SSブログ

極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月9日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後はレセプト作業の予定です。

今日はちょっと限界という感じで、
正直もう無事に1日を送れそうな気がしません。

少々愚痴のような話題になることをお許し下さい。

体調がまず非常に悪いのです。
感染ではないのですが腰痛が悪化していて、
集団のインフルエンザ接種とか、
老人ホームやグループホームでの診察などがあると、
急激に悪化します。
今も痛くてたまりません。

昨日も結果が出次第、患者さんに連絡する予定で、
午後5時からPCR検査の結果のファックスを待っていたのですが、
午後8時になっても結果が来ません。
嫌な予感がして、
片端から検査会社の電話を掛けまくって、
漸く当直のような人につないでもらったのですが、
「今出力中のようです」のような返答です。
5時には来る結果が8時になっても来ないのですから、
連絡くらいしてくれてもいいでしょ。
何もないんですよね。
結局大騒ぎをして午後9時過ぎには結果が届いて、
それから患者さんにはお伝えしました。

他の検査会社の話を聞きますとね、
検査翌日の昼には大体結果が届いているんですね。
「何で遅いの?早くする方法はないの?」
と聞いても何の答えもありません。
行政検査なので検査代も高いんですね。
公費の時は良いのですが自費だと困ります。
検査が高いのは、仕方のない部分もあるんですよね。
保険点数として価格を決めているので、
それを下回ることが出来ないという理屈なのです。
医療機関が儲けているという訳ではなんですよ。
検査代をうちは請求されているだけなのです。
でもね、これだけ安い検査が沢山流通していて、
勿論精度管理はしっかりしているとしても、
やること自体は同じでしょ。
検査会社は明らかに相当儲けている訳ですよね。
間違いなくそうでしょ。
それなら、もう少しその利益で、
配送のスタッフを増やしたりして、
結果が出るまでのタイムラグを、
もっと短縮してくれてもいいのではないでしょうか?

通常なら会社自体の利益優先でもいいと思いますが、
ある意味今は「非常時」でしょ。
PCR検査の結果がどれだけ早く出せるかで、
感染予防効果が違うんですよね。
これは論文もありましたよね。
以前ブログでも紹介しましたが、
介護施設のような感染リスクの高い集団では、
1週間に一度全員検査を行なって、
結果は数時間以内に出るようであれば、
感染防御効果が期待できるんですね。
それが1日掛かるようだと、
もう統計的には予防効果は証明されないんですね。

こうした場合の時間は、
それだけ重要なんですよ。

そんなことは百も承知の筈なのに、
何で対策はしないのかしら。

本当に本当に、嫌になってしまいます。

①当院のRT-PCR検査陽性率
大したことのない底辺の医療機関の記録ですが、
一応まとめておきます。

今年の6月までの期間においては、
原則としてRT-PCR検査は保健所や公的検査機関のみで、
行なわれていました。
その後各地域でPCRセンターが開設され、
クリニックなどの一般医療機関においても、
唾液のRT-PCR検査の施行が認められるようになりました。
現在では感染防御の上、
鼻腔からの検体採取も認められるようになっています。

クリニックでは7月の初めから都と集合契約を結び、
唾液のPCR検査を開始しました。
今では必要に応じて鼻腔の検査も行っています。

7月から11月の末までに、
行政検査として269名のRT-PCR検査を施行。
陽性者は27名で、
トータルな陽性率は10.0%です。

内訳としてみると、
7月の陽性率が12.5%、
8月は8.0%、9月は78件と最も検査数は多かったのですが、
陽性は2件のみで陽性率は2.6%でした。

それが10月は18.6%が陽性、11月は16.3%が陽性となっています。

これだけを見ても、
7月で鎮静化した感染が、
10月から持ち上がって、
それ以前を超える感染拡大につながっていることが分かります。

②「民間検査」と称するものについて
「民間検査」と言う言葉はテレビのニュースで知りました。
保健所が感染を確認する「行政検査」と対比する意味合いだと思います。

面白い用語を考案するものです。

当クリニックでは、
基本的に集合契約に基づいて、
「行政検査」のみを行なっています。
これは症状があって新型コロナウイルス感染症を疑うケース、
COCOAのアプリでの接触確認を含めて、
感染者との濃厚接触が疑われるケースで行なうもので、
全くの無症状で感染機会のはっきりしない時に、
「安心のために」行う検査は含まれていません。

行政検査は公費となるので検査自体は無料で、
医療機関の場合診察料などは掛かります。

これは管轄は厚労省になる訳です。

その一方でRT-PCR検査自体は、
行政検査以外でも行うことが出来、
必ずしも医療機関でなくても施行が可能です。

これは当初は海外渡航の必要なビジネスマンなどが、
「PCR検査の陰性証明」が、
渡航のために必要であることから、
経産省の意向により始められたものです。

こうした検査をする検査機関を、
経産省は招聘し募っていたという経緯があり、
僕が知っている小規模の検査会社も、
説明会などで強く施行を求められたので、
「仕方なくやることになった」と言っていました。

これが敢くまで渡航のための検査に限られているのであれば、
それで何の問題もなかったのですが、
実際には国内の帰省などでも検査をしたり、
スポーツやエンタメの団体などが、
興行のために全員に検査をしたり、
というようなことになってくると、
当初の思惑を離れて、
「商売としての民間検査」がはびこるようになって、
そこには利益優先の悪質な業者もあり、
ダンピング的な低価格競争もあったりして、
当初の健全な目的からは、
かなり離れてしまっているのが実際だと思います。

本来は民間検査の精度管理は、
行政検査と同じ水準で行われるべきものですが、
実際にはそうした検査なりチェックが行われている、
ということは全くなく、
検査のレベルは検査会社の自主性に、
任せられているのが実際です。
仮に利益優先の会社があるとすれば、
そんな管理にお金を掛ける訳がないですよね。

ただ、最初にも書いたのですが、
推奨出来ない「民間検査」の方が、
データが早く届くなどサービスは良いのですね。
クリニックで契約している大手の検査会社は、
グズグズ対応なのですね。
これを何とかしないと「行政検査」の方がいい、
というようには言い切れないですよ。

クリニックの近隣ではですね、
明らかにお金儲けの施設があって、
「PCR検査即日可能!」とかと宣伝しているのですね。
それはそれで問題だし、
テレビで大宣伝しているようなところも問題だと思いますが、
その一方でね、
通常の医療機関が、
「民間検査」を自費で行なっているケースも多いのですね。
本来は診療をしているのであれば、
行政検査をして、
その結果にも責任を持つべきでしょ。
基本的に「発熱者やコロナの疑いの人は受診お断り」
と言っていて、
それで「安心のための検査は自費でどうぞ」
というのは何か矛盾している行為のように、
思ってしまいます。

③もう症状では全然新型コロナは分からない、ということ
はっきり扁桃炎があったら、
それはコロナではない、
と断言をされている先生がいたんですね。
これは事実なのですが、
今はそれは通用しないというのが、
臨床での実感です。

実例がありましてね、
1人の方は咽頭痛と発熱があって、
夜だけ上がる、という症状だったのですね。
それで休日診療所を受診して診察を受けたのですが、
担当医はのどを診察して、
「これは扁桃炎だからコロナじゃないよ。検査は要らない」
と言って帰したんですね。
翌日咽頭痛が強いということでクリニックを受診されて、
RT-PCR検査の結果は陽性でした。

もう1つの例は咽頭痛があって、
2か所の耳鼻科と1か所の内科で、
いずれも扁桃炎ということで診断されたのですね。
それが治りが悪いということで受診をされて、
矢張りPCRは陽性でした。
ただ、この話には続きがあって、
熱は下がったので入院ではなく、
自宅療養の方針となって、
観察期間が終了したのですが、
その翌日に高熱になったのですね。
その人にはかかりつけ医がいたのですが、
連絡をすると、
「コロナと診断された人は来てもらっては困る」と、
受診を断られたので、
それでクリニックに連絡があったのです。

正直診察するのは嫌だな、
とは思ったのですが、
誰も診ないというのなら、診るしかないですよね。
診察したら、扁桃周囲炎でパンパンに腫れているんですね。
あちこちに掛け合って、
コロナ外来を経由して入院となりました。

これはおそらく扁桃炎の原因自体はコロナではないと思うのですね。
合併例で、重症化した、ということだと思います。

新型コロナの症状が出てから9日以降で無症状であれば、
もう周囲への感染はしない、
と言うこと自体はほぼ事実と信じていいと思うのですが、
実際には症状がいつ出現したのか、
分からないケースが多いんですね。

そこで対応を誤ると、
結局感染を広げてしまうことになるでしょ。

難しいですね。

扁桃炎で複数の医療機関を受診した事例などは、
途中で何処かでコロナをもらった、
という可能性も高いと思うのですね。

今は症状から新型コロナの判定は出来ない、
疑ったらすぐ検査するしかない、
というのが僕にっての経験的事実です。

今日は新型コロナを巡ってのあれこれをお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(2) 

nice! 3

コメント 2

Ob

ブログ拝読しました。
先生に受診していただいている患者の1人です。

私も6月には厚労省にCOCOAアプリで集計されたデータの分析のプロジェクトに出向していました。
現場では実行再生算数を算出するためのデータが、行政的なものと民間的なものが入り混じりどう発表をするかなどの議論を重ねるなど、商業的なデータがコロナ収束を妨げていることを実感しました。

年末の帰省に向けてPCR検査を考えていたのですが、先生のお考えを拝読してたまたま話し合い、安易なPCR検査は避け、しっかりと不要不急の外出を控えて、コロナの収束を願いたいと思います。
by Ob (2020-12-12 16:13) 

masayuky

おつらいですね。
いつもブログは興味深く読ませていただいております。趣味のお話も私とは分野が異なるのですがお陰で興味の幅が拡がりました。
早くコロナ禍の状況が落ち着き平穏な日常に、および腰痛が改善されることを願っております。
by masayuky (2020-12-16 07:08) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。