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水痘生ワクチンの帯状疱疹予防効果(10年の長期の有効性) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
水痘生ワクチンの帯状疱疹予防効果.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年11月8日付で掲載された、
帯状疱疹予防に水ぼうそうの生ワクチンを接種する試みの、
長期の有効性についての論文です。

帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)に一度罹った後で、
神経の中に潜んでいたウイルスが、
再活性化することで起こる病気と考えられていて、
身体の一部に帯状の湿疹が生じ、
その部位に強い痛みが起こります。
厄介なのは急性期の症状が回復した後も、
神経痛のような痛みが長期間残るケースがあることで、
これを帯状疱疹後神経痛と呼んでいます。

その予防として使用されているのがワクチンで、
今盛んにテレビなどでも宣伝されているように、
ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があり、
それぞれ一定の有効性が示されています。

アメリカでは2006年から、
高齢者に対する生ワクチンの接種が施行されました。
これはお子さんの水ぼうそうの予防に、
使用している生ワクチンと同じもので、
それを再度接種することにより、
細胞性免疫を高めて帯状疱疹を予防しようとするものです。

その後遺伝子工学の技術を活用した、
帯状疱疹に専用に不活化ワクチンが開発されました。
これが今日本でも接種されている、
シングリックスというワクチンで、
アメリカでは2017年以降この不活化ワクチンのみが、
帯状疱疹予防のために使用されています。

日本では生ワクチンと不活化ワクチンの両方が、
50歳以上の年齢での帯状疱疹予防に適応が認められ、
一部公費の補助の元に利用されています。

不活化ワクチンの有効性は、
精度の高い臨床試験により確認されていますが、
生ワクチンの有効性については、
特に長期の効果に関して、
あまり精度の高いデータがありません。

今回の研究はアメリカ民間医療保険会社の大規模データを活用して、
生ワクチンを50歳以上の年齢に接種した場合の、
帯状疱疹予防の有効性を検証したものです。

対象は1505647名の50歳以上の一般住民で、
その34%に当たる507444名が水痘生ワクチンを接種していて、
10年以上の観察期間中に、
75135名の帯状疱疹の事例が発症していました。

ここで水痘生ワクチンの接種は、
接種後30日から1年後までの帯状疱疹のリスクを、
67%(95%CI:65から69)有意に低下させていました。
その後徐々にその予防効果は低下し、
接種10年後には15%(95%CI:5から24)まで低下していました。
同様に検証された帯状疱疹後神経痛のリスクは、
最初の1年で83%(95%CI:78から87)、
10年後には41%(95%CI:17から59)の予防効果を示していました。
帯状疱疹による入院のリスクは、
最初の1年では90%(95%CI:67から97)と高い予防効果を示し、
5年から8年未満の期間では、
53%(95%CI:25から70)の予防効果が確認されました。

このように、
90%を超える発症予防効果が確認されている、
不活化ワクチンと比較すると、
生ワクチンの有効性は劣るのですが、
接種後数年という短期間においては、
一定の有効性は確認されていて、
特に帯状疱疹後神経痛の予防効果や重症化予防効果については、
発症予防より高い有効性が認められました。

生ワクチンの利点は、
費用が安いこと(1本当たりの単価で不活化ワクチンの4分の1以下)と、
目立った副反応がなく安全性の高いことです。

その使い分けについて、
現状日本では接種者本人の判断に任されていますが、
今後はその科学的議論が、
より深化されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。





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