極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2020年12月18日) [仕事のこと]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動や検診などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日は新型コロナウイルス感染症を巡る現状です。
東京では感染拡大が止まりません。
現状の感染拡大の意味合いは、
個人的な見解としては、
家族内感染が拡大している、
ということと同じであると思います。
家族内感染が止まらないのです。
これは正直当たり前のことで、
現状家族内感染を防ぐための対策が、
全く行われてはいないからです。
東京都の統計をみますと、
宿泊療養より自宅療養の方がずっと多くなっていて、
自宅療養は1200人を超えています。
問題はこの自宅療養の内容だと思うのですね。
個々の事例のお話しを聞いているとですね、
少なくともクリニックのある品川区において、
自宅療養が積極的に選択されている、
というような現状はないのですね。
同居者がいれば、
基本的には軽症でも宿泊療養が選択されるのですが、
結局空きがないと「待機」ということになるのです。
「待機」になるとどうなるのかと言うと、
毎日保健所から電話連絡はあり、
「体調はどうですか?」というような質問はあるのですが、
それ以外は医療もケアも何もありません。
感染予防のために何かの措置が取られる、
というようなこともありません。
そのうちに軽症者であれば症状は改善するので、
「今から宿泊施設に行っても意味がないですね」ということになり、
患者さん本人も勿論希望はしませんから、
そのまま何となく自宅で経過をみることになってしまいます。
これが、「自宅療養」と言われるものの実態であると、
現状を見る限りは思います。
「家族全滅」というケースが、
クリニックで関わった中では3軒ほどありました。
(守秘義務および患者の特定を避ける観点から、
一部は事実と異なる記載をしている部分があります。
ご理解下さい)
1例は高齢の両親と娘さんという3人家族で、
都営住宅に入居をされていた方です。
まず母親に軽い咳やだるさが出現。
それでも軽症であったので、
夫を連れてあちこちの医療機関を受診していました。
数日して今度は父親が咳込みと発熱の症状あり。
高熱になったため、
インフルエンザと新型コロナの遺伝子検査をして、
2日後に新型コロナウイルス感染症と診断されました。
同じ日に別の医療機関で母親も検査を受け、
こちらも新型コロナウイルス感染症と診断されます。
その時点では娘さんは無症状であったのですが、
数日後に咳や熱などの症状が出現しています。
この事例は高齢の夫婦の感染は、
阻止することは困難であったと思われますが、
もっと早期に適切なアドバイスがなされ、
迅速に入院が可能であれば、
娘さんへの感染は防がれたのではないか、
と思われたケースです。
もう1つの事例は50代の夫婦と、
10代の娘と息子4人の家族のケースですが、
娘さんの高校の部活でクラスターが発生し、
濃厚接触者として自宅待機になります。
その時点で一度RT-PCR検査が施行されて陰性でした。
ところが、陰性が判明した2日目に娘は発熱し、
その翌日に行われたRT-PCR検査で陽性が判明します。
自宅待機になってから陽性が判明するまでに、
5日が経過していて、
特に陰性が確認されてから2日は、
娘は自由に活動していました。
それから五月雨的に他の家族が発熱や下痢、
だるさなどの症状呈し、
次々と検査で陽性が判明しました。
この事例は濃厚接触者の管理の難しさを実感させるものです。
クラスター発生で濃厚接触者を認定して隔離して、
その隔離が適切に行われていれば、
有効性があるのですが、
結局行われていることは「自宅待機」で、
それで検査で陰性とされれば、
「もう大丈夫」と絶対思うでしょ。
いくら「2週間は注意して」と言っても、
それは人間の心理的に困難であると思うのです。
要するに、現状家庭がブラックボックス化していて、
そこに1000人以上の感染者が待機しているのです。
それがすぐに2倍になり3倍になりますよね。
500人が1000人に増え、1500人になっても、
全然おかしくありません。
いやむしろそうなるのが必然です。
ここからはもう2択で、
早期の隔離をして家族内感染を拡大しないために、
宿泊療養を今の3倍くらいにどうにかして拡充するか、
それとも何もしないで放置して、
「ステイホーム」、要するに家庭の感染を外には出すな、
という対策のみを行い、
一旦拡大した感染が、
自然におさまるのを待つのかの選択です。
家庭内感染を阻止するために、
専門のスタッフを大幅に増員して、
定期的に家庭を巡回して指導を行う、
というのもオプションとしてはありますが、
今はもうそのタイミングは逸したと思います。
現状は後者の選択肢が選ばれているのだと、
今の情報を見る限りは理解しているので、
これはもう感染の数倍の拡大を、
一旦は覚悟して対処するより他はないようです。
個人的には日々の仕事をこなしつつ、
少しでも検査結果を迅速に患者さんに届けられるように、
また家族内感染のリスクを減らし、
患者さんの自宅療養での不安を、
少しでも和らげられるような対応に、
微力ながら尽くしたいとは思っています。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動や検診などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日は新型コロナウイルス感染症を巡る現状です。
東京では感染拡大が止まりません。
現状の感染拡大の意味合いは、
個人的な見解としては、
家族内感染が拡大している、
ということと同じであると思います。
家族内感染が止まらないのです。
これは正直当たり前のことで、
現状家族内感染を防ぐための対策が、
全く行われてはいないからです。
東京都の統計をみますと、
宿泊療養より自宅療養の方がずっと多くなっていて、
自宅療養は1200人を超えています。
問題はこの自宅療養の内容だと思うのですね。
個々の事例のお話しを聞いているとですね、
少なくともクリニックのある品川区において、
自宅療養が積極的に選択されている、
というような現状はないのですね。
同居者がいれば、
基本的には軽症でも宿泊療養が選択されるのですが、
結局空きがないと「待機」ということになるのです。
「待機」になるとどうなるのかと言うと、
毎日保健所から電話連絡はあり、
「体調はどうですか?」というような質問はあるのですが、
それ以外は医療もケアも何もありません。
感染予防のために何かの措置が取られる、
というようなこともありません。
そのうちに軽症者であれば症状は改善するので、
「今から宿泊施設に行っても意味がないですね」ということになり、
患者さん本人も勿論希望はしませんから、
そのまま何となく自宅で経過をみることになってしまいます。
これが、「自宅療養」と言われるものの実態であると、
現状を見る限りは思います。
「家族全滅」というケースが、
クリニックで関わった中では3軒ほどありました。
(守秘義務および患者の特定を避ける観点から、
一部は事実と異なる記載をしている部分があります。
ご理解下さい)
1例は高齢の両親と娘さんという3人家族で、
都営住宅に入居をされていた方です。
まず母親に軽い咳やだるさが出現。
それでも軽症であったので、
夫を連れてあちこちの医療機関を受診していました。
数日して今度は父親が咳込みと発熱の症状あり。
高熱になったため、
インフルエンザと新型コロナの遺伝子検査をして、
2日後に新型コロナウイルス感染症と診断されました。
同じ日に別の医療機関で母親も検査を受け、
こちらも新型コロナウイルス感染症と診断されます。
その時点では娘さんは無症状であったのですが、
数日後に咳や熱などの症状が出現しています。
この事例は高齢の夫婦の感染は、
阻止することは困難であったと思われますが、
もっと早期に適切なアドバイスがなされ、
迅速に入院が可能であれば、
娘さんへの感染は防がれたのではないか、
と思われたケースです。
もう1つの事例は50代の夫婦と、
10代の娘と息子4人の家族のケースですが、
娘さんの高校の部活でクラスターが発生し、
濃厚接触者として自宅待機になります。
その時点で一度RT-PCR検査が施行されて陰性でした。
ところが、陰性が判明した2日目に娘は発熱し、
その翌日に行われたRT-PCR検査で陽性が判明します。
自宅待機になってから陽性が判明するまでに、
5日が経過していて、
特に陰性が確認されてから2日は、
娘は自由に活動していました。
それから五月雨的に他の家族が発熱や下痢、
だるさなどの症状呈し、
次々と検査で陽性が判明しました。
この事例は濃厚接触者の管理の難しさを実感させるものです。
クラスター発生で濃厚接触者を認定して隔離して、
その隔離が適切に行われていれば、
有効性があるのですが、
結局行われていることは「自宅待機」で、
それで検査で陰性とされれば、
「もう大丈夫」と絶対思うでしょ。
いくら「2週間は注意して」と言っても、
それは人間の心理的に困難であると思うのです。
要するに、現状家庭がブラックボックス化していて、
そこに1000人以上の感染者が待機しているのです。
それがすぐに2倍になり3倍になりますよね。
500人が1000人に増え、1500人になっても、
全然おかしくありません。
いやむしろそうなるのが必然です。
ここからはもう2択で、
早期の隔離をして家族内感染を拡大しないために、
宿泊療養を今の3倍くらいにどうにかして拡充するか、
それとも何もしないで放置して、
「ステイホーム」、要するに家庭の感染を外には出すな、
という対策のみを行い、
一旦拡大した感染が、
自然におさまるのを待つのかの選択です。
家庭内感染を阻止するために、
専門のスタッフを大幅に増員して、
定期的に家庭を巡回して指導を行う、
というのもオプションとしてはありますが、
今はもうそのタイミングは逸したと思います。
現状は後者の選択肢が選ばれているのだと、
今の情報を見る限りは理解しているので、
これはもう感染の数倍の拡大を、
一旦は覚悟して対処するより他はないようです。
個人的には日々の仕事をこなしつつ、
少しでも検査結果を迅速に患者さんに届けられるように、
また家族内感染のリスクを減らし、
患者さんの自宅療養での不安を、
少しでも和らげられるような対応に、
微力ながら尽くしたいとは思っています。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2020-12-18 07:41
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コメント(1)
いつも真摯にお仕事されていて尊敬しています。コロナを診ないクリニックが多い中大変さをお察しします。きょうはワンダーウーマンでも見に行ってくださいな。
by sunnyside (2020-12-18 11:47)