資料です。

全体で322件の検査をして、
そのうち115件が変異株であった、
と記載されています。
その内訳は東京都の機関である、
東京都健康安全研究センターで検査された事例が77件で、
そのうちの19件が陽性、
民間の検査機関(含む大学など)で検査された事例が245件で、
そのうちの96件が陽性です。

これは敢くまで4月19日夜の報告以降で、
判明した数を示しているものなのですね。
その全てが陽性者の711名の中に含まれているのかどうかは、
分からない訳です。

東京都健康安全研究センターの検査というのは、
保健所を介して行われた検査の中から、
抽出されたものという説明になっています。
つまり、クラスターなどの事例で、
施設や病院、学校などでの検査が、
その主体ではないかと思われます。
この場合はN501YとE484K両方のスクリーニングをして、
それから遺伝子解析も全例ではないのでしょうが、
自前でやっているようです。
こちらはそのまま東京都に直接報告される分ですね。

それから、残りの245件の検査というのは、
主にクリニックが委託しているような、
検査会社が変異株の検査をしている分です。

これは感染症研究所から、
なるべく変異株の検査をして下さい、
というお願いというか依頼が来ているのですね。
ただ、それは義務ではないし、命令でもないので、
個々の検査会社は「やれる分だけ仕方なくやっている」
というのが実際なのです。
検査会社によって、
真面目なところは全例に近く検査をしているようですし、
不真面目というか儲け主義のところは、
あまり検査はしていないのです。

検査は主にN501Yのみが行われているようで、
遺伝子解析までは勿論やってはいないのです。

こうした検査会社での検査は、
依頼した僕達のような医療機関の指示とは、
全く無関係に行われています。
その結果は依頼した医療機関には直接開示はされず、
時には実施されたかどうかさえ説明はされません。
そして、全て感染症研究所に報告され、
感染症研究所がとりまとめた上で、
保健所に改めて報告されるという段取りです。

711例中322例の検査がされているとすれば、
これは半数は検査をされているということになります。
そうした理解をされている方も多いかと思いますが、
それは違うのですね。
変異株検査にはタイムラグがありますし。
報告も発生数とは異なり、毎日ではないのですね。
ここ数日は毎日に近く報告されていますが、
その前は数日毎か1週間に1回程度でした。
集計がバラバラなので正確な数字は分かりませんが、
現状でも4分の1程度しか変異株の検査はされていないと思います。

しかも、問題なのは誰の検査をするのかは、
検査会社によって恣意的に選択されていて、
依頼した医療機関の意向も反映されていませんし、
逆に無作為に抽出されている、
という訳でもないということです。

要するにこの数字から、
全体としての変異株流行の広がりや頻度を、
科学的に推定することは不可能だということです。

東京の場合2月くらいには殆ど報告事例はないのですが、
これは検査をされた事例自体がとても少ないので、
その頃は本当に変異株が少なかったのか、
それとも同じくらいあったのに検査がされていないためなのか、
それも全く分からないのです。

こんな状態で本当に良いのでしょうか?

良い訳がありません。

そこで僕の現時点での提言ですが、
少なくとも行政検査を受託している検査会社は、
全ての陽性事例でもれなく変異株の検査をするべきだと思います。

これは不可能ではないのです。
検査会社によっては、
もう既に全例検査をしているからです。

それを多くの検査会社が今していないのは、
単純にそうした明確な指示がないからです。

行政検査は自費検査と比べれば遙かに高い価格で受託されています。
値引きはされず全て公費で賄われています。
一方で3000円の自費検査があるにも関わらずです。
勿論3000円できちんとした精度管理がされているとは到底思えませんから、
その価格設定は論外ですが、
今検査がシステム化され大量に行われているのに、
今の価格設定も別の意味で法外だと思います。

何が言いたいかと言えば、
行政検査を受託している検査会社は大きな利潤を出しているのです。
端的に言えば大儲けしているのです。
そうであるなら、
陽性の事例全例で変異株の検査をしても、
これはもう罰は当たらないのではないでしょうか?

いや、公共の福祉の観点から言って、
やるべきではないでしょうか?

PCR検査をもっと増やせと声高に言う人は多くいますが、
何故か変異株の検査を陽性例で全例やれ、
という声はそれほど大きくは聞こえて来ません。

しかし、実際には無症状の人に闇雲に行うRT-PCR検査より、
変異株の検査を陽性事例全例で行う方が、
今の感染状況を正確に判断し、
有効な対策に結びつけるためには、
遙かに有効な方法であると思います。

変異株に感染した患者は、
若年で持病がなくても重症化している、
というような言い方がされていますね。

しかし、そこに科学的根拠がどれだけあるのでしょうか?

メディアに登場する病院の医師は、
自分の病院の入院患者のみの経験から、
割と平気でそうした発言をされていますが、
それは敢くまで少数例の患者を診ての「感想」に過ぎない知見ですよね。

医者も科学者の端くれであるなら、
自分の経験を根拠なく一般化して、
一般の方の不安を煽るような行為は、
慎むべきではないかと個人的には考えます。

それから英国型や南アフリカ型という言い方をしないで、
N501Y変異とか、E484K変異という言い方を多用していますよね。

これも不適切な言葉の使い方のように思います。
N501Yというのは多くの変異株が持っている点変異、
と言っているに過ぎませんよね。

英国型というのは、501Y.V1(B.1.1.7)、
南アフリカ型というのは501Y.V2(B.1.351)という名称があり、
それはN501Y変異を含む複数の変異を持つ変異株のことです。
この2種類の変異株はかなり異なる性質を持っているので、
これを一括りにN501Y変異株として扱うのは、
誤解を招くもので適切なものとは思えません。
まっとうな英文の論文で、
そうした言い回しを僕は目にしたことがありません。

こうした言い方をするのは、
多くの変異株の検査がN501Yのみを検出しているためで、
厚労省の資料などを読めば、
勿論正しいことが書かれているのですが、
一般に報道されている情報などをみると、
「N501Y」という独立の変異株があるように誤解されていて、
この点は解析の方法論にも問題はありそうです。

変異株の知見は、
それほどの裏付けがないまま1人歩きしているという感があり、
これは日本国内に限りませんが、
行政の責任者や政治家は、
感染の急拡大を、
自分の施策の責任ではなく、
「変異株が悪いのだ」という言い方で、
責任転嫁の道具にしているように感じます。

そうした言説を許さないためにも、
もっと正確なデータと知見を元に、
変異株の意味と対策が、
より科学的になされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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変異株検査の不透明さを憤る [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

今日は最近驚いて憤ったことを話します。

クリニックでは発熱外来を行なっていて、
RT-PCR検査については大手の検査会社に検査を依頼しています。

以前も話題にしたように、
最初は結果が出るのに2日以上掛かり、
もっと早く結果を出して欲しいと言うと、
PCRの検査機器を変えることにより、
より迅速に結果を出すことが可能だと言われました。

精度に問題はないのかと聞くと、
それについては問題はない、という話だったので、
それなら早く結果の出る機器で検査をして欲しい、
という話をして、
そうした対応が取られることになりました。

ただ、実際にはそれほど結果が早く出るようになった訳ではありません。
翌日には結果のファックスが届くようになりましたが、
それは検査機器にはよらなかったようです。
2021年の3月以降は、
検査翌日の午後2時くらいに結果が届くようになったのですが、
それはどうやら検体数が少なかったからのようで、
検体数が多かったり検査でトラブルがあると、
翌日の夜になってしまうようなこともありました。

最近問題になっているのは勿論変異株です。

当初は一部の研究施設や大学病院、
感染症研究所でしか検査が出来なかったので、
検査会社から検体提出の指示があり、
それを感染症研究所に持ち込んで、
遺伝子解析が行われる、
というような段取りであったようです。

それが最近になって、
多くの検査会社でも、
おそらく多くはN501Yのみの検出だと思うのですが、
検査が可能になり、
陽性の事例においては、
全例で変異株の検査も同時に行われるようになりました。

その話を聞いたので、
数日前にクリニックで契約している大手の検査会社の、
営業担当の方に質問をしました。

変異株の検査はしているのですか、と聞くと、
疫学調査として感染症研究所から依頼があり、
自社で検査を行なっている、という答えでした。
陽性者は最近も複数出ているのですが、
変異株かどうかという点については、
一度も検査会社から連絡が来たことはありませんし、
それが結果報告書に記載されていた、
ということもありません。
それで、
「うちの出した検査でも変異株が検出されたことはあるのですか?」
と聞くと、
クリニックの検査を行なっている機器は、
変異株の検査に対応していないので、
今のところ検査はしていません、
という驚くような答えが返って来ました。

つまり、
その検査会社では2つの機器を用いてRT-PCR検査をしていて、
その一方は簡単に対応出来るので、
もう全例で変異株の検査をしているけれど、
クリニックが早く結果が出て精度は変わらない、
という触れ込みで選択した機器については、
対応が難しいので一切検査はしていない、
ということなのです。

仮にそうであるとしたら、
同じように検査をしているにも関わらず、
ある患者さんでは変異株の検査がされ、
別の患者さんでは、
他の条件は全く同じであるにも関わらず、
変異株の検査はされない、ということになります。

そんな不公平があって良いのでしょうか?

そもそも採用している機器の1つでは、
変異株の検査が出来ないのであれば、
それが分かった時点で、
こちらに説明するべきではないでしょうか?
「今使っている機器では変異株の検査が出来ないので、
どうしますか?」
という説明が当然あってしかるべきではないでしょうか?

しかし、実際にはそんな説明は何もなく、
何1つ事前には知らされてはいないのです。

理不尽なことはこれだけではありません。

今後は変異株の検査をして、
その結果を教えてくれますか、と検査会社に聞くと、
「直接医療機関に通知することは認められていません」
という返事です。

クリニックが依頼して行った検査です。
RT-PCR検査をして陽性であったので、
それで付随して行う検査が変異株の検査である筈です。

にもかかわらず、
その結果は依頼した医療機関に直接伝えてはいけない、
と言うのです。

一体誰が何の権限があってそんな決まりを作っているのでしょうか?

それは国立感染症研究所の指示だ、
という答えでした。

これは伝聞ですので正確ではないかも知れませんが、
少なくとも検査会社の担当者と、
別の検査会社の担当者も同じ答えでした。

感染症研究所の指示により、
検査会社は陽性の検体に対して、
変異株の検査を追加で行なっているのですが、
その結果は直接医療機関に伝えることはせず、
感染症研究所にのみ連絡せよ、
という指示なのです。
感染症研究所はその結果を取りまとめて、
今度は市町村や保健所に結果を流しているのです。
保健所で変異株として処理された後、
今度は保健所から医療機関に通知される、
という段取りであるようです。

これはね、
まだ疫学研究の段階であったり、
抽出して調査をしている、
という段階であれば理解は出来るのですね。

ただ、理解はしても納得は出来ないですね。

あまりに医療機関を馬鹿にしているでしょ。

患者さんの検査に関わる情報というのは、
第一に主治医に報告されるべき事項でしょ。
それを「するな」と言っているんですね。

それはあまりにひどいのじゃないかしら。

しかもね、今は疫学調査の段階ではないでしょ。
もう変異株がまん延していて、
その対策が行われている状況ですよね。
変異株かそうでないかで、
臨床上の対応も変わる事態ですよね。

クリニックがお願いしている検査会社は、
大手の行政検査受託機関であるにもかかわらず、
一部の検査機器でしか変異株の検査はせず、
そのことも聞かれないと教えてもくれない、
という論外の対応ですが、
多くのまっとうな検査会社は、
陽性検体の多くで、
変異株の検査もしているのが実際なんですね。

その今日に至ってなお、
検査結果はすぐには主治医に教えるな、
という対応はこれはあまりにひどいのではないでしょうか?
人外の仕業とでも言うべき蛮行ではないかしら。

まとめるとこういうことです。

皆さんは変異株の検査というものが、
系統的に行われていると思われるかも知れませんが、
実際にはそんなことはなくて、
検査機関によって、
かなり恣意的に検査がされたり、
されなかったりしているのです。
実際に検査がされているのは一部の検体に過ぎないのですが、
検査がされないと「通常株」と同じ対応がされ、
それを誰も疑いません。
そんな状態ですから、
変異株の患者を隔離するとかしないとか、
真面目に議論をする先生がいますが、
それはもうナンセンスの極みなのです。

行政検査をしている検査会社に限れば、
もう全例で変異株の検査は出来る体制なんですよ。
だからそれを義務づければいいのに、
現状はそうしていないんですね。
だから、利潤追求の民間の会社は、
全例での検査はしていないのです。
恣意的な対応を許している現状では、
変異株の広がりの実態など分からないのです。

また、医療機関で検査をすれば、
変異の情報は医療機関に伝えられるのかと言うと、
そうではなくて、
感染症研究所がその情報は一手に握っていて、
医療機関にすぐに情報を流すことを禁じているのです。

末端の医療機関もね、
非力なことは承知の上で、
精一杯頑張っているのですよ。
それでこの仕打ちはないのじゃないかなあ。

今日は少し落ち着いていますが、
昨日はかなり自暴自棄になってしまいました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2021年4月14日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日は新型コロナウイルス感染症の、
クリニック周辺での状況です。

2021年の2月と3月は、
クリニックの発熱外来のRT-PCR検査でも、
殆ど陽性者はいない、という状態が続きましたが、
4月に入ってからは明らかに増加傾向が認められ、
毎日数名の陽性者がコンスタントに認められる、
という状況が続いています。

最近の傾向としては、
症状は咳込みが多く、
会食はおろか、仕事もリモートで、
買い物以外は殆ど家から出ない、
というような人でも、
感染が確認される、
というようなケースが、
しばしば認められるようになっています。

市中感染が広がるようになると、
こうした状況になるのだなあと、
そんな思いもあるのですが、
もう症状からは全く普通の風邪と新型コロナの見分けは付かない、
というのが臨床医としての実感です。

感染者はまた増えていますが、
保健所の体制や対応は、
第1波から3波の時のような、
力の入ったものではなくなっています。

以前は本当に朝早くから夜遅くまで、
連絡をすれば発生届は受け取ってくれて、
相談にも乗ってくれたのですね。

それが数日前にショックを受けたのですが、
午前8時前に患者さんに陽性の連絡をして、
それから午前8時10分にいつも連絡している電話に、
発生の連絡を入れたのですが、
電話に出たのが担当の課長さんで、
開口一番、
「まだ就業時間前です」と一方的に宣言されると、
こちらの事情も聴かずに、
向こうから電話を切ってしまわれました。

こんな対応は初めてであったので、
医療現場と保健所の温度差というのか、
トップがそのような事務的な対応で、
他人の話に聞く耳を持たないという態度に、
とてもショックを受けて力が抜けました。

勿論就業時間以降でもう一度連絡を入れて、
詳細を説明しました。
その時は部下の方が電話に出たので、
とても真摯な対応でした。

なんだかなあ、という感じです。

それからこんなこともありました。

先日濃厚接触者に認定された、
という男性が受診をされて、
お話しを聞くと特に症状はなく、
感染者に接触したのは2日前というお話しであったので、
RT-PCR検査をするのであれば、
接触から5から7日目くらいが最も適切で、
今慌てて検査をするよりも、
数日待って検査をした方がいい、
という話を結構念を入れてしました。

その時は分かって頂いたと思ったのです。
それで、3日後に検査の予約をしてお帰り頂いたのですが、
それから1時間もしないうちに電話があって、
「ともかく今日検査をさせろ」
と矢の催促です。
「それでは感染しているかどうか、本当の意味では分かりませんよ」
ともう一度そう説明しましたが、
聞き入れることもなく、
その日結局検査をすることになりました。
結果は陰性で、
本人は「そうか、そうか」と大喜びです。
「まだ分かりませんよ」というお話しはしましたが、
内心はもう、
検査が陰性だから感染していない、
と思い込んでいることは明らかで、
無力感を覚えつつその日の仕事を終えました。

こうしたことを沢山経験すると、
人間は結局信じたいことしか信じず、
自分が結論を決めている時には、
何を言っても無駄な生き物なのだ、
という考えに至るので、
勿論仕事ですから説明はするのですが、
無益な説得はしないようにしています。

ワクチンはようやく5月中旬から、
僕達のような末端の医療者の接種が開始されることが決まりました。
同時期から高齢者の集団接種も始まり、
その手伝いにも行く予定です。

全てが遅々として進みませんが、
まあこんな社会で物事が早く進む筈もありませんよね。

あせらず、出来ることを積み重ねるしかないのだと、
半ば達観しつつ日々を送っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2021年3月17日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業面談で都内を廻る予定です。

今日は新型コロナウイルス感染症の現況です。

今年の2月以降はRT-PCR検査の件数はガクッと減りました。
陽性者も2月は2名のみで、
今月も今のところ2名のみです。
陽性者はいずれも濃厚接触者で症状は非常に軽症です。
症状からの判断はほぼほぼ無理、
というような事例ですね。
東京の救急病院の医師に話を聞いても、
重症の入院事例は殆どないという状況であるようです。

ただ、その一方で東京の感染者数は、
1日300名を切らない状態が続いています。

感覚としては、
「一体どこで感染しているの?」
と言う感じなのですが、
気を付けている人はもう充分気を付けているでしょうし、
ここから更に減らすとすれば、
もう人の流れを物理的に止めるしかない、
ということになるのだと思います。

人の流れが増えていること自体は間違いがなく、
東京のような大都市に関しては、
感染を完全に抑え込むには、
人の流れ自体を止めないと無理なのが、
残念ながら実際であるようです。

重症者も減っていますし、
医療体制自体は余裕がある状態だと思います。

ただ、これで緊急事態宣言を解除するでしょ。
誰でも想定出来ることですが、
すぐに感染者は1000人や2000人にはなりますよね。
気を付けている人がどんなに気を付けていても、
一定数の「飲み屋やカラオケでどんちゃん騒ぎ」という人は、
これはもういなくなることはないので、
人の流れが解除によって増えれば、
それだけで感染者数が増加するのは自明の理です。

でも打つ手なしという感じですね。

リバウンド防止の対策と言うと、
結局医療体制の強化と検査数の増加、
みたいなことになるでしょ。

でも、今は患者が少ないのに医療体制を強化しても、
それこそ全て公費で賄うのでなければ、
医療機関が赤字になるだけですよね。
ただ、行政は繰り返しそうした言い方をするので、
一般の方は、
「何で1年前から医療体制の強化をしろ、と言っているのに、改善されないんだ。患者が1000人でも300人でも、同じように大変、というのはおかしいじゃないか」
と思われると思いますし、
それに簡単に反論できないのが難しいところです。

一般の方のイメージとしては、
感染拡大を見据えて、
たとえば1000人入院出来るような施設を、
最初から確保しておけ、
ということだと思うのですね。

でも、設備だけでは駄目で、
人員もそれだけ確保しないと駄目でしょ。
それを1000人になることを予想して、
300人のうちに用意しておくというのは、
現実的ではないと思います。

検査についてはね、
たとえば嘱託医をしている特別養護老人ホームがあるのですが、
今月の初めに、
職員全員のRT-PCR検査が実施されたのですね。
結果は全員陰性だったのですが、
今のところ今回1回きりなのですね。

こうした計画性のないことをしても、
それで老人ホームの集団感染の予防にはならないですよね。
無症状の人に1回だけ検査をしても、
これはもう暗闇に闇雲に鉄砲を撃ち込むようなもので、
全く効率的ではないからです。
これね、行政検査ではなくて、
委託事業として自費検査をしているPCRセンターが請け負っているんですね。
本人確認もない郵送検査で、
陽性になったら、個別に医療機関を受診して下さい、
ということなんですね。
これじゃ、行政が自費検査のセンターに、
儲けさせているだけ、のように思えてなりません。

ワクチンも色々事情はあるのでしょうが、
遅々として進まない感じですよね。

国立病院機構とか、そうしたところの接種は、
行なわれてはいるんですね。

でも、たとえば品川区でも、
まだ通常の医療従事者の接種も、
アンケートで人数確認をしただけで止まっているんですよ。
「都の方針が出ていない」というのがその理由の1つらしいのですが、
何で方針が出ないものやら、
話を聞いても訳が分かりません。

少なくとも僕も接種は出来ていません。

人の流れを減らす以外の方策としてはね、
病院や高齢者施設のクラスターを阻止するために、
そこの職員のワクチン接種は急ぐ必要がありますよね。
それだけやればかなり違う可能性はあると思うのですが、
現実にはまだそこまで行っていません。

ある程度医療従事者や高齢者施設の職員、入所者に、
ワクチンが行き渡ってから、
人の流れを緩和するというのが、
筋ではあると思うのですが、
そこまで待っていられないから21日で解除する、
というのが既定方針であるようです。

そんな訳でまだ先行きは多難と思われますが、
感染防御に留意しつつ、
今後も自分に出来ることを日々こなしながら、
「多くの医者は楽をしている」と言われないように、
気を引き締めて診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2021年2月1日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日はいつもの新型コロナウイルス感染症の話です。

クリニックのある品川区においても、
新型コロナウイルスの市中感染が減少していることは、
トレンドとしてはほぼ間違いがないようです。

ただ、おそらく2月中は緊急事態宣言は延長されるでしょうが、
それで一定レベル患者数が減少しても、
解除になればまたすぐに増えることはもう、
火を見るより明らかなことですから、
現行の対策を継続している限り、
そのイタチごっこからすぐに解放されることはないようです。

現状市中感染の拡大から、
多くの高齢者施設や医療機関でクラスターが起こっていて、
こちらが収束するにはもう少し時間は掛かることになりそうです。

それでは幾つかクリニック周辺の話題から、
「今」を見てゆきたいと思います。

➀濃厚接触の調査を縮小、の意味について
クリニックへは1月27日くらいに、
品川区保健所から封書が届いていて、
そこには、「COVID-19行政検査の対象について」という題名がありました。

内容は煎じ詰めれば、
これまで保健所が認定していた濃厚接触者認定の業務を、
一時的に医療機関や検査機関などに移管する、
という趣旨のものです。

1月22日には下記のような報道がありました。

東京都、濃厚接触の調査を縮小 保健所が逼迫、高齢者らを重点 2021年1月22日 22時04分 (共同通信)  東京都は22日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、濃厚接触者などを調べる「積極的疫学調査」の規模を縮小する方針を都内の各保健所に通知した。高齢者など重症化リスクが高い人との関わりを重点的に調査し、全体の規模を縮小。逼迫する保健所の負担を軽減させ、効率的な入院や療養先の調整につなげる狙い。  都によると、調査は医療機関や高齢者施設、障害者施設などが中心となる。飲食店や職場、学校などでの感染は原則として詳しく調べず、各保健所が状況に応じて判断するとしている。

これだけ読んでも何を言っているのかよく分かりませんよね。

少し説明を追加したいと思います。

医療機関から新型コロナウイルス患者の発生届けが出されますよね。
そうすると、保健所は感染の拡大を抑止する目的で、
感染のリスクが高いと想定される「濃厚接触者」を認定し、
14日間の経過観察を指示するとともに、
適宜遺伝子検査の施行を検査センターや医療機関に依頼します。

この場合濃厚接触者の認定は、
保健所によって行われます。

つまり、僕が患者さんの診察をして、
この人は濃厚接触者として検査をしても良いのではないか、
と思っても、
保健所の認定がなければ、
保険を利用しての行政検査の対象にはならない、
自費でなければ検査は出来ない、
ということになるのです。

これが今までのあり方です。

それが年末年始に感染者が急増し、
保健所の業務が逼迫します。

そうなると、
とても全ての事例で濃厚接触者の認定をする、
というような作業が出来なくなるので、
クラスターの発生しているような施設や病院については、
重点的に認定し調査しますが、
一般の住民の市中感染の様なケースでは、
家族くらいは濃厚接触者として認定しますが、
それ以外で職場やプライベートでの接触については、
個々の僕達のような末端の医療機関に任せます、
というのが1月22日の通達の主な意味合いです。

ややこしいのはですね、
都の通達は細かいことを決めている訳ではなく、
大筋の方針を決めているだけで、
どのような範囲で保健所が濃厚接触者の認定をするかは、
個々の地区の保健所がそれぞれに決めなさい、
ということを言っているんですね。

従って、それが地区の保健所に下りて来て、
そこでまた議論をして、
それが品川区の場合には、
1月24日と25日付の通知になって、
27日にクリニックに送られて来た、
というのが最初にお話した封書の正体なのです。

従って、今の状況としては、
保健所が認定していない濃厚接触者は、
個々の医療機関の責任で決定して、
行政検査を行って良いのですね。

ただ、
多分この内容はまだしっかりと周知されていないので、
医療機関によっては、
「濃厚接触者は保健所が認定しないと検査は出来ません」
という回答をしてしまうところもあると思いますし、
一般の方も、
「感染者と会食はしたけれど、保健所からは何も連絡はないので、
検査をする必要はなさそうだ」
というような理解をしてしまいがちだと思います。

保健所の判断を待つと共に、
心配であれば行政検査に対応している医療機関に相談する、
というのが現状の正しいあり方であると思います。

②職場復帰目的の遺伝子検査の弊害について
最近経験した事例をご紹介します。
事実を元にしていますが、
守秘義務及び患者の特定を避ける観点から、
細部は事実を変えて記載している部分があることをご了承下さい。

Aさんは30代の会社員で発熱と頭痛で発症。
同日発熱外来を経由してクリニックを受診し、
唾液のRT-PCR検査を施行。
新型コロナウイルス感染症と診断して保健所に届け出をしました。
数日の自宅待機の後に宿泊療養に移行。
発症から10日で隔離期間は終了となりました。

これで職場復帰して何ら問題はなかったのですが、
会社からは規定によって再度RT-PCR検査を受けるように、
という指示が出ます。

それで会社指定の自費検査を受けると、
結果は「感染している疑いがあります」という結果が出ます。

それを会社の産業医をしているクリニックに相談すると、
「これは再び陽性が確認されたのだから、もう一度保健所に届け出をだすべきだ」
と言われ、もう一度保健所に届けが出されたのです。

クリニックに本人から連絡があり、
「この場合また10日間隔離になるんでしょうか?」
と聞かれました。

皆さんはどうお考えになりますか?

勿論そんなことはないのです。

新型コロナウイルス感染症の隔離期間というのは、
敢くまで周囲に感染する可能性のある期間、
ということなので、
隔離期間が終わった後も、
遺伝子検査自体は陽性になる可能性があるのです。

感染拡大の当初は、
そのことがまだ分かっていなかったので、
退院の条件に2回の遺伝子検査をして陰性、
ということを決めていたのですが、
今はそれがナンセンスであることが分かったので、
一定期間が過ぎて症状が改善していれば、
それでOKというように改められたのですね。

Aさんはもう周囲に感染を拡大するリスクはないので、
遺伝子検査が陽性であろうが陰性であろうが、
それが就労に影響することはないのです。
従ってすること自体が無意味なので、
やらないのが正しい判断なのですが、
特に大手企業などの一部で、
以前の退院基準と同じ2回の遺伝子検査を義務化するような、
そうした決まりを作っているところがあるので、
こうしたトラブルが起こるのです。

それで、Aさんには心配は要らないし隔離も不要と説明し、
保健所にも連絡をして、
届け出は出されてしまったけれど、
意味のないものなので然るべく対処してほしい、
というようにお話をしました。

結果として、
無駄な検査で自費検査の会社が潤い、
保健所にも無駄な業務が追加されただけに終わりました。

勿論過剰防衛のような企業の規定が悪いのですが、
退院基準や隔離終了の基準などが頻繁に変更され、
それがしっかりと周知されていない、
という点にも問題があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年1月18日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はまた新型コロナウイルス関連の現状についての話です。

➀RT-PCR検査が危ない!
先日RT-PCR検査を委託している検査会社の方から、
ショッキングな話を聞きました。

検査に必須の消耗品である、
検体を分注するチップや、
並べるプレートなどが不足しており、
もう既に枯渇してしまって検査の受注を中止している検査センタ-が、
複数あると言うのです。

委託している大手の検査会社では、
どうにか消耗品をかき集めて対応しているのですが、
1月中はどうにか目途が立っているものの、
2月以降の検査が出来るかどうかは、
まだ全く分からないということでした。

消耗品についてはほぼ100%が輸入品であるため、
渡航制限がより厳格化されている現在、
その入手はより困難になっているらしいのです。

同時期に厚労省と都の方からのメール調査があり、
5日程度の期間しかないという非常に余裕のないものでしたが、
委託ではなく自前で可能な、
抗原検査などの件数を報告するように、
というものでした。

これはそうは言わないものの、
RT-PCR検査が早晩実施困難になることを見越して、
対策としての調査であるように思いました。

そんな状況にも関わらず、
数十万人の住民に無作為に検査をする、
というような報道もあり、
それは無尽蔵に検査が可能であれば良いのかも知れませんが、
実際には本当に必要な検査が、
ギリギリの状態で行われていて、
消耗品の枯渇により検査不能になるかも知れない、
という現実があるのです。

皆さんも是非、そのことも頭においた上で、
検査数や住民検査の議論を見るようにして下さい。

②75歳以上の医療は現実壊滅している!
ある都内の救急病院の医師から聞いた話ですが、
その病院ではもうかなり前の時期から、
75歳以上の新型コロナ感染症の重症患者については、
一切挿管はせず、人工呼吸器管理も行っていない、
ということです。

これは臨床的に75歳以上の患者の予後は明らかに悪く、
呼吸器を付けるとその離脱は非常に困難で、
気管切開に至ることが多く、
何とか離脱が出来ても後遺症が残ることが殆ど、
という知見が元になっているようです。

40代から60代くらいまでのお元気な患者さんでは、
積極的に治療が行われて呼吸器管理もするのですが、
75歳以上ではそうした治療は最初から行っていないのです。

極端な言い方をすれば、
75歳以上の患者さんは入院しても自然経過をみているだけで、
積極的な治療は行っていないのです。

これは全ての病院が同じという意味ではありません。
病院により方針には違いがあり、地域性もあるとは思います。
積極的に高齢者の高度医療を行っている医療機関もあるでしょう。
しかし、積極的に行っても、
それほどの予後の改善には結び付いていないということは事実で、
75歳以上に積極的治療はしない、
という方針の病院が増えていることもまた、
事実と考えて良いと思います。

これも先日聞いた話ですが、
ある近隣のグループホーム(高齢者施設)で、
新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生したのですが、
嘱託医は「自分には関係ない」と一切の関与を拒否し、
入所者の入院は全て病院から拒否されたので、
患者をそのまま施設の看護師が、
自宅療養として診ているのが現状であるとのことでした。
施設長はストレスから体調を崩してしまいました。

この話だけを聞くと、
「何故早く入院させてあげないんだ」と思うところですが、
実際には入院をしても75歳以上の場合には、
積極的治療は行われないので、
さほど状況は変わらないのが実状なのです。

問題は従って75歳以上の感染を予防する、
ということ以外に正解はなく、
現状の治療水準で入院ベッドのみを増やしても、
高齢の患者さんの予後改善には、
結び付かないというのが実際なのです。

高齢者の命を守るためにはしたがって、
重症の事例を診られる病床を増やしてもあまり意味はなく、
高齢者のいる家族の1人が感染した時に、
その患者さんを速やかに隔離出来る、
という体制こそが必要なのです。
軽傷者を隔離出来る宿泊料用施設を増やすことの方が、
そのためには遙かに重要なことなのです。

今日は新型コロナウイルス感染症の現在についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年1月14日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はいつもの感染症情報です。

2020年12月は104例の新型コロナウイルスの遺伝子検査を行い、
陽性者は25名でした。
ほぼ4人に1人が陽性という頻度です。

無症状感染者や味覚嗅覚障害のみと言った、
軽症者が多いのですが、
少数ですが高熱が続いていたり、
強い全身倦怠感や息苦しさを訴える事例もありました。
ただ、入院や宿泊療養となったのは5例のみで、
それも月の前半に集中していました。
月の後半についてはその全てが最初から自宅療養か、
受け入れ先のない自宅待機のまま、
回復まで結果的にそのまま自宅で過ごした、
というケースでした。

70代の男性で癌の治療中という方がいて、
発熱と全身倦怠感で発症。
感染者との接触は不明でしたが、
お店をしているということもあり、
職場や商店街などでの人間関係の中で感染したと推測されました。
現状肺炎や低酸素血症を疑わせるような所見はないのですが、
明らかに高リスクではありますよね。
12月の前半までなら入院か、
少なくとも宿泊療養にはなった事例なのですが、
高リスクで届け出をしたのですが都の審査では却下となり、
高齢の妻との2人暮らしで自宅療養となってしまいました。

届けを出してから6日後に保健所から依頼があって、
胸部レントゲンの撮影依頼であったので、
自宅待機の患者さんに、
他の患者さんがいない時間帯(休憩時間中)に受診をして頂いて、
胸部レントゲンを撮影して、
その後消毒に掛かりました。
レントゲン上は異常はありませんでした。

保健所の方にお聞きすると、
12月の初旬までは症状があって高リスクであれば、
入院治療の適応として問題はなかったのですが、
12月中旬以降は病床の不足が深刻化しているので、
「重症であることが客観的な指標により確認」されないと、
入院適応ではない、という判断になっているようです。

宿泊療養については慢性的に空きがない状態ですから、
結果として明らかな重症、という以外の方は、
殆どの方が実際には家で経過をみている、
というのが実際なのです。

現状一番の問題は、
軽症の方であっても、
発症1週間くらいの時点で呼吸困難を来すなど、
重症化するケースがあることで、
パルスオキシメーターを郵送して、
自宅でその数値をチェックして報告する、
というような対応は行われてはいるものの、
1日に1から2回程度の保健所からの電話連絡だけで、
その重症化の兆候をいち早く発見する、
というのは事実上不可能です。

少し前までは、
症状が悪化時にはすぐに病院受診、
という流れがあったのですが、
現状は病院は手一杯で即日の入院は困難、
という状況があるので、
「重症かどうかも分からないのに、
本人の症状だけで来られては困る」
という意識が強く、
簡単に受診することは難しいのです。

更には病院受診には専用の車を用意しなければならず、
そちらの手配もすくには困難、
という事情もあります。

現状自宅療養をバックアップする仕組みがない以上、
僕のようなクリニックの医者が、
そのサポートをするしかないと、
最近は考えるようになっています。

そのために、
少し前まではクリニックの仕事は、
患者さんを診断して保健所に連絡する、
という時点でほぼ終わり、という認識であったのですが、
現在では必ず検査陽性を伝える時には、
「何かあればクリニックに連絡して下さい」
とお話するようにしています。

保健所からも検査の依頼と共に、
自宅療養中の患者の症状悪化時に、
「レントゲンを撮って肺炎の有無を確認して欲しい」
という依頼が多くなっています。

ただ、検査であれば導線を完全にわけて、
通常の診療と同時に施行することも可能ですが、
レントゲンは新型コロナの患者さん専用にする、
という訳には行きませんから、
診療終了後などにするしかありません。
その後の除菌消毒もしなくてはいけませんし、
小規模のクリニックにとってはかなりハードルが高いのです。

本来はレントゲンで分かる肺炎は結構進行した状態であることが多く、
新型コロナの肺炎の初期像は、
CTでないと確認は困難です。

今後こうした状態が続くのであれば、
日本は小規模の病院レベルでも、
CTの普及率は非常に高く、
クリニックでも健診主体の施設や科によっては、
CTが常備されていますから、
そうした市囲のCTを、
適宜活用出来るような体制作りも必要なのではないかと思います。

個人的な見解としては、
現状の感染拡大は自宅療養の急速な拡大に伴う、
家族内や施設内の二次感染による部分が大きく、
本来は自宅療養での感染対策のサポート体制や、
宿泊療養施設の拡充が、
入院施設の確保と同じくらい重要であった訳ですが、
それがなされないまま感染拡大に至ってしまった現在では、
僕達のような医療機関がその下支えをして、
効果的な施策により感染自体の押さえ込みが、
どうにか成功するまでを、
耐え抜くしかないような気がします。

粘り強く、
今出来ることを探して、
少しでも感染収束に繋げられれば、
それ以上はないという気持ちで、
日々の診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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新型コロナ検査結果取り違え事件顛末 [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日は仕事の話です。

あってはならないことですが、
COVID-19のRT-PCR検査で結果の送信ミスがあり、
一昨日から昨日に掛けてはドタバタが続きました。

その経緯を今日はお話します。

以下の内容は基本的に事実ですが、
特定の個人や集団を非難したり攻撃するような意図ではありませんので、
その点はご理解の上お読み下さい。

クリニックでは主に大手の検査会社に、
新型コロナウイルスの遺伝子検査を依頼しています。

集配は1日に一度で、
3重に包装して検体が回収され、
翌日の夕方以降で、
クリニックに検査結果のファックスが送られて来る、
という段取りです。
以前は原則対面で結果をご説明する方針としていましたが、
遠方の方も検査に受診されることが増えたことと、
隔離して診察するスペースの管理の問題から、
現在は結果は電話でお伝えする方針としています。

1月9日の土曜日にもいつも通りに検査を行いました。
午前中の検査の時点では、
通常通り「明日のうちには電話でご連絡します」
とお話をしていましたが、
「待てよ、連休で通常通りの対応が取れるのかしら?」
と不安になりました。

1月3日の検査をした際に、
当然4日の夜には結果が来るものと思って待っていると、
幾ら待っても届かず、
問い合わせをして初めて、
その日はファックス送信が出来ない、
という事情を聞いた、ということがあったからです。

それで検査会社に問い合わせをすると、
「結果が届くのは早くて11日。遅いと12日になるかも知れない」
というビックリするような返事です。

法定の電源設備の1年に一度の点検があり、
それを1月10日に施行予定としているので、
ファックス送信の機能が停止してしまう、
というのです。

腹立たしいのはその点についての事前連絡が、
当日になるまで全くなかったことです。
事前に連絡があれば、その日の検査をなるべく減らしたり、
保健所依頼の緊急事案は他に廻してもらう、
というような対応は出来ましたし、
患者さんにもそのように説明出来たのですが、
もう後の祭りという感じです。

それでどうにか結果だけでも10日のうちに知らせてもらえないか、
というように担当者に掛け合うと、
電話で10日の夕方以降に口頭で連絡することは出来ます、
という返事でした。

10日は日曜日ですが、
レセプト作業がまだ終わっておらず、
1日突貫で仕事をする予定だったので、
それでも良いかと思ったのです。

10日の夜に約束通り電話が来ました。
9日は午前午後含めて11名の患者さん(生後2ヶ月から67歳まで)の検査をして、
そのうちの4名が陽性とのことでした。
電話でその4名の方の名前を教えてもらい、
それから電話を掛け始めました。

まず陰性の人からと思い、
最初の女性に電話を掛けました。
濃厚接触者で10日くらい前から軽い感冒症状があり、
数日前から味覚嗅覚障害が発生した、という事例です。
診察の時点でほぼほぼ感染しているな、という感触があり、
仮に発症から10日とすると、
唾液の検査はもう厳しいと判断して鼻咽頭から検体を採取しました。
それが陰性なので、おや、という感じがしました。
お聞きするとその日も症状は続いている、
というお話です。
これはタイミングで陰性になっただけかも知れないと思い、
12日にもう一度連絡をして、
経過を確認する方針としました。

次の事例も濃厚接触者の女性で、
2人暮らしのパートナーの感染です。
こちらもほぼ無症状で味覚嗅覚障害で発症し、
発症から間もないという事例です。
これもね、経験的にはほぼ間違いなく陽性、
というような感触の事例です。
にも関わらず結果は陰性でした。

おかしいな、と感じました。

濃厚接触者で急性の味覚嗅覚障害でしょ。
それが2例続けて陰性、というのは、
あまりこれまでになかったことです。

先刻の電話で伝えられた結果は、
本当に正しいのだろうか、という疑問を感じました。

それでもう一度検査会社の担当者の携帯に連絡しました。
「夜分遅く申し訳ないのだけれど、
さっきの結果は本当に間違いないのだろうか?
ひょっとして陰性と陽性が逆、ということはないよね?」
と聞くと、
手元にはエクセルに記載されたデータの一部があり、
陽性は黄色で印字されているので、
その名前には間違いはない、という返事です。

そうか、それなら…と思い、
電話を掛け続けました。

陽性であった事例の1人は10歳の小学生で、
前日からの高熱と寒気のケースでした。
診察時には寝ていないとつらい、というような状態です。
ただ、咽頭所見は典型的ではなく、
周辺での感染事例もなし。
学校や家庭でも他に感染症状のある人はいません。

電話をして状態をお母さんにお聞きすると、
「今日はもう熱も下がってけろっとしています」
という返事です。

これも「おやっ」と思いました。

新型コロナで夜だけの発熱が続いたり、
熱の変動の大きな事例は結構あるのですね。
咽頭所見としては、
扁桃の腫大やリンパ濾胞の腫脹は目立たず、
咽頭後壁のみ真っ赤になっている、
というのが比較的特徴的な所見です。

1日のみの子供の高熱で、
翌日にはけろっとしているというのは、
新型コロナではない子供の風邪に、
その時比較的特徴的な所見でしたから、
経験的な勘というか印象としては、
「これはただの風邪」というものでした。

それでも、2度確認して結果には間違いない、と言うのですから、
これはもう信じるしかありません。
4名の感染者を含む11人全員に連絡を取り、
4名の発生届けを保健所に提出して、
電話での連絡を終えました。

翌日11日は極力家でゆっくりしたい、
という希望を持っていましたが、
結果の正式なファックスが届く筈なので、
その突き合わせだけは早くしたいと思い、
朝から検査会社に確認の電話を入れました。

すると…

問い合わせから2時間くらい経って連絡があり、
結果が間違っていた、という、
そうかも知れないな、と思いながらも、
そうあっては欲しくなかった事実が告げられました。

10日に陽性とされた4名のうち、
実際に陽性であったのは1名のみで、
他の3名は実際には陰性。
そして、味覚嗅覚障害で陰性とされた2名を含む、
別の3名が実際には陽性であった、というのです。

何故そんなあってはならないことが起こったのか、
というと、
データはエクセルで管理されていて、
通常入力後自動的にファックス送信となる場合には、
そこに人の手は加わらないのですが、
今回はファックス送信のシステムが点検で使えないので、
エクセルのデータをそのまま送信したのです。
その際検体に付けられた、営業所用の番号順に、
データを並び替えた時に、
陰性、陽性の表示の列が、
人為的ミスで並び替えられなかったので、
結果がバラバラになってしまったのです。

そんなことが起こり得るのだろうか、
と思いましたが、それが事実だったのです。

すぐにクリニックに向かい、
届いていたファックスを元にして善後策を練りました。

まず保健所に連絡をして、
10日に出した4人の発生届けのうち、
3人分を取り下げました。
そのうちの3名は既に保健所からの連絡が入っていました。
それから陽性と連絡して実際は陰性であった3名と、
陰性と連絡して実際は陽性であった3名に、
それぞれ電話をして結果を説明して謝罪し、
3名分の発生届けを再び提出しました。

検査会社の営業所の責任者と検査の責任者を呼び出し、
一緒に間違いのあった6人の自宅を廻りました。
結果の報告書を手渡しし、
同道した検査の責任者に説明と謝罪を再度してもらいました。

全て終わった時にはもう日は暮れていました。

今回の反省点としては、
矢張り重要な検査データは正式な形でもらうべきで、
イレギュラーな報告は大事なデータでは求めるべきではない、
ということです。
それから臨床の勘というものは馬鹿にするものではなく、
データが診察上の直感と明らかに乖離している時は、
データの信頼性について、
患者さんに説明して取り返しがつかなくなる前に、
しつこく検討する必要があるということです。

一歩間違えればもっと大事になりかねなかった事例であり、
今後も慎重に慎重を重ねつつ、
疲れた身体に鞭打って診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年1月4日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日までクリニックは年末年始の休診です。
明日からは通常通りの診療になります。

今日はまた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療についての話です。

昨日は午前中発熱外来でクリニックを開けましたが、
結局連絡があって受診されたのは2名のみでした。

どうも無理して三が日に診療をした割には、
あまりお役には立てなかったようです。

年末の1300人以上という数字は非常にショッキングでしたが、
その内訳は実際のところどうなのか、
地域的な偏りがどの程度あるのか、
自費検査の分がどの程度乗っかっているのか、
など、その詳細を知りたいところです。

年末年始の診療をしていてのこの閑散とした状況からは、
緊急事態宣言も間近、というようなニュースは、
どうも実感を持って感じることが出来ません。

落ち着いているようで、
一部の病院には患者さんが殺到しているのでしょうか?

仮にそうだとすれば、
軽症の方は幾らでも廻して頂いて良いのですから、
もっと効率的な診療が、
出来るような体制を何とか整備して欲しいものです。

幾つか最近印象的だった事例の話をします。
実際の事例を元にしていますが、
守秘義務及び個人の特定を避ける観点から、
敢えて事実を変えて記載している部分のあることを、
予めお断りしておきます。

1例目は近隣のあるお寺のお坊さんなのですが、
僧房で集団生活をしていたのですね。
その中の1人が持病を持っていて、
その持病のために総合病院に入院したのですが、
その病院で新型コロナウイルス感染症の院内感染が発生。
それから数日して、その人は、もう入院は続けられないと、
強制退院のような形になったのです。
その時点で発熱などの症状はなかったのですが、
退院となって2日後に発熱。
発熱外来を経由しての検査でその人の陽性が確認され、
一緒に生活していた10人以上が濃厚接触者と認定。
結果としてクリニックで検査をしたお坊さんを含めて、
5人以上がお寺で感染してしまうという、
クラスターになってしまったのです。

クリニック目線で考えると、
いきなり退院にするのではなく、
一定期間は隔離にするなど、
もう少し配慮があるべきではなかったかしら、
というようには思うのですが、
病院としてはそれどころではないですし、
ともかく感染していない(と思われる)患者さんを、
一刻も早く病院の外に出そう、
という考えが先行したのだと思います。

クリニック、家庭、保健所、病院と、
それぞれの認識に違いがあり、
それぞれに疲弊してくると、
結局は自分のところから、
自分の責任の及ぶところから、
新型コロナの患者さんを早く手放したい、
という思いが先行してしまい、
こうした事例が多くなるように思います。

ここにも患者数急拡大の1つの要因がありそうです。

2例目は知的障害のある30代の男性ですが、
37度代後半の発熱と咳、胸の痛みを主訴にして、
近隣の救急指定病院を受診。
すぐに採血とRT-PCR検査、胸部CTまで検査をしましたが、
CTで肺炎像はなくPCR検査は陰性であったので、
咳止めなどが対処療法として処方され、
経過をみる方針となりました。
ただ、ご本人も付き添いの母親も、ちょっと癖のある人で、
その診断をあまり信用せず、
今度は別の内科を再び受診し、
診察のみを受けて抗菌剤などの処方を受けました。
それから一週間が経ちましたが、
微熱は続き体調はあまり改善しません。
それでその患者さんは再び母親と一緒に、
クリニックを受診されました。
他の病院でも同じだったと思うのですが、
全く事前の連絡なく、いきなり受診をされて、
「具合が悪い。熱がある。胸が苦しい」と言われるのです。
正直困りました。
診察をお断りすることは出来ないのですが、
他の熱のない患者さんと一緒にお待たせする訳にはゆきません。
いつも別室で診察をする手はずにしているのですが、
時間で予約して調整しているので、
飛び込みでそうした方が来られると、
調整がつかなくなってしまうのです。
仕方なく一旦その2人を別室に案内し、
時間通りに来た濃厚接触者の方を、
しばらく外でお待たせすることになってしまいました。

拝見すると診察上は呼吸状態を含めて、
大きな異常はありません。
ただ、微熱は続いていて、
胸が苦しいとも言われているので、
このまま帰ってもらう、という訳にもゆきません。

これまでの経緯を考えれば、
最初に受診した救急病院で、
CTなども撮っているのですから、
そこでもう一度問題がないか確認をしてもらうのが、
適切ではないかと考えました。

それでその救急病院に連絡して、
担当した医師に相談すると、
「あの症状はメンタルなのだから、
これ以上検査をしても意味がない。
CTは月に2回撮ると保険で通らないので出来ない」
と剣もほろろの対応でした。

仕方なく午前中の患者さんが終わるのを待って、
胸部レントゲンと採血をして、
いずれも問題はなかったので、
PCR検査の再検はせず、様子をみてもらう方針としました。

勿論救急病院の初診の判断としては、
検査も異常はなかったので経過観察で良いと思うのですが、
1週間も微熱が続いていることは客観的事実なので、
勿論精神的な要因かも知れませんが、
知的障害があるから症状はメンタル、
というのは疑問ですし、
1週間前の検査が異常がなかったからと言って、
今も異常がないとは言い切れないのですから、
もう一度診療してくれても良いのではないかしら、
というのは強く思った事例でした。

いずれにしても医療機関や担当部署のいずれもが、
疲弊してほころびが出て、
連携も上手くいっていないので、
その狭間で患者さんや感染者が放置され、
その間に感染が拡大する、という悪循環が、
おそらく現状の本質ではないかという気がします。

明日からまたどのような展開が待っているかは分かりませんが、
状況を見つつ自分に出来ることを、
日々やっているより他はないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月31日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は大晦日でクリニックは休診です。

今年の締めはどうしようかと考えましたが、
矢張り新型コロナウイルス感染症の話で、
終わることにしました。

通常診療最終日の12月28日は、
15名のRT-PCR検査を施行しました。
結果は12月29日の夕方までに出る筈でしたが、
例によって遅れてしまい、
午後6時になってもファックスが届きません。
業界大手の検査会社に連絡すると、
「6時半くらいには検査が終わる予定です」
という返事だったので、
7時まで待っていましたが、
うんともすんとも、
ファックスの届く気配はありません。
その間にも、心配をされた患者さんからの電話が、
ひっきりなしに掛かって来ます。
それで再度問い合わせをすると、
「結果は出ているが、ファックスの送信に時間が掛かっている」
と言うので、
「どのくらい掛かりますか?」
と聞くと、
「1時間半以内には」
と言われたので、
呆然としました。

このところ、
翌日の3時半くらいには結果が来ることが多かったので、
少し安心して油断していたのですが、
そう甘くはなかったようです。

結局午後8時半にファックスが来て、
それから1人ずつ15名に電話で結果を説明して、
陽性であった5名については保健所に連絡をしました。
届出はプライバシーに配慮したものをファックスして、
それから担当者から電話を受けて,
その時に詳細を説明する、
という仕組みです。

そうした段取りがすべて終わったのは、
午後10 時半を廻っていました。

12月29日はクリニック自体は休診でしたが、
午後から都の要請による発熱外来を開きました。
通常の診療ではなく、
保健所や医師会からの依頼による、
発熱や新型コロナ疑いの患者さんのみ、
時間を決めて受け付けるというものです。
一般の患者さんと時間を分けて診療できるので、
効率的ではあるのですが、
毎日これをしていれば、
こちらが過労で死にます。
まあ、ギリギリのところです。

ただ、この日は近隣でも診療をしている医療機関が多く、
4人の診療とRT-PCR検査をしただけでした。
結果的には、これならやらなくても良かったかしら、
という感じでした。
医療リソースの効率的な運用というのは、
実際にはなかなか難しいものであるようです。
それでも12月30日の夜には、
検査結果を説明しないといけないので、
クリニックでその対応に当たりました。
4人のうち1名は陽性でした。
このところは、全員陰性という日はありません。

現状の大きな問題は、
医療リソースがもうギリギリのところで、
僕のような初期診療と検査をするクリニックと、
届け出を受け付けて入院などの割り振りと経過観察、
連絡などの業務を一手に引き受けている保健所、
入院患者を受け付ける病院の間の連携に綻びが出て、
互いに疲弊して不満もたまっているということです。

保健所の担当者の方から先日お聞きしたところでは、
最近入院患者を受け入れている病院からは、
本来入院の適応ではない軽症者ばかりが、
入院してしまい、
貴重なベッドが適切に運用されていない、
という怒りの声がしきりに上がっている、
ということでした。

これはね、たとえば殆ど検査のみをしているクリニックがあるでしょ。
もともと検査も郵送で唾液を送るだけで、
陽性になってもウェブ診察だけをして、
これはもう実際には診察というものではなく、
ただ、保健所に届け出をするために、
ちょっと話を聞くというだけなんですね。
保健所は電話で話を聞くだけですから、
結局誰もその患者の診察をしていないし、
客観的な情報も持っていない、
ということになるのですが、
それでもその患者さんの入院や宿泊療養の振り分けを、
保健所が電話のみでしないといけない、
というのが非常な問題で、
冷静に考えれば、そんなの無理なんですよね。

実際にそれで起こっていることは何かと言えば、
軽症で何の問題もない患者さんが、
テレビで急死した代議士のニュースなどを見て、
「こりゃ入院させてもらわないと大変だ」
というように思うんですね。
そう思えば胸も苦しいような気分になるでしょ。
それで保健所の電話に、
「胸が苦しくなって来た。早く入院させてくれ!」
と騒げば、入院にするしかないですよね。
それで送迎車を用意して入院となると、
本人は何の症状もなくケロッとしている、
ということが沢山起こっているのです。

これはね、簡単に解決出来る問題ではないんですね。

今年の春ぐらいの時には、
入院を受け持つ病院が、
患者さんの初期診療と振り分けも引き受けていたので、
疑いのある患者さんをクリニックから紹介するでしょ、
受診するとすぐにRT-PCR検査も胸部CTも採血も、
もうすぐにセットでやるんですね。
やや過剰検査と思われなくもありませんが、
それである程度患者さんの状態は判断出来るので、
最初期は陽性であればすべて入院ですし、
その後は入院か宿泊療養の2択ですよね。
とてもクリアなんですよ。

ただ、それがもう今は駄目なんですね。
入院は重症化しているか、
そのリスクの高い患者さんのみにしないと、
貴重な入院ベッドがすぐに枯渇するでしょ。
多くの患者さんでその選別を、
ほぼ電話の聞き取りだけでしないといけない、
というのが現状なんですね。

医療に対して悪意のある一般の方は、
「すべてのクリニックで患者を診れば、
それで解決じゃないか、医者がもっと働けばいいんだ!」
みたいなことを悪し様に言いますよね。
これはものが感染症でなければそれで済むんですよ。
でも敵は感染症なんですよ。
それも院内感染などすると、
簡単に100人規模のクラスターになるでしょ。
そう簡単じゃないんですよ。

医療体制を今のままで持続するためには、
トータルな医療リソースの中で、
ある程度低い比率で感染症を診るのでないと、
これはもう成立しないんですね。

成立させるためには、
割り切って軽症の患者の振り分けをするための、
大規模な医療施設を造らないと駄目ですよ。
つまり、今の体制を抜本的に変えないと無理なんですよ。
そんなことはそう簡単に出来ないでしょ。
今の体制のまま継続するには、
感染者の数を物理的にもっと抑え込まないと無理なんですよ。
それがまあロックダウンのような思想で、
そうするか医療提供体制を抜本的に変えるかの二択が、
今決断を迫られている、というのが現状なのだと思います。

すいません。
ちょっと話の論理が乱れ気味になりました。
この問題はまたもう少し整理して、
記事にしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い大晦日をお過ごし下さい。

来年は良い年でありたいですね。

今年1年お読み頂きありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

石原がお送りしました。
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