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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年9月18日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

今日は身辺雑記的話です。

クリニック周辺では先週から、
新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生していて、
その対応に追われている日々です。

8月の中旬くらいに山があり、
その後は確かに鎮静化するように思われたのですが、
9月1週目以降は明らかに増加に転じていて、
昨日(17日)は最近では最も多い11人の、
唾液のRT-PCR検査を施行しました。

インフルエンザのシーズンを見据えて、
鼻腔検体でのインフルエンザと新型コロナウイルスの、
抗原迅速検査も少しずつ試みています。
これは一度で両方のチェックが出来るので、
確かに効率的ではあるのですが、
鼻腔のRT-PCR検査と感染リスクは同じなので、
その都度防護衣とゴーグル、手袋を含めた、
完全防御で検体採取を行なわないといけないので、
人数をこなすことは困難です。

濃厚接触者が増えると、
万一感染が起こった時に厄介なので、
基本的に採取から検査まで僕1人でやっています。

私見では東京だけはもう一度都市封鎖に近いことをしないと、
感染の収束は望めないように思います。
今回の感染拡大は、
間違いなく東京発であるからです。
これで4連休でしょ。
縦割り打破とかデジタル化とか言っていないで、
これ何とかしろよ、と思いますが、
どうにもならないことかも知れません。

先日とてもつらいことがありました。

先週の診療日に保健所から連絡があって、
濃厚接触の家族が親子でRT-PCR検査を受けなければいけないので、
受けてもらえないだろうか、というのです。

その日の午後はそれほど予定は詰まっていなかったので、
受けられます、とお返事をしました。

行政検査の段取りはこういうもので、
まず保健所からクリニックに連絡があり、
それが保健所から本人に伝えられて、
それから本人からクリニックに連絡が入る、
という段取りです。

時に本人から直接連絡が来る時があり、
そうした場合には、
こちらから保健所に確認の連絡を入れます。

行政検査を請け負っている医療機関では、
新型コロナウイルス感染症を疑わせるような症状があれば、
医療機関のみの判断で唾液のRT-PCR検査を、
行政検査として施行することが出来ますが、
無症状の場合には、
濃厚接触者であるかCOCOAのアプリで接触の連絡が入ったか、
そのどちらかであることの確認が必要です。
これはどちらも医療機関のみでは判断出来ないので、
保健所に確認することが必要となるのです。

その日の午後に、
その濃厚接触者の親子は受診をされました。

濃厚接触者に施行されるRT-PCR検査は、
保健所の指示による行政検査なので、
検査代に本人負担は発生しません。

しかし、それはその人が保険診療をした場合の、
検査の部分のみの自己負担をゼロにするという形で行われるので、
クリニックを受診されたような場合には、
診察料などは通常の保険診療として、
自己負担分は払って頂くような形になります。

品川区にはPCRセンターがあり、
そこでのみ鼻腔からのRT-PCR検査が、
行政検査として認められているのですが、
この場合は医療機関の受診ではないので、
検査受診者の自己負担は一切ありません。

つまり、
同じ濃厚接触者であっても、
何処で検査をするのかによって、
負担は違うということになるのです。

これはそういう決まりになっているので、
別に不正請求とかそういうことではなく、
保健所でも「PCRセンターでの検査は無料ですが、
医療機関を受診しての検査は、
診察料については通常の健康保険での支払いがあります」
という説明がされている筈です。
保健所の担当者とのお話でも、
それは確認しています。

しかし、何度も確認したつもりでも、
これがトラブルになるのです。

その日の午後濃厚接触者の家族は約束通りに受診をされ、
診察の上検査をしてお帰りになりました。

検査の際に確認していることは、
結果は電話では説明は出来ず、
必ずもう一度受診をして頂いて、
その時に結果を説明して、
症状なども確認の上その後の対応についてもお話し、
結果の報告書をお渡しする、ということです。

勿論どうしても来れないというような、
ご事情のある場合には個別に対応していますが、
全くの初診という方が多いので、
電話などでは本人確認が出来ず、
そうした対応をしています。

2日後の朝に連絡をもらうようにお願いをしていて、
当日になり電話があったのですが、
開口一番「陰性ですか?陽性ですか?」
と聞かれました。

それで、
「電話では結果はお伝えしていないので…」と言うと、
「行くのは嫌です」と即答されました。
勿論事情があって来れないこともあると思いますので、
やむを得ない事情のある場合は個別に別個の対応はしています。
検査の際にもそのことは確認していて、
その時には「分かりました」と言われていたのです。
それで「何かご事情がありますか?」とお聞きすると、
「行けば再診料を取られるんでしょ」と言われるので、
「それはそうです」とお話すると、
「ただじゃないといけないんじゃないの?そんなの違反でしょ」
と詰問調で言われました。
それでもう一度仕組みをお話しました。
無料になるのは検査料だけなので、
診察料はかかることになっていて、
それは保健所にも確認している事項なのです。
しかし、聞き入れてはもらえません。
「役所とか保健所とかに通報しますよ。法律違反じゃないの」
とまで言われたので、
これはもう会話にはならないなと思って、
電話は切りました。

すぐに保健所には問い合わせをして、
こうした場合はどうするべきなのかと聞きましたが、
「対応には誤りはありません」と言われました。
「そのくらいはいい方ですよ。私達はもっと罵詈雑言を毎日浴びせられて、
理不尽なことを言われています」
と言われたので、
それで少し気分が落ち着きました。

その後はもうしつこいくらいに、
何度も検査を受けられる方にはご負担を含めた説明をしています。

僕が熱が出たらお終い、
クリニックを閉めるしかない、という日常を、
もう7か月以上続けていて、
一応どうにか綱渡りのように続けられてはいますが、
いつどうなるのか分かりません。

それでも、
心配をされていた患者さんが、
検査が陰性と知ってほっとされる瞬間だけは、
こちらも少し救われたような気分になるのです。

以上地域医療の現場からお伝えしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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渡辺勉

いつも勉強させていただいております。医療現場でのご苦労頭が下がります。ご著書について、わがブログで取り上げてみました。門外漢の勘違いもあるかと存じます。ご寛恕のほど。https://simmel20.hatenablog.com/entry/2020/09/18/150740
by 渡辺勉 (2020-09-18 15:22) 

愛読者

おっしゃる通り、東京はもう一度都市封鎖レベルのアラートを発するべきだと思います。
さもなければ先生のクリニックのようなケースが都内各地で頻発するはずです。
ちなみに私は採血による抗体検査を弟と一緒に有償で受けました。
結果は陰性でしたが、やはりドライブスルーやウォークスルー検査の完備を急ぐべきだと思います。
携帯の利用料金の値下げなど、菅さんは寝ぼけているとしか思えません。
by 愛読者 (2020-09-18 23:36) 

恵子

読んでいるだけでこちらも胃が痛くなってくるような気分の悪い出来事ですね。
石原先生、どうか、過労や心労で体調を崩されないようにお気を付けください。
by 恵子 (2020-10-08 13:48) 

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