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塩分制限の血圧に与える影響(2023年の臨床研究データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高血圧と塩分制限.jpg
JAMA誌に2023年11月11日付でウェブ掲載された、
血圧に与える塩分制限の影響を検証した論文です。

食事の塩分が多いことが、
高血圧のリスクとなることは、
広く知られている事実です。

そのために、高血圧の患者さんに対しては、
食事の塩分制限が指示されます。

しかし、高血圧の患者さんが塩分制限をすることで、
どの程度血圧低下が期待出来るのかは、
それほど明確にはなっていません。

減塩でどれだけ血圧が低下するのかは、
人種差のような個人差が大きいという意見があります。
塩分に影響して大きく血圧が変動する人がいる一方で、
塩分にあまり影響されない高血圧の患者さんもいる、
というような意見です。

ただ、そうした知見の元になっているデータでは、
通常高血圧で治療中の患者さんは除外されている、
という現実とそぐわない点も認められます。

つまり、減塩の効果については、
それほど確実なことが分かっていない、
というのが現状なのです。

今回の研究はアメリカの複数地域において、
50歳から75歳の213名を登録し、
通常の特に制限のない食事と、
それに2200㎎(食塩換算で5.5グラム)のナトリウムを加えた場合、
逆に食事のナトリウム量を500㎎(食塩換算で1.27グラム)まで、
厳しく制限した場合とを、
同じ人で繰り返して、
血圧の推移を比較検証しています。

対象者の内訳は、
正常血圧が25%、コントロール良好の高血圧患者が20%、
コントロール不良の高血圧患者が31%、
未治療の高血圧患者が25%となっています。
人種については黒人種が64%で白人種が33%、
そのほかが3%となっています。
つまり、アジア人種については情報に乏しいデータです。
対象者の食事におけるナトリウム量は、
中間値で4.45グラム(食塩換算で11.3グラム)と、
塩分過剰の傾向が認められました。

通常の食事での収縮期血圧の中間値は125mmHgで、
高塩分食126mmHg、塩分制限食では119mmHgとなっていました。
ここで高塩分食から塩分制限食に切り替えた時の、
同一の人での血圧低下の平均値は4mmHgで、
これは高血圧のコントロールの有無とは明確な関連が認められませんでした。
減塩制限による血圧の低下は、
対象者の73.4%で認められました。
ここで塩分制限による5mmHg以上の血圧低下が見られる場合を、
塩分感受性ありと定義すると、
対象者の46%が塩分感受性ありと診断されました。

今回の検証では、
高血圧の治療の有無やコントロール状態に関わらず、
減塩による一定の血圧降下作用が確認されました。
ただ、その有効性には個人差があり、
体質的な要素によりかなり影響されることも確認されました。

今回の研究はアジア人種は殆ど含まれていないので、
この結果をそのまま日本人に適応することは出来ません。
また今回の研究ではかなり極端な、
高塩分食から高度の塩分制限食への変更が行われていて、
実際の生活とは異なる状況である点にも注意が必要です。

いずれにしても、
減塩には一定の健康効果のあることは間違いがありませんが、
その効果にはかなりの個人差があり、
全ての方に同じように効果のあるものではない、
という点は、
改めて確認しておく必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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