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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年8月21日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

先週はかなりバタバタでした。

8月19日はRT-PCR検査を17件施行して、
15件は唾液で2件は鼻咽腔から採取しました。
結果は8件が陽性でした。
これでもかなりお断わりしていて、
15分毎に1件の検査を入れているのですが、
どうしてもずれ込んでしまうのと、
途中で発熱の患者さんが飛び込みで見えるので、
これは検査も必要だ、ということになると、
それでまた予定がくるってしまうのですね。

通常の受診の患者さんとは、
絶対にクロスさせないという方針でやっていて、
木曜日は診療の終わりが1時間以上押しました。

翌日は休診日なのですが、
そうも言っていられないので、
午後から検査を待って結果が出次第で、
患者さんに連絡を入れました。
8件が陽性で本人に連絡をした後で、
今度は保健所にファックスをして電話で連絡を入れます。

千葉の事例では、
最初の報告で「妊娠」が情報としてなかった、
という報道がされていて、
医療機関の責任のように言われてしまうので、
妊娠の有無は慎重に聞き取りを行いました。

これだけ陽性例が多いと時間が掛かり、
結局トータルで1時間半くらいは掛かってしまいました。

そのうちの1件は、
濃厚接触者で既に保健所の関与もあったという状況もあるのですが、
結果連絡の時点で入院となっていました。
発症から5日目くらい。
RT-PCR検査で受診された時には、
酸素飽和度は97%で少し息苦しい、
という程度であったのですが、
その夜から急激に呼吸困難が悪化したようです。

矢張りこの病気は怖いな、と思う一方で、
デルタ株主体になってから
(8月の検体については、判明分は全てデルタ株です)、
家族は小児を含めてほぼほぼ全て感染してしまうので、
軽症の方については、陽性と伝えても、
「ふーん、そうか」というくらいの反応しかありません。
こうした患者間の大きな差異が、
これも感染を広げる一因となっているような気がします。

近隣の小児科のクリニックなのですが、
発熱の2歳のお子さんを診察して、
コロナの疑いは否定出来ないけれど、
唾液の検査しかしていないので、
他所のクリニックで鼻腔の検査をしてもらいなさい、
という指示をしたそうです。
ご家族からかかりつけでそう言われたので、
PCR検査を鼻腔からして欲しい、
というお電話がありました。

紹介状も何もないのですよ。

ちょっと酷いですよね。

全く初診の方で、
通常であればなるべくお受けしているのですが、
さすがに今週は再診の患者さんや、
保健所などから検査依頼の患者さんで、
もう手一杯の状態であったのでお断わりしました。

小児科のクリニックなのですから、
鼻腔からの検体採取は、
インフルエンザなどではいつもしている筈でしょ。

出来ない訳はないのですが、
やらないのですね。

それは感染のリスクが高いのでやりたくない、
ということなのだと思うのですが、
それを紹介状もなしにこちらに振って来るのは、
あまりに失礼ではないでしょうか?

僕だってリスクのあることはやりたくないのです。
でも、必要だから仕方なくやっているのですから、
応分のリスクは分け合うべきだと思いますし、
必要な検査であれば、
区のPCRセンターを含めて、
きちんと紹介をするべきではないでしょうか?

小児科のクリニックは、
結構大学からのパートの先生で、
廻しているところがあるのですね。
そうしたところでは、
パートの先生に感染をさせてしまうと、
大学にも飛び火することになりますから責任問題でしょ。
それが大きいのかな、というようには思います。

クリニックでも土曜日にパートの先生に、
今は時々入って頂いているのですが、
基本的に検体採取など感染リスクのある行為は、
その先生ではなく僕がやっていますし、
感染が周辺で拡大している時には、
万一のことがあるといけないと思い、
お休みをしてもらっています。

パートで廻しているクリニックでも、
絶対院長なりオーナーなりがいる筈ですから、
仮にパートの医師に感染リスクを負わせたくない、
ということでしたら、
責任者がするべきことではないでしょうか?

そんな風に思いました。

東京都内のホテルに滞在していた舞台俳優という方が、
今日から地方で公演があるので新感線に乗るのだけれど、
少し熱があって風邪症状のあるので心配、
と言うので、
受診して頂いて抗原検査をすると、
すぐに陽性と確認されました。
この方はそれでも検査をしてくれたので良かったのですが、
お仕事で国内を移動していて、
「このくらいの風邪症状ならいいか」
と思っている方が、
実際には感染を広げているのだと思います。

そんなこんなで疲弊はしますし、
先の見えない状況ですが、
ある程度リスクを取りつつ、
少しでも早く、見通しが付く状態になることを、
期待はしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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東京都梯子を外す [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

今日は休みですが仕事の話題です。

8月14日にこんなニュースがありました。
職場や会食での感染 周囲への濃厚接触者調査は行わず 東京都 2021年8月14日 11時18分

新型コロナウイルスの急激な感染拡大で保健所の業務がひっ迫しているため、東京都は、保健所が行う感染者の濃厚接触者などの調査の縮小を決めたことが関係者への取材で分かりました。各保健所は患者の健康管理により重点を置くとしています。

急激な感染拡大に伴い、入院調整が難航して自宅待機の患者が増え続けていて多くの保健所ではその対応に追われるなど、業務がひっ迫しています。 この状況を受けて、東京都は、各保健所では患者の病状や重症化リスクを把握して、速やかに適切な医療につなげることに重点を置き、濃厚接触者や感染経路を調べる積極的疫学調査は「優先度を考慮して効果的かつ効率的に行う」とした文書を今月10日付けで都内の保健所宛てに出していたことが分かりました。 都の関係者によりますと、積極的疫学調査の対象は、感染者と同居する家族のほか、学校、医療機関、それに高齢者施設などにとどめ、職場や会食などで感染した場合には、周囲への調査は行わないということです。 積極的疫学調査は、感染の可能性がある人に自宅で待機してもらうなど、大きなクラスターを作らない対策に役立てられてきましたが、感染の拡大に伴う業務のひっ迫で埼玉県も縮小を決めています。 こうした対応について東京の中央区保健所の吉川秀夫健康推進課長は「自宅療養で呼吸困難を訴える患者への対応で手一杯で、やむをえない判断だと思う」と話していました。

これは実際東京都からの文書が、
医師会経由で8月10日より前に出ていたと思います。

ただ、それよりかなり前の時期から、
職場などの濃厚接触者の調査や認定については、
現実的にはあまり行なわれていなかったのですね。

たとえば今年の3月くらいの時期だったと思いますが、
僕が産業医をしている会社で感染者が出たのですが、
隣の席で一緒に働いていた社員でも、
保健所から聞き取りや連絡がある、ということはなく、
1時間を超えるような会議が、
密閉度の高い会議室であって、
幾らマスクはしていたと言っても、
感染リスクは高いと想定される状況でも、
保健所からの検査の指示はありませんでした。

一方で同時期に近隣の小学校で、
学童の感染者が確認された時には、
同学年の生徒全員と教職員全員に、
濃厚接触者としてRT-PCR検査が公費で施行されました。

この時点で既に、
保健所は濃厚接触者の検査を、
学校などにかなり絞り込んでいる、
ということが分かります。

これは実際問題として、
保健所の能力のキャパを超えている、
ということが最大の理由で、
それに加えてこれだけ感染が市中に拡大してしまうと、
濃厚接触者をトレースして感染者を特定しても、
それだけでは感染自体の抑止には繋がらない、
という科学的知見にもよっています。

その代わりに職場には、
産業医や医療機関と提携して、
積極的に濃厚接触者を独自に認定し、
その検査を行なうことが同時に求められています。

これまでは、無症状の濃厚接触者の認定は、
敢くまで保健所がするということになっていたのですね。
勝手に医療機関が公費で検査することは許されてはいなかったのです。
クリニックに「感染者と接触したので心配」と受診される方がいて、
僕がこれは濃厚接触者だと判断しても、
保健所がその認定をするまでは、
公費での検査をすることは出来なかったのですね。

それが今回掌返しとなったのです。

保健所は一切濃厚接触者の職場などでの認定をしないので、
それは職場や産業医、市囲の医療機関で勝手にやってくれ、
ということなのです。

これはやむを得ない変更ではあると思うのですが、
その段取りはあまりに乱暴だと思います。

実際には数ヶ月前から、
そうした状況はあったにも関わらず、
あまり明確な方針転換の説明はなく、
今回はただのファックス1枚で、
関係各所に唐突に連絡がされているからです。

芸能人やセレブとされる方が、
最近とても沢山感染されていますよね。

これ、以前であれば、
「職場に濃厚接触者と認定された人はいませんでした」
というような報道があるのですが、
今は全くそうした報道はありません。

これは要するに保健所は今は、
職場の濃厚接触者について、
何ら調査はしていない、という意味なのですね。

でも、実際には職場や職場の産業医には、
その認定の義務はあるので、
積極的に認定をして、
遺伝子検査を行なわなければいけない筈です。

それがどの程度行なわれていて、
どのような結果になっているのかについては、
テレビ局などは報告する義務があるように思いますが、
そうしたことは行なわれている形跡はありません。

仕方のないこととは言え、
こうした濃厚接触者の認定が、
現場に任されてしまうと、
熱心に検査をする職場もあれば、
殆ど手を付けない現場もある、
ということになり、
殆どそれによる感染のコントロールは見込めない、
ということになります。

家族内感染の抑止については、
こちらも早期の隔離が困難な状況で、
家族個人に任されているという状況です。

つまりは、これまで行なわれていた、
感染拡大抑止のための対策が、
今は全て機能していないのが実際なのです。

今後この状況をどう改善すれば良いのか、
名案などすぐ浮かぶ訳もありませんが、
少しずつ感染が収束に向かうことを信じつつ、
検査と診療を個人的には地道に続けるしかないのかな、
というように思っています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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品川区梯子を外す [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は夏の休診期間でクリニックは休診です。

受診予定の方にはご迷惑をお掛けして申し訳ありません。

8月10日の夜にはどうにかレセプトを出して一区切りという感じ。

11日から少しだけ遊びに出たのですが、
夕方になって嘱託医をしている老人ホームから連絡があり、
看取りの入所者の方のチアノーゼが進行している、
という「不幸の電話」のようなお話でした。

それからまた夜遅くに電話があり、
メールがありまして、
今日は朝4時に起きて、
予定は勿論全てキャンセルして、
取り急ぎ老人ホームに向かっている、
という現状です。

そんなに遊んではいないのですよ。

昨日と今日だけどうか自由にしてはくれないのでしょうか?
せめて、10日のことであれば、
幾らでも対応は出来たのですが、
今日の今日ですか、と考えると、
頭がグルグルとしてしまいます。

結局休みゼロで夏季休診期間は終了、
ということになりそうです。

今日は少し新型コロナワクチンの話をします。

僕は基本的には、決まったことについては、
その内容にいささか賛同をしかねる部分があっても、
協力出来るところは協力し、
従うべきところは従うようにしています。

それはワクチンに関しても同じです。

クリニックのある品川区においては、
最初は集団接種という形で、
福祉施設などを利用したワクチン接種が始まり、
それから一部の病院などが、
先行接種会場として認証されました。

それが6月の初めに、
クリニックなどでも個別接種が開始される、
という話になり、
説明会が6月9日にあって、
正式には6月21日からクリニックでも接種を開始しました。

接種対象者は品川区の規定に準ずる、
という形で最初は高齢者を優先する、
ということになっていました。

使用されるのはファイザー・ビオンテック社のワクチンで、
毎週(もしくは隔週)どのくらいの量を接種するのか、
計算して最初は区に、途中からは医師会に連絡をして、
翌週にワクチンが届く(もしくは取りに行く)、
という段取りです。

ワクチンは凍結されているのですが、
クリニックでは解凍して冷蔵保存になります。
当初は冷蔵したらすぐ使い切り、
ということでしたが、
今では1か月は冷蔵で保存可、
ということになっているので、
1か月のスケジュールを立てて、
使い切るように調整をするのです。

ワクチンは原則きっかり3週間で2回の接種を行います。
その3週間後がワクチンの使用期限内であれば、
それを込みで考えれば良いのですが、
期限を外れてしまうと、
次回のワクチンの注文に、
それを反映させなければいけません。

1本のバイアルで6回接種する決まりで、
一旦常温に戻してしまうと、
6時間以内には接種をしないといけないので、
6人をセットで考えて予約を取るのですが、
なかなか思うようにはいきません。

ある全くの初診の方が、
「どうしてもお宅で接種したい」と言うので、
予約を入れたのですが、
当日の接種予定時間の直前になって、
「キャンセルする」と一方的に通知された、
ということがありました。

連絡があるだけましな方で、
全く何の連絡もなく、
ドタキャンということも稀ではありません。

その度に、真面目に死に物狂いで電話を掛けて、
キャンセル待ちの方を探すのです。

それでも調整をしながらワクチン接種を開始したのですが、
まだ7月の中旬、つまり個別接種開始から、
1か月も経たないうちに、
医師会からファックスで通達が来て、
今後ワクチンの不足が予想されるので、
新規の個別接種の予約は一旦中止として下さい、
という一方的な指示がありました。

あまりの段取りの悪さに驚きましたが、
それでも真面目に新規の方はお断りするようにしました。

ただ、前述のように、
ワクチンの計画は先へ先へスケジュールを組まないと成立しないので、
調整期間もなく、明日からこうなりますと言われても、
現場は困ってしまうのが現実です。

それでも皆この理不尽な要求にも抗いもせず、
頑張っているのだろうな、と思っていると、
商店街から仰天するチラシが届きました。

クリニックの近隣に、
健康診断に特化したクリニックがあるのですが、
そこはクリニックであるにも関わらず、
先行接種の対象機関に認定されていたのですね。

そのチラシによると、
そのクリニックの「ご好意」により、
何ら年齢などの制限を設けることなく、
商店街のお店の家族や従業員に、
ワクチン接種を特別に実施する、というのです。

ワクチンが足りないので新規予約を中止しろ、
と言っているのに、
同じ近隣の健診クリニックでは、
商店街に限って新規受け付けを制限なくドシドシ行う、
と言っているのです。

こんな馬鹿な話があるでしょうか?

そればかりではなく、そのクリニックでは、
「うちで区民健診を受けてくれればワクチンも打ちますよ」
という宣伝までしていて、
近隣のクリニックからも苦情が出ているのです。

現状新型コロナワクチンは全て公費で賄われる、
公的接種という扱いである筈です。
その健診クリニックはそれを、
自分達の金儲けのための道具として使用しているのです。

こんなことがまかり通っていることも驚きですが、
それを指導することが出来ない、
品川区や医師会も、
機能していないと言って過言ではないと思います。

このように一部で余って自由に打ちまくっている一方、
足りないので新規予約が中止されたワクチンですが、
8月3日になって、
再び驚天動地のファックスが送付されました。

どういうものかと言うと、
ワクチン不足が深刻化したために、
品川区においては、
12から15歳への接種と、
難病や寝たきりのために集団接種会場での接種が困難な場合以外は、
全ての接種を集団接種会場に一本化して、
個別接種は中止すると言うのです。

この年齢区分の話などは、
それまでに一度も議論されたことはなかったのですね。

にも関わらず、
この通達で急に年齢制限などが記載され、
要するに集団接種で面倒な対象のみを、
個別接種で施行しろ、それ以外は手を出すな、
というような方針が何の前触れもなく決定されたのです。

医師会は本来、
区がそうした理不尽な決定をしても、
それに反対するべき役割の筈ですが、
区の通知の翌日には医師会の同様の文書も配布されているので、
そうした抵抗もしたのかどうか不明のままです。

ワクチンが不足しているから、
対象の絞り込みを行う、
というのはまあ妥当な考え方ではあります。

ただ、その2週間前には新規接種中止の通達が出て、
数日前にはそれは解除するけれども、
ワクチンの配布数は大幅に少なくなる、
という通知が出ているのです。
そこまでは、ワクチンの数は減っても、
接種自体はこれまで通りで継続する、
という方針が示されていたのですね。
それが一転して数日で対象者が大幅に変更され、
ほぼ「打つな」という方針に変更されているのです。
それも「いつからそうする」という日付やスケジュールが、
文書の何処にも明記されていないのですね。

現場でスケジュール作りと、
廃棄ワクチンを作らないために日々努力している、
末端医療機関の我々に対して、
こうした仕打ちはあまりにも不誠実で、
あまりにも無体なものではないでしょうか?

これまで真面目に付き合っては来ましたが、
最近のワクチン供給の迷走ぶりは、
あまりにも現場を無視した酷いもので、
その上一部の医療機関だけが何故か潤うという不公正なものなので、
そろそろ撤退するのが良いのかしら、
それもシャクには触るしなあ、と、
日々悶々としているのが現状なのです。

減らすのはそれでいいんですよ。
ただ、こちらも先を見ながら、
ワクチンの廃棄を避けようと、
スケジュール管理に知恵を絞っているので、
せめて猶予期間などをおいて、
スケジュールを明確化して欲しいですよね。
後、特定の医療機関のみがフリーハンド、
というような不公正は止めて頂きたい。
それから、対象者を限定するのであれば、
これも猶予期間やスケジュールを明確化して欲しいですよ。
数日前とは全く違うことを、
1枚のファックスで通知してそれでお終い、
というのはこちらをあまりに馬鹿にした話ではないでしょうか?

今日は品川区に梯子を外された、
という話題でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年8月10日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは8月8日から夏季の休診期間に入っていますが、
あまり落ち着くという感じはありません。

8月7日には14件のRT-PCR検査を行ない、
12件が唾液で2件は鼻腔よりの検体でした。

そのうち7検体が陽性でした。

8日の午後1時くらいに結果のファックスが来たのですが、
それから皆さんに電話をして結果を伝え、
7件のファックスを区役所の保健予防課に送って、
今度は電話をして補足説明を行ないました。
全てそれを1人でやっているので、
結局2時間くらいの時間が掛かりました。

こんな状態がこのところ連日続いています。

8月9日は祝日ですし、
検査は受けない方針としていたのですが、
実際問題として8日に陽性と判明した方の家族がいて、
間違いなくお子さんを含めて濃厚接触者となるので、
その検査は極力早急に行う必要があると考えました。

それで検査会社に掛け合って9日の集配をしてもらい、
感染者にご連絡をして、
希望の方は翌日にご家族の検査をする段取りにしました。

今日は10日でレセプトを提出しないとならず、
まだチェックが済んでいない状態で、
朝から突貫でレセプト作業と取り組みました。

そんな折から10日の午前中に、
クリニックの近隣の商店街に勤めている、
40代の女性の方から電話が入り、
至急診察をして欲しいとのお話でした。

休診日でしたので、初診の方ですし、
一旦お断りを仕掛けたのですが、
お聞きすると、旦那さんが1週間前から感冒症状があって、
本日胸部痛と呼吸困難が生じ、
救急車を呼んだのだけれど、
自分も熱が上がって来たので診て欲しい、
というご依頼でした。

それでは、とクリニックに来て頂いて、
鼻腔でCOVID-19の抗原迅速検査を行なうと、
これ以上はないくらい綺麗に反応が陽性に出ました。

それで当座の薬をお出ししてお帰り頂いたのですが、
今度は救急隊から連絡が来て、
その方の旦那さんのところに来ているが、
症状は強いものの酸素飽和度は94%でそれほど下がっておらず、
COVID-19かどうかの診断も付いていないので、
病院に搬送するかどうかの判断が難しい。
現時点での情報で20か所くらいの病院を当たっているが、
全て受け入れ困難で搬送が出来ない状態だ、
ということでした。

それでは、ということで、
予防衣を着て手袋、マスク、フェイスシールドを付け、
そのまま徒歩で旦那さんの自宅に向かいました。

旦那さんはドアのすぐ先の三和土のところで横になっていたので、
取り急ぎ、抗原検査を行ないました。
すると、奥さんほどすぐの反応ではありませんが、
抗原は陽性であったので、
COVID-19確定として届け出を保健所に出し、
それが確認次第受け入れ先の病院を再度探す、
という段取りになりました。

クリニックに戻り、
旦那さんと奥さん2人の発生届を保健所に出し、
それを救急隊に告げると、
しばらくして何とか都内の病院に受け入れが決まりました。

この旦那さんのように、
40代くらいでの急変というのは、
最初は軽い風邪症状のような状態が数日続いて、
1週間くらいしてからの重症化が多いようです。

今日はRT-PCR検査の結果が午後4時くらにずれ込み、
今電話と届け出を出し終わったところです。

レセプトはまだ終わっていません。

間に合うのでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも感染防御にはくれぐれもご注意下さい。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年7月29日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日はクリニック周辺の新型コロナウイルス感染症の現況です。

ご存じのように東京では、
若年者の感染者が急増しています。

クリニックでのRT-PCR検査でも、
7 月15日くらいから陽性者が増え、
特に7月24日以降においては、
検査数自体は昨年末から今年の1月くらいと比べると、
かなり少ないのですが、
陽性率は50%を超えるような状態が続いています。

報道にもありますように、
30代以下の感染者が圧倒的に多く、
クリニックで確認された60代以上の感染者は、
7月は1人もいません。

東京都内においても、
発症にはかなり山谷があると思うのですが、
今現在で言うと品川周辺は、
これまでのピークを越えている印象です。

症状も変化している印象はあって、
30代以下の発症では、
発熱も微熱程度か、高熱は1日くらいのことが多く、
熱が落ち着いてから咳が始まって、
だるさは1から2週間は継続するという感じが典型的です。
初期から頭痛が強いのは、
割合と今も特徴的かと思います。

それが40代から50代での感染になると、
高熱の持続するケースが多くなり、
咳込みも強く、寒気や関節痛も持続して、
かなり重症感の強い事例が多くなります。

これも報道にもありますように、
10代から30代くらいで軽症の感染が爆発的に流行し、
殆どは軽症のまま終わるのですが、
それが上の世代に感染して、
重症化するという図式です。

昨年の時点では明らかに小児の感染は少なかったのですが、
最近は1から2歳でも当たり前に陽性になります。

このように、
同じ病気でありながら、
症状も変化すれば年齢分布も変化する、
と言う点がこの病気の非常に厄介なところで、
定期的に患者さんを診ていないと、
新型コロナかどうかの判断は、
不可能と言って過言ではありません。

端的に言えば、
今品川周辺で、
10代から30代くらいの風邪症状、
特に熱が1日出たけど、すぐに微熱になったよ、
咳が出て少し頭がいたいけど、
これコロナじゃないよね?
というような症状は、
ほぼ全てコロナと考えて、
大きな間違いはありません。

陽性率が高くて検査数が少ないのは、
そもそも軽い症状で元気は元気なので、
その世代の人は余程でないと、
病院を受診したりはしないのですね。
受診する場合の多くは、
会社や学校で「検査を受けろ」と言われたり、
帰省するので必要になった、
というような場合が殆どで、
それ以外は、
クリニックに平気でぶらりと、
「ただの風邪なので診て下さい」
と受診される感じです。

現状そうした患者さんを、
他の患者さんと一緒に診る訳にはいかないので、
その対応には本当に苦慮しています。

2階で発熱者の診察をしていて、
そうした患者さんがぶらりと来られると、
発熱者は事前に時間を決めて頂いているので、
外で一旦待って頂いて、
合間を縫って2階に案内する、
という感じに対応しないといけません。

それが重なってしまうと、
本当に呆然としてしまうしかありません。

どうかどうか、風邪の症状で受診される際は、
まず電話で事前に連絡をお願いします。

それは切に切にお願いしたいところですし、
上記のような風邪症状は、
かなりの確率で新型コロナなので、
軽症であっても、
そのつもりで生活をして頂きたいと思います。

保健所もてんてこ舞いの状態で、
濃厚接触者の補足も間に合っていませんし、
入院もホテルも一杯で、
多くの方が自宅待機か自宅療養、
という現状は変わっていません。

陽性の届け出を保健所に出しても、
患者さんに連絡が行くのは2日後、
というようなケースが最近2例あり、
担当者にお聞きすると、
もう1日中電話を掛け続けているけれど、
とても間に合っていない、というお話でした。

7月中旬から、ようやくゲノム解析の結果も、
クリニックに報告されるようになり、
変異株の状況も少しずつ明らかになってきています。
現状クリニックでの検査では、
3分の1程度がデルタ株という感じです。

そんな訳で色々なご意見も方もいると理解していますが、
現状は保健所も医療機関も、
手一杯で手詰まりの状態であることは間違いがなく、
上記のような今の風邪症状は、
高い確率でコロナなのだよ、という考えのもとに、
極力感染を広げないための方策を、
最低限取って頂きたいと切に願います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年7月20日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はいつものクリニック周辺の感染症情報です。

先週までは、
東京の感染者が1000人を超えそうだというけれど、
一体何処で増えているのかしら、
というような感じであったのですが、
この1週間くらいでかなり状況は緊迫してきています。

クリニック周辺でも、
ホテル療養のホテルも満室、
入院先の病院も全て満床、
という状態が続いていて、
待機の患者さんが膨れ上がって来ています。

数日前に保健所からの依頼で、
新型コロナで自宅待機中の患者さんが、
胸の痛みを訴えて、
胸部レントゲン検査目的で受診されましたが、
30代のその方は、
もう39度を超える熱が5日続いていて、
入院先を探しているも見つからない、
とのことでした。

持病があって高熱が続いていても、
入院はベッドがないので出来ない、
というのが今の状況で、
自宅待機者にこうしてクリニックなどを受診してもらい、
診察や検査によってトリアージをして、
重症と判断された方のみを、
入院適応とする、というような方針が、
取られているようです。

濃厚接触者も、
家族以外はあまり補足されているという感じはなく、
「会社の換気の悪い会議室で、2時間以上会議をしていた、
と言ったのだけれど、濃厚接触とは認められなかった」
と言うような話を頻繁に聞くようになりました。
保健所もパンク状態なのだと思いますが、
明らかに以前のような濃厚接触者の同定はされていません。

家族内感染での感染拡大の強さも最近の特徴で、
乳幼児の検査をする機会が最近増えましたが、
以前は家族内で感染者があっても、
乳幼児への感染は極めて稀であったものが、
最近は多くの乳幼児で検査の陽性事例が確認されています。

医療崩壊に近い厳しい状況であることは確かで、
他に有効な方法がない以上、
1人1人の感染予防が、
今は何より重要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年7月12日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はクリニック周辺に限定した新型コロナの現状です。

RT-PCR検査は、
クリニックで依頼される件数は今は少ないのですが、
若い世代での陽性率は間違いなく高くなっていて、
5例検査して全例陽性という日もありました。

友達とお酒を飲んで騒いで感染したり、
焼き肉パーティーで、そう言えば1人具合が悪かった、とか、
ライブで演奏して、メンバーの1人から感染とか、
そうした話が大半で、
保育園や学校の集団感染も増加しています。

そうした方の大半は軽症で、
頭痛があって熱が数日上がったり下がったり、
という感じなので、
本人もすぐに医療機関を受診することは少なく、
診断が付いた時には既に1週間くらいが経過して、
もう本人は回復していて、
周囲に感染は広がっている、
という事例が多いのです。

そこで職場や家庭でもう少し上の年代の人に感染すると、
こちらは高熱が続いて、重症肺炎で入院、
というようなことになります。

それから気になる事例としては、
ファイザーのワクチンを2回接種して、
1ヶ月経過後に家族から感染した医療従事者のケースがありました。

例外的なケースと思いたいのですが、
今後こうした事例が増えて来ることも、
想定しておかないといけないのかも知れません。

家族のような濃厚な接触がある場合には、
ワクチンでの抑止は困難な場合も当然あると、
そう考えておいた方が現実的だと思います。

一方である近隣の総合病院では、
ワクチン接種を妊娠希望という理由で受けなかった職員から、
感染が拡大して、病棟閉鎖、
というようなケースがつい最近に報告されています。

ワクチン接種が進行したことで、
病院や老人施設でのクラスターが減少していることは、
良い兆しではあるのですが、
少数とは言え、接種後の感染も見られていて、
ワクチンを過信することは危険です。
感染拡大の主体が若者や子供に移って来ると、
結局そうした世代の欲求の多くは、
感染拡大に繋がるような行為なので、
それを止めるということは日本の今の仕組みでは不可能で、
他人の感染対策や政治を非難している人が、
誕生日の焼き肉やカラオケでの大騒ぎ自体は止められないのですから、
それで今の感染拡大を抑止することは、
冷静に考えて相当な困難事例です。

それでもいつかは今の苦労が報われることを信じて、
日々の診療業務に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年7月4日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
終日レセプト作業の予定です。

今日はクリニック周辺の感染症情報です。

6月下旬以降東京では感染者の増加が続いていますが、
現状クリニックでのRT-PCR事例は多くありません。

品川区からの情報では、
6月末からの感染確定事例は増加しており、
20代、30代の若年層が多いという点では、
東京全体の傾向と一致しています。

その点を受けてクリニックにおいても、
小児の発熱者にも、
以前より積極的に検査を施行する方針としています。

以前は未就学児はほぼ全例、
鼻腔からの検体で検査をしていましたが、
保育園でも唾液の採取などが行われるようになり、
お子さんも慣れて来ているのでしょうか、
最近では2歳以上は唾液での検査が可能なことが、
多くなっています。

これは進歩と言って良いのかどうか微妙です。

変異株の追跡は、
アルファ株(以前の英国型)が主体のN501Y変異は、
検査事例の8割を占めていることもあり
行なわない方針となっているようで、
今はデルタ株(以前のインド型)が主体のL482R変異のみで、
施行されているようです。

これは何度も書いていることですが、
現状全ての事例で検査が行われている訳ではなく、
無作為に検体が抽出されているという訳でもないので、
実体がどうであるのかは明確ではない、
というのが事実です。
自治体主導の検査は数は少数ですし、
それ以外は検査会社の自主性に任されているからです。

そうしたあまり根拠の乏しいデータを元にして、
「今日は何例のデルタ株が見付かった」と騒ぎ立てるのは、
全く意味のない扇動であるように思います。

現在一番知りたい情報は、
現行接種されているmRNAワクチンが、
デルタ株にどの程度有効であるか、
ということですが、
実験レベルのデータは開示されていても、
実臨床の疫学データは従来株のもので止まっていて、
少なくとも査読を経たような論文で、
こうした情報はないのが現状です。
(もし情報をお持ちの方はご教授下さい)

ワクチンの変異株に対する有効性と、
感染対策とは両輪である筈ですが、
それがないままの現状は、
臨床に携わるものとしては不安が大きいのです。

6月以降の感染者については、
症状的に拍動性の頭痛が強く、
咽頭痛と発熱が認められ、
扁桃炎の症状のように思われるのですが、
扁桃炎の所見は乏しい、
というのが特徴的です。
確かに味覚嗅覚障害の訴えは、
殆ど聞かなくなりました。

ただ、これが本当に変異株の特徴なのか、
と言う点については良く分かりません。

訳知り顔に、
「デルタ株の症状の特徴はこうだよ」
と言うような方もいますが、
実際には信頼の置ける疫学データがなく、
症例の分布自体も不確かなのですから、
少数の自験例のみで、
そうしたことを言うのは、
科学的ではないように思います。

ワクチン接種も混乱が続いており、
スタッフを含めて疲弊と消耗も大きいのが実際ですが、
現状の収束に向けて、
末端の臨床医として日々の業務に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんは良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2021年5月21日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

今日はクリニック周辺の新型コロナウイルス感染症情報です。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続いています。

クリニックで診療をしている感触としては、
今年の1月くらいの方が、
感染者は多かったという印象がありますが、
おそらく患者の主体が若年者に移っていて、
クリニックで診断されるような患者さんの比率は、
逆に減っているのかも知れません。

症状としては、
突然の寒気と関節痛と共に高熱で発症、
というインフルエンザ様の症状の方が多く、
それでいて高熱が持続するという感じではなく、
熱は上がったり下がったりを繰り返すという感じです。
重症の事例ではそこに強い咳込みなどが加わるので、
ほぼ典型的な印象になります。

印象に残ったケースを幾つかご紹介します。
実際の事例を基にしていますが、
守秘義務及び、患者さんの特定を避ける観点から、
実際とは表現を変えている部分のあることをお断りしておきます。

事例の1つ目は家族内感染で、
まずお仕事をされていた30代の男性が発熱で発症し、
同居していた男性の妻、母親、
そして1歳未満のお子さんの3人が、
検査で全員陽性となったケースです。
母親は風邪症状はありましたが軽度で、
男性の妻とお子さんは無症状でした。
昨年くらいまではこうしたケースでは、
1歳未満のお子さんが感染した、
という事例は遭遇したことがありませんでした。
矢張り変異株主体の感染となって、
家族内感染での感染率は、
小さなお子さんを含めて高くなっていることを、
実感した事例でした。

もう1例はデパートに勤務されていた、
接客業の20代女性のケースですが、
急な寒気を伴う高熱で発症し、
勤務先の指示でその日のうちに、
近くのクリニックを受診して、
新型コロナウイルスの抗原検査と、
インフルエンザの抗原検査を同時に施行されています。
結果はいずれも陰性であったため、
翌日は出勤をされているのですが、
熱は下がっていたもののだるさは持続していて、
その翌日再度発熱があったため、
クリニックを受診。
同日のRT-PCR検査で陽性を確認した方です。

まあ、当たり前のことなのですが、
発熱初日に抗原検査をしても、
あまり役には立たず、
むしろ陰性であることで油断を誘い、
感染を拡大してしまうという典型的なケースです。
個人的には今の時期のこの症状で、
インフルエンザの検査は不要だと思います。
まず新型コロナを疑い、
お子さんであればアデノウイルス感染症も否定は出来ない、
という判断でしょうか。

最近は自宅療養で経過を診ている患者さんが、
発熱や咳などの症状が悪化した際に、
入院の可否の検証のために、
胸部レントゲンや採血の依頼が増えています。

宿泊療養は原則平熱が対象なのですね。
熱があると自宅療養か入院しか選択肢はないのですが、
保健所的には軽症で入院という判断をすると、
病院側からクレームが付くので、
その判断の基準となる所見を求められるのです。

ただ、もう感染していることは分かっていて、
全くの初診で、
ガンガン熱が出ていて咳き込みも酷い、
という患者さんを、
通常診療の合間に診るというのは、
結構しんどい仕事ではあります。

有熱者は完全に導線を分けていて、
その点では問題はないのですが、
胸部レントゲンを撮影するレントゲン室は1つしかないので、
他の患者さんがいない時間に、
レントゲンを撮り、
それから部屋を消毒する作業に入ります。

現状他の時間での対応は困難なので、
診療終了直前くらいに来て頂き、
他の患者さんがいなくなってから、
レントゲンを撮影するような段取りで対応しています。

新型コロナウイルスワクチンについては、
僕自身は6月2日に2回目の接種を予定しています。
おそらく6月中には全ての「医療従事者」への接種が終了する、
というような流れになるようです。

クリニックでは品川区と渋谷区の患者さんが多く、
品川区では6月19日から75歳以上の高齢者の、
集団接種受付が開始という遅さです。
クリニックなどでの個別接種は、
どうやら6月から開始となるようです。

現状問題と感じるのは、
1回目と2回目の接種予約の位置づけがまちまちであることです。

僕自身の接種の場合は、
1回目と2回目を完全に3週間後の同じ時間に、
同時に予約するというシステムで、
勿論同じことが行われているのだろうな、
と思っていたのですが、
渋谷区から来た患者さんは、
1回目の予約しか取れない仕組みになっていた、
と話されていて、
2回目をいつどのくらいの間隔で予約して良いのか、
何処にも書いていない、
とこぼされていました。

これはどうも市町村によって対応が異なっているようで、
たとえば世田谷区では、
1回目と2回目の予約を同時に取って下さい、
というように明記されていますが、
2回目は希望通りには取れないこともあります、
というような記載もあって、
取ろうと思っても希望の時間に取れない、
というような事態もあり得るようです。

以前ブログでご紹介したイギリスの論文にあったように、
海外でも1回目と2回目の接種間隔には混乱もあって、
現状はファイザー社のワクチンでは、
3週間での2回目接種が推奨されていると思いますが、
もっと長い間隔(8週間くらい)で接種した方が、
より強い免疫反応が得られるのでは、
という試行錯誤があって、
そうした接種が行われたこともあり、
1回で充分との判断で、
1回のみの接種が広がった時期もあったようです。

ただ、現状の添付文書では3週間という間隔が明記されているので、
そうした対応が取られるべきだと考えますが、
現状は必ずしもそうなっていないようです。

渋谷区の文書を読むと、
1回の予約では1回のみで、
2回予約をして2回目の接種をしろ、
というような文面に読めます。
間隔も3週間以上、
なるべく6週間以内というような記載で、
はなはだ不明瞭であることは間違いがありません。

品川区の場合、
対象者に送られて来た書類を読むと、
1回目の接種の予約をまずして、
その接種を終えてから、
改めて2回目の接種の予約をしろ、
と言う意味のことが書かれています。

酷いよね。

ただ、品川区のサイトを見ると、
1回目の接種会場で、
その3週間後の2回目の予約が取れる、
と言う意味のことが書かれています。

これが本当に会場で予約が取れるという意味なのか、
それとも「この日に自分で予約して下さい」
と言われるだけのことなのか、
幾ら読んでも明確に分かりません。

こんな状況であると、
3週間で2回目の接種を行う人もいれば、
8週間以上のように間隔をあけてしまう人もいて、
1回目の接種だけで終了してしまう人もいることになりますから、
国も市町村ももう少し情報を整理して、
2回の接種が適切に行われるように、
もっと効率的な方法を考える必要があると思います。

そんなこんなで現状はどう転ぶか分からない、
不安定な状況が続く医療現場ですが、
今出来ることを出来る範囲で無理なくこなしつつ、
少しでも収束が早まることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2021年4月30日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。

今日は新型コロナウイルス感染症の、
クリニック周辺に限った近況です。

矢張り若い人を中心に感染が増加している、
という傾向はクリニック周辺でも見られていて、
現状はインフルエンザ様症状での発症が多い、
という印象です。

突然の発熱と関節痛、寒気というような症状で発症し、
熱自体はそれほど持続しないのですが、
全身倦怠感や頭痛、関節痛は長く持続する、
というような症状です。
咽頭痛はあることの方が多いのですが、
軽症のことも多く、
咽頭後壁の発赤もそれほど強くはありません。

味覚障害や嗅覚障害の話も、
最近はあまり聞くことがありません。
ただ、これは発症する事例が減っているのか、
それとも発症する前に診断されるケースが多くなったからなのか、
その点については何とも言えません。

時々昨年あったような、
咳き込みと呼吸困難と高熱、
というようなケースに遭遇しますが、
そうした事例は概ね重症化して、
緊急入院となることが多いのです。
ただ、比率から言えば若年の軽症例が、
圧倒的に多いという印象です。

若年の感染者から急速に周囲に感染が拡大している、
というのが現状の間違いのない傾向であるようです。

最近印象的であった事例は1人は20代の女性ですが、
品川区内の電話応対の多い会社に勤務していて、
その会社では1週間ほど前から発熱者や、
咳などの風邪症状の人が増えていたのですが、
会社からの命令で、
「絶対にPCR検査を受けるな」と言われていたとのことです。
本人の症状としては微熱とだるさと軽い咳で、
初診時には本人が、
「会社から止められているので」
と検査をしませんでしたが、
翌日だるさと関節痛が悪化したため再診。
本人の承諾も得られたので検査をして陽性を確認しました。

それからこれは別のケースで30代の男性会社員ですが、
羽田からそう遠くない場所で勤務していて、
その会社では熱が出ると、
「羽田空港のPCRセンターに行って、すぐに結果の出る検査をして来い」
という指示が出るのだそうです。
それでその人も発熱と関節痛と寒気があったので、
木下グループのやっているPCRセンターに行って、
抗原検査を受け、陰性であったので、
陰性証明書のようなカードをもらって帰って来たのです。
初診の時点ではその日に抗原検査で陰性とのことであったので、
処方のみで経過をみたのですが、
翌日に症状が悪化したため再診。
同日唾液のRT-PCR検査を施行して陽性を確認しました。

特にこうした若い会社員の方の傾向としては、
会社からは「無断で医療機関でPCR検査をするな」
という命令を受けていて、
受診をされて検査の必要性が高いとお話をしても、
「まず会社に連絡をします」とその場で会社に電話やメールをし、
それで30分くらい平気で時間が経過してしまう、
というケースが多いのが実際です。

「会社」というのはどうやら物凄い権力を有してるらしく、
僕のような末端の医療機関の医者が何を言っても、
到底太刀打ちは出来ない伏魔殿のような場所であるようです。

感染の原因は、
聞き取りが可能な範囲では、
矢張り「会食」などの外食が多いのですね。

直近ではラーメン屋さんで感染した、
と思われる事例が2件ありました。
(ラーメン屋さんが特に悪いということではありません。
そうした事例がたまたまあった、
ということでご理解下さい)
ただ、飲食の仕事をされている方は、
「自分の店では徹底した対策をとっているし、
これまでうちの店で感染者が出た、
という話を聞いたことがない」
というように決まって言われるんですね。

それはもっと感染が散発的状態であれば、
確かにそうかも知れないのですが、
たとえば感染がほぼほぼある飲食店で起こった、
と分かっていても、
患者さんもあまりそのことを言わないですし、
犯罪ではないので、
医療機関も保健所もそこまで追求するようなことはしません。
そうすると、結局多くは「感染経路不明」ということになって、
その飲食店の関係者が、
自分の店でお客さんが感染した、
というような事実を知ることはないんですね。

要するに、
「こうした感染が市中に蔓延した状態では、
複数人で外で食事をすれば、
どんなに対策していても感染リスク自体はある」
というのが事実であると思うのですが、
多くの人にとって、
それはあまり理解したくはない考えなので、
理解はされないのだと思います。

事例を分析している時点までは、
それは一応科学の範疇なのですが、
それを公表したり議論したりした時点では、
それはもう社会学や政治の問題になってしまうんですね。

散発的な感染の時に取るべき対策と、
市中感染で流行期に入った場合に取るべき対策とは、
明確に異なっている筈ですが、
一般の方はそれを完全に混同していますし、
専門家と称する方でも、
やや混同した発言をしている傾向はあるので、
話はややこしくなっています。

そんなこんなで先の見えない状況が続いていますが、
日々の診療をこなしつつ、
発熱外来などで自分の出来ることを、
無理のない範囲で続けてゆきたいと思います。

ちなみに僕自身のワクチン接種は、
1回目が5月12日の予定。
僕が嘱託医をしている老人ホームは、
5月17日に1回目の入所者のワクチン接種の予定。
品川区では5月20日くらいから、
一般の高齢者の接種も、
少しずつ開始される予定です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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