マルチターゲット便中RNA検査による大腸癌検診の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
レセプト作業など事務作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年10月23日付で掲載された、
新しい大腸癌検出の検査法の有効性を検証した論文です。
大腸癌はその成り立ちが遺伝子レベルで解明されていて、
早期に発見されれば完治する可能性の高い癌です。
そのため、検診で早期発見することが重要な癌で、
これまでに便潜血検査に大腸内視鏡検査を組み合わせた検診により、
その予後改善の有効性が確認されています。
便潜血検査は、
簡単に出来てコストも安価なので、
非常に利点の多い検査ですが、
便で微量の出血を検出しているだけなので、
痔や粘膜のびらんなど、
癌以外の病気でも陽性になってしまう、
という欠点があります。
また肛門から距離のある部位に発生した大腸癌の場合には、
検出率は低下するという問題もあります。
それでは、
より大腸癌のみで陽性となるような、
精度の高い便検査はないのでしょうか?
そこで注目されているのが、
今回ご紹介するマルチターゲット便中RNA検査です。
大腸癌は複数の遺伝子変異が積み重なることによって、
発症することが分かっています。
そうであるなら、個々の段階で特徴的な遺伝子の変異を、
便で検出することが出来れば、
より精度の高い診断に結び付くことが期待出来ます。
今回使用されているColoSenseというシステムは、
大腸癌に関わる7種類のRNA配列と、
喫煙歴と便潜血検査の結果を、
点数化して陽性と陰性を判定するものです。
要するに便潜血と遺伝子検査を組み合わせた方法です。
今回の研究ではアメリカにおいて、
45歳以上の一般住民8920名に、
大腸内視鏡検査と便中の遺伝子検査、便潜血検査を施行して、
便潜血検査単独の場合と、
そこに遺伝子検査を組み合わせた場合との、
大腸癌の診断能を比較検証しています。
その結果、
対象となった8920名の0.4%に当たる36名に大腸癌が、
6.8%に前癌病変(Advanced Adenoma)が見つかりました。
ここで大腸癌の患者さんのうち、
便潜血検査が陽性であったのは78%であったのに対して、
マルチターゲット便中RNA検査の陽性率は94%で、
遺伝子検査を施行することにより、
検査の感度は上昇していました。
前癌病変の陽性率で見ると、
前癌病変の見つかった患者さんのうち、
便潜血検査が陽性であったのは29%であったのに対して、
マルチターゲット便中RNA検査の陽性率は46%で、
前癌病変を診断することは便の検査だけでは困難なのですが、
それでも検出率は遺伝子検査により上昇していました。
逆に大腸内視鏡検査で異常のなかった対象者のうち、
マルチターゲット便中RNA検査が陰性であったのは88%でした。
つまり、12%は検査の偽陽性が存在していました。
このように、
便潜血検査に組み合わせて施行しているので、
ある意味当然と言えないこともないのですが、
マルチターゲット便中RNA検査を施行することにより、
便潜血のみの検査と比較して、
大腸癌の診断能は上昇することが確認されました。
これはこの検査のライバルとも言える、
血液のマイクロRNA検査とほぼ同等の結果です。
今後こうした検査が広く実用化されることにより、
早期癌の診断は向上すると思われますが、
そのコストはかなり高額となることも予想され、
検査の高額化と精度上昇の狭間で、
今後の癌検診のあり方は、
大きく変わらざるを得ないような気もします。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
レセプト作業など事務作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA誌に2023年10月23日付で掲載された、
新しい大腸癌検出の検査法の有効性を検証した論文です。
大腸癌はその成り立ちが遺伝子レベルで解明されていて、
早期に発見されれば完治する可能性の高い癌です。
そのため、検診で早期発見することが重要な癌で、
これまでに便潜血検査に大腸内視鏡検査を組み合わせた検診により、
その予後改善の有効性が確認されています。
便潜血検査は、
簡単に出来てコストも安価なので、
非常に利点の多い検査ですが、
便で微量の出血を検出しているだけなので、
痔や粘膜のびらんなど、
癌以外の病気でも陽性になってしまう、
という欠点があります。
また肛門から距離のある部位に発生した大腸癌の場合には、
検出率は低下するという問題もあります。
それでは、
より大腸癌のみで陽性となるような、
精度の高い便検査はないのでしょうか?
そこで注目されているのが、
今回ご紹介するマルチターゲット便中RNA検査です。
大腸癌は複数の遺伝子変異が積み重なることによって、
発症することが分かっています。
そうであるなら、個々の段階で特徴的な遺伝子の変異を、
便で検出することが出来れば、
より精度の高い診断に結び付くことが期待出来ます。
今回使用されているColoSenseというシステムは、
大腸癌に関わる7種類のRNA配列と、
喫煙歴と便潜血検査の結果を、
点数化して陽性と陰性を判定するものです。
要するに便潜血と遺伝子検査を組み合わせた方法です。
今回の研究ではアメリカにおいて、
45歳以上の一般住民8920名に、
大腸内視鏡検査と便中の遺伝子検査、便潜血検査を施行して、
便潜血検査単独の場合と、
そこに遺伝子検査を組み合わせた場合との、
大腸癌の診断能を比較検証しています。
その結果、
対象となった8920名の0.4%に当たる36名に大腸癌が、
6.8%に前癌病変(Advanced Adenoma)が見つかりました。
ここで大腸癌の患者さんのうち、
便潜血検査が陽性であったのは78%であったのに対して、
マルチターゲット便中RNA検査の陽性率は94%で、
遺伝子検査を施行することにより、
検査の感度は上昇していました。
前癌病変の陽性率で見ると、
前癌病変の見つかった患者さんのうち、
便潜血検査が陽性であったのは29%であったのに対して、
マルチターゲット便中RNA検査の陽性率は46%で、
前癌病変を診断することは便の検査だけでは困難なのですが、
それでも検出率は遺伝子検査により上昇していました。
逆に大腸内視鏡検査で異常のなかった対象者のうち、
マルチターゲット便中RNA検査が陰性であったのは88%でした。
つまり、12%は検査の偽陽性が存在していました。
このように、
便潜血検査に組み合わせて施行しているので、
ある意味当然と言えないこともないのですが、
マルチターゲット便中RNA検査を施行することにより、
便潜血のみの検査と比較して、
大腸癌の診断能は上昇することが確認されました。
これはこの検査のライバルとも言える、
血液のマイクロRNA検査とほぼ同等の結果です。
今後こうした検査が広く実用化されることにより、
早期癌の診断は向上すると思われますが、
そのコストはかなり高額となることも予想され、
検査の高額化と精度上昇の狭間で、
今後の癌検診のあり方は、
大きく変わらざるを得ないような気もします。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-12-01 11:18
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