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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月31日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は大晦日でクリニックは休診です。

今年の締めはどうしようかと考えましたが、
矢張り新型コロナウイルス感染症の話で、
終わることにしました。

通常診療最終日の12月28日は、
15名のRT-PCR検査を施行しました。
結果は12月29日の夕方までに出る筈でしたが、
例によって遅れてしまい、
午後6時になってもファックスが届きません。
業界大手の検査会社に連絡すると、
「6時半くらいには検査が終わる予定です」
という返事だったので、
7時まで待っていましたが、
うんともすんとも、
ファックスの届く気配はありません。
その間にも、心配をされた患者さんからの電話が、
ひっきりなしに掛かって来ます。
それで再度問い合わせをすると、
「結果は出ているが、ファックスの送信に時間が掛かっている」
と言うので、
「どのくらい掛かりますか?」
と聞くと、
「1時間半以内には」
と言われたので、
呆然としました。

このところ、
翌日の3時半くらいには結果が来ることが多かったので、
少し安心して油断していたのですが、
そう甘くはなかったようです。

結局午後8時半にファックスが来て、
それから1人ずつ15名に電話で結果を説明して、
陽性であった5名については保健所に連絡をしました。
届出はプライバシーに配慮したものをファックスして、
それから担当者から電話を受けて,
その時に詳細を説明する、
という仕組みです。

そうした段取りがすべて終わったのは、
午後10 時半を廻っていました。

12月29日はクリニック自体は休診でしたが、
午後から都の要請による発熱外来を開きました。
通常の診療ではなく、
保健所や医師会からの依頼による、
発熱や新型コロナ疑いの患者さんのみ、
時間を決めて受け付けるというものです。
一般の患者さんと時間を分けて診療できるので、
効率的ではあるのですが、
毎日これをしていれば、
こちらが過労で死にます。
まあ、ギリギリのところです。

ただ、この日は近隣でも診療をしている医療機関が多く、
4人の診療とRT-PCR検査をしただけでした。
結果的には、これならやらなくても良かったかしら、
という感じでした。
医療リソースの効率的な運用というのは、
実際にはなかなか難しいものであるようです。
それでも12月30日の夜には、
検査結果を説明しないといけないので、
クリニックでその対応に当たりました。
4人のうち1名は陽性でした。
このところは、全員陰性という日はありません。

現状の大きな問題は、
医療リソースがもうギリギリのところで、
僕のような初期診療と検査をするクリニックと、
届け出を受け付けて入院などの割り振りと経過観察、
連絡などの業務を一手に引き受けている保健所、
入院患者を受け付ける病院の間の連携に綻びが出て、
互いに疲弊して不満もたまっているということです。

保健所の担当者の方から先日お聞きしたところでは、
最近入院患者を受け入れている病院からは、
本来入院の適応ではない軽症者ばかりが、
入院してしまい、
貴重なベッドが適切に運用されていない、
という怒りの声がしきりに上がっている、
ということでした。

これはね、たとえば殆ど検査のみをしているクリニックがあるでしょ。
もともと検査も郵送で唾液を送るだけで、
陽性になってもウェブ診察だけをして、
これはもう実際には診察というものではなく、
ただ、保健所に届け出をするために、
ちょっと話を聞くというだけなんですね。
保健所は電話で話を聞くだけですから、
結局誰もその患者の診察をしていないし、
客観的な情報も持っていない、
ということになるのですが、
それでもその患者さんの入院や宿泊療養の振り分けを、
保健所が電話のみでしないといけない、
というのが非常な問題で、
冷静に考えれば、そんなの無理なんですよね。

実際にそれで起こっていることは何かと言えば、
軽症で何の問題もない患者さんが、
テレビで急死した代議士のニュースなどを見て、
「こりゃ入院させてもらわないと大変だ」
というように思うんですね。
そう思えば胸も苦しいような気分になるでしょ。
それで保健所の電話に、
「胸が苦しくなって来た。早く入院させてくれ!」
と騒げば、入院にするしかないですよね。
それで送迎車を用意して入院となると、
本人は何の症状もなくケロッとしている、
ということが沢山起こっているのです。

これはね、簡単に解決出来る問題ではないんですね。

今年の春ぐらいの時には、
入院を受け持つ病院が、
患者さんの初期診療と振り分けも引き受けていたので、
疑いのある患者さんをクリニックから紹介するでしょ、
受診するとすぐにRT-PCR検査も胸部CTも採血も、
もうすぐにセットでやるんですね。
やや過剰検査と思われなくもありませんが、
それである程度患者さんの状態は判断出来るので、
最初期は陽性であればすべて入院ですし、
その後は入院か宿泊療養の2択ですよね。
とてもクリアなんですよ。

ただ、それがもう今は駄目なんですね。
入院は重症化しているか、
そのリスクの高い患者さんのみにしないと、
貴重な入院ベッドがすぐに枯渇するでしょ。
多くの患者さんでその選別を、
ほぼ電話の聞き取りだけでしないといけない、
というのが現状なんですね。

医療に対して悪意のある一般の方は、
「すべてのクリニックで患者を診れば、
それで解決じゃないか、医者がもっと働けばいいんだ!」
みたいなことを悪し様に言いますよね。
これはものが感染症でなければそれで済むんですよ。
でも敵は感染症なんですよ。
それも院内感染などすると、
簡単に100人規模のクラスターになるでしょ。
そう簡単じゃないんですよ。

医療体制を今のままで持続するためには、
トータルな医療リソースの中で、
ある程度低い比率で感染症を診るのでないと、
これはもう成立しないんですね。

成立させるためには、
割り切って軽症の患者の振り分けをするための、
大規模な医療施設を造らないと駄目ですよ。
つまり、今の体制を抜本的に変えないと無理なんですよ。
そんなことはそう簡単に出来ないでしょ。
今の体制のまま継続するには、
感染者の数を物理的にもっと抑え込まないと無理なんですよ。
それがまあロックダウンのような思想で、
そうするか医療提供体制を抜本的に変えるかの二択が、
今決断を迫られている、というのが現状なのだと思います。

すいません。
ちょっと話の論理が乱れ気味になりました。
この問題はまたもう少し整理して、
記事にしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い大晦日をお過ごし下さい。

来年は良い年でありたいですね。

今年1年お読み頂きありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

石原がお送りしました。
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