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大動脈弁狭窄症に対する超音波治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療ですが、
午後は石原が公務のため、
石田医師の診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大動脈弁狭窄症の超音波治療.jpg
Lancet誌に2023年11月13日付で掲載された、
大動脈弁狭窄症に対する非侵襲的超音波治療法の有効性についての論文です。

大動脈弁狭窄症は、
心臓から全身に血液を送り出す、
大動脈の入り口にある弁が石灰化などを来して硬くなり、
弁の広がりが悪くなって、
血液を効率的に送り出すことが出来なくなる病気です。

生まれつきの異常によって起こることもありますが、
その多くは加齢や動脈硬化の進行に伴って起こるのです。

初期は無症状で経過しますが、
一旦胸の痛みや息切れなどの症状が出現するとその進行は早く、
数年で命に関わる事態になることも稀ではありません。

大動脈弁狭窄症の治療は、
手術で機能しなくなった弁を、
人工弁や生体弁に取り換えるという外科治療が行われ、
最近ではカテーテル治療により、
人工弁を挿入するような方法も開発され施行されています。

ただ、大動脈弁狭窄症の患者さんには、
高齢で内臓の機能も高度に低下していたり、
他にも病気を併発しているような人が多く、
比較的侵襲の少ないカテーテル治療でも、
その適応にならない場合が少なくありません。

それでは、こうした治療の困難な高齢の患者さんでも、
適応可能な治療法はないのでしょうか?

その1つとして注目されているのが、
今回の非侵襲的超音波療法です。

超音波は尿路結石の破砕などにも使用されていますから、
大動脈弁の石灰化の除去には、
一定の効果が期待出来そうです。
実際にそうした試みはこれまでにもあるようですが、
そうした治療単独で手術などの治療に代わり得る、
というほどの効果は確認されていませんでした。

今回のフランスのメーカーが開発したCardiowaveというシステムは、
身体の外から強力な超音波を大動脈弁に照射することにより、
「硬い弁の組織を柔らかくする」と説明されています。
https://cardiawave.com/our-device-valvosoft/

今回発表されたデータでは、
フランス、オランダ、セルビアの3か所の専門病院において、
重度で有症状の大動脈弁狭窄の患者さん40名に対して、
この超音波治療が施行されています。
その結果平均の弁口面積は治療前から10%増加し、
平均圧格差は平均41.9mmHgから38.8mmHgへと、
7%有意に低下していました。

正直単独で大動脈弁狭窄症の治療の選択肢となり得る、
というほどの結果ではないように思えますが、
他の治療の施行が困難な患者さんに対しては、
一定の有効性が期待される治療として、
その選択肢の1つとはなり得る可能性があり、
今後のより詳細な検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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